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転勢

鎖から解放された手足が、本体の元に戻る。


その拳が二度叩くと、メルティを包んでいた氷は呆気なく破壊された。


「…ふぅ。」


メルティは立ち上がり、少し体を払う。

攻撃を受けた訳では無いので、無傷だった。


「あら?私の接着剤は?」


薬師は不思議そうに言う。

と言うのも、メルティが居た場所を中心に、円形に接着剤が失われていたからだ。


ーーーーーーーーーー


構造解析完了

設計図【バインドポーション】が解放されます。


【バインドポーション】

粘着性の液体で、敵の拘束を始めとした様々な用途に用いられる。

本人の意思無くしては決して剥がれる事の無いその特性からアダライエア王朝では、実用用と言うよりも、縁繋ぎの縁起物として重宝されている。


素材

【ブラフニウム】10個


規定量の設計図を手に入れました。

Lv3に到達しました。


解放する設計図を選択してください。

・【オジェ】

・【ライル】

・【ヘクトール】

・【ランスロット】


ーーーーーーーーーー


「…トランプ?」


メルティは咄嗟に、響きから一番強そうな設計図を選択する。


ーーーーーーーーーー


設計図【ランスロット】を解放しました。


【ランスロット】

主を守護せし四騎士が一柱、銘は“鏖滅”。

その槍、振るえばドレアドスの北の山々をも打ち砕き、掲げれば天上は突き壊され、地に向ければヨートゥルスヘイムへの門さえ開く。

主を害する者、如何なりしてすら鏖滅しせり。

嗚呼。嗚呼。その名を称えよ。

名はランスロット。主を守護せし四騎士が一柱。


素材

【ブラフニウム】1000個


※注

この創造物はレジェンダリーです。同時に二つ以上保有する事は出来ません。


ーーーーーーーーーー


(1000個…)


メルティの左肩の上辺りに、小さな魔法陣が出現する。


魔法陣からは細く青い鎖が射出され、倒れた鎧の塔に突き刺さる。


(これで足りるか、分からないけれど。)


“ギイイィィィ…”


倒れた鎧の塔が、金属が軋む音を立ててゆっくりとずれる。


「総員此処から離れろ!奴の魔法が完全に未知だ!」


戦乙女の一声で、小隊は周囲に分散する。

その間も、倒れた巨塔は少しづつ、メルティの元に引っ張られていた。


「おいおい、マジで重機だな。」


花火屋が感嘆の声を漏らす。


「隊長…」


建門師が、不安げにその名を呼ぶ。


「解っている。少なくともあれは、機械の体を得るなんて言う生易しい魔法じゃ無い。」


戦乙女の脳内では、今ある情報から可能な限りの考察をしていた。


先ず本来、どんな魔法使いであっても行使できる異能には限界がある。

そしてその限界は、個人差はあれどある程度の平均も存在し、強力な能力であれど、その分リスクや代償が発生する事で辻褄が合う様になっていた。


「な…!」


とうとう巨塔が鎖によって持ち上げられ、メルティの頭上に現れた巨大魔法陣の中に突っ込まれた。


「あれは何だ…何をやっている…」


ただ、魔法使いが自身の持つ力以上の能力を発揮する事もある。


例えばある程度の純度を持った水を操る魔法ポセイドンは、陸地で使うとなるとそれなりの用意が必要になる。ましてや、砂漠では何の力も発揮できない事すらある。しかし、海に行けばどうだろうか。

《ポセイドン》使いのジョージ・レビン率いるアラドニア連邦海軍は、60年もの間他国の戦火から国を守り続けた。それも、損害らしい損害を一切出す事無く。

無敵の海軍の逸話は、魔法使いの可能性を示唆する例として、今でも各国で言い伝えられている。


この様に何かしらの条件が揃う事で、魔法使いのポテンシャルは指数関数的に上昇する。

そして今のメルティは、明らかにその上昇状態の恩恵を受けている状態だ。


「あらやだ。あれだけ苦労して落としたのに、跡形も無くなっちゃったわ。」


巨塔が魔法陣に飲み込まれたのを見て、薬師が呟く。


「無い…吸収しているのか?」


戦乙女は、今出せる最良の結論に辿り着く。


「まさか、奴の魔法は…!」


あの義体も、突如現れる様になった鎖も、吸収行為も全て説明が付く、信じたく無い結論に。

戦乙女の憶測は、概ね当たっていた。


「《創造・ランスロット》。」


メルティの隣に、魔法陣が出現する。


それは全長5mの人型機械だった。

継ぎ目から青い光の漏れる、純白の装甲。

装甲は必要最低限と言った具合で、その四肢はとても細く、関節部分は特にくびれていた。

その手には、機械仕掛けの大槍が握られている。

その頭はトサカの様な装飾品が付いた、中世の鎧のヘルムを模していた。


ーーーーーーーーーー


コネクト中…コネクト完了


ーーーーーーーーーー


「うわ!?」


突然現れた二つ目の知覚に、メルティは一瞬だけ混乱する。

一つの意識で二つの体を操作する事など、通常の人類では出来ない経験だった。


(凄く自然に動く…けど、何だか不思議な感じ。)


【ランスロット】と【リンカネイション】は姿形や機能は違えど、本質的には全く同じ、メルティの意思で動く傀儡だった。

ランスロットの兜の中で輝く単眼が見る景色も、メルティはしっかりと知覚出来た。


「総員、よく聞け。」


戦乙女は、通信機により他の6人に言葉を送る。


「今ここで奴を倒さなければ、いずれ我が国、ひいては新体制派そのものを脅かす存在となる。」


『おやおや。あの堅物女が、随分と寛大な評価…』

「聞け。猟犬。これは評価では無く事実だ。」

『あ?どういう事だ?』

「良いから聞け。」


メルティとランスロットの目が、戦乙女を捉える。


「奴の能力は、機械を作る力だ。その代償は恐らく、魔法の発動に人工物の消費を必要とする事。そして、人工物で溢れるこの世界では、その代償は全く機能しない。」


ポセイドンにとっての海は、メルティにとっての文明。

物体を資本とする以上、構築物が消える事も無い。


「総員に告ぐ。奴の魔法はいずれ、この世すら統べる可能性を持っている。我々の今行うべき使命は一つ。今此処で、災禍の芽を摘み取るのだ!」


『了解!』


メルティとランスロットの周囲に、今度は7個のゲートが出現する。


ゲートを通って現れた小隊に、メルティは早速囲まれた。


「機構の魔法使いよ。貴女の魔法は、この世にあるには大き過ぎる物。悪いけど、此処で消えて貰うわ!《マインドシンクロ》!」


小隊全員の左目が、黄色い輝きを帯びる。

戦乙女の魔法により、小隊は思考の一部を共有した状態になった。


「今度はその首もいでやるよ!ゴミクズ衛生兵がよおおおおお!」


両手にハンドショットガンを持った猟犬が、メルティに突っ込んでくる。


だがその突進は、ランスロットの槍によって上にはね上げられた。


「邪魔なんだよデク人形が!」


猟犬の背後に爆弾が投げ出され、それが爆発する。


爆風によって落下を加速した猟犬は、ランスロットに銃を向けた状態で再び地面に降り立つ。

ランスロットの上に、無数のC4爆弾が降りかかってきていた。


「がはははは!スクラップにしてやるよ!」


花火屋が、とても楽しそうに爆弾を投げ続ける。

そんな花火屋の思念すらも共有され、全員が楽しい気分になる。


メルティがそれを見たので。ランスロットは天高く跳躍し、空中で槍を振るう事で全ての爆弾を破壊する。


「ふ…本体がガラ空きよ!《シルバースネーク》!」


銀蛇が、10本もの鎖をメルティに投げ出す。

メルティはそれを見ても、かわしもしなかった。


「…!だめだ銀蛇!直ぐに離れろ!」


事に気付いた戦乙女が大声を張る。

だが、時は既に遅かった。


「うわ!?」


銀蛇は逆に、左腕に鎖を巻き付けたメルティによって引き寄せられる。


「銀蛇!」


猟犬がショットガンを放つが、距離も硬度もあり銀蛇の鎖を絶つには至らない。


メルティはそのまま、銀蛇の首を掴む。


「嫌ああああ!だだ誰か!助け」


メルティは、ほんの少しだけ手に力を入れる。

ほんの少し、しかし一切の抵抗を無視して握られ、銀蛇の首の骨は粉砕された。


銀蛇は、即死した。


「………」


メルティは死んだ銀蛇を、その辺に適当に放り捨てる。


「…シンシアあああああああああああああ!!!!!」


猟犬は、叫んだ。

すみません。

寝ぼけて日付設定間違ってました。・°°・(>_<)・°°・。

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