第6話 アベクの思い①
次の日いつも通りの朝を迎えた。ただ、今までと違うのは隣にサペンがいることだ。起きてから家のことを済ませると、サペンと一緒に山菜を取りに向かった。
山菜を取るのを早く終わらせ、残りの時間を魔法の練習に使うことにした。
「風魔法、エアーシュート!!」
野うさぎを魔法を使って捕まえようとしたが上手く当たらなかった。
「ダメだ〜。何回やっても当たらないよ」
リーリエはため息混じりに言う。そこから何回か続けたがついに野うさぎに魔法が当たることは無く先に魔力が切れてしまった。
「う、動けない。。」
魔法を使いお腹が空いたので、先に準備をしていた木の実を食べ少し休憩をした。
休憩が終わる頃には夕方になっていた。山菜を持ってお店に向かった。サペンは着いていけないので家でお留守番をすることになった。
「それじゃあ行ってくるね!」
リーリエはサペンに手を振りお店に向かった。
サペンは昨日リーリエが話していた、村全体からのいじめが気になり、魔法を使って穴を作りリーリエの仕事を見ていた。
「この料理をテーブルに持って行って」
ジェラに言われリーリエは料理を運んで行った。
そこへ酔っ払った客がリーリエの全身を見てから話しかけた。
「リーリエちゃん可愛くなったね。おじさんと一緒に夜を過ごさないかい?」
そう言われ苦笑いをしていると、
「やめろやめろ。魔物が産まれちゃうぞ。しかもお前にそっくりな魔物だ」
大笑いしながらちゃかすように言った。
「それもそうか!」
2人はさらに大笑いをした。リーリエは苦笑いをしながら料理を運び厨房に戻った。
(気持ち悪い)
言葉には出せないが全身から鳥肌がたった。他にもサペンが見たリーリエは公開処刑のような風景だった。客からリーリエに発せられる言葉は酷いものばかりだった。そんな姿をサペンは大人しく見ているしか無かった。何も出来ない自分、リーリエを馬鹿にする客に苛立ちを隠せなかった。すると、一瞬誰かと目が合った。咄嗟にサペンは身を隠して穴を閉じた。
(どうしよう。バレたかも。でも一瞬だったし。。)
リーリエを見るのは今日は辞めておくことにした。
時間が経ち、まず帰ってきたのはジェラだ。次に少し経ってからアベクが帰ってきた。2人はご飯を食べているようだった。リーリエが帰ってきたのは随分時間が経ってからだった。
「ただいまサペン」
疲れながらも笑顔をサペンに向けた。リーリエはキッチンから2人が残したスープを持ってきた。
「いただきます」
パンとスープを一緒に食べた。リーリエは全然元気がなかった。サペンはリーリエの横に座りもたれかかった。リーリエはごちそうさまをして食器を洗いに行った。
(リーリエになんて声をかければいいんだろ)
村人からの仕打ちを実際に見ると声をなんてかければいいのか分からなかった。話題を考えているとリーリエは部屋に戻ってきた。
「サペン。今日はギューってして寝ていい?」
リーリエが聞いてきた。
「もちろんいいよ」
2人は抱き合って寝た。
夜も更けた頃、1人の人物がリーリエの部屋を覗いた。その人物は驚いた。ペンギンのような生き物がリーリエの隣で寝ている。
(あれは見間違いじゃなかった。。。)
その人物はゆっくりと扉を閉めて、その場を後にした。
次の日も家のことを済ませて山菜を取りに行こうとすると、アベクに声をかけられた。
「今日はジェラの取ってきた山菜で料理を作りたい気分なんだ。リーリエは他に頼みたいことがあるからそっちをやりなさい」
ジェラはビックリした顔をしている。
「私は他にやらないといけないことがあるんだけど」
ジェラは不服そうに答える。
「頼むよ。この子が来る前はやってくれたじゃないか。今日だけでいいから」
アベクが頼み込むとしょうがないという風に息を吐き、家を出ていった。
ジェラが家を出たのをしっかりと確認をしてリーリエを呼んだ。
「リーリエちょっとこっちに来なさい」
リーリエはテーブルに向かった。
「座りなさい。少し聞きたいことがある」
ドキッと心臓が動くのを感じた。
「なにか私に隠していることはないか?」
アベクの目は真っ直ぐだった。
リーリエは黙り込んでしまった。隠していることはひとつしかない。サペンのことだ。でも、なぜバレたのかがわからない。嘘を色々と考えたが、やめることにした。
「サペンを部屋に隠してます。。」
俯きながら答えた。
「呼んできなさい」
リーリエは小さく返事をして、部屋からサペンを何も言わず連れてきた。
「この子がサペン君か」
アベクはじーっとサペンを見て、一通り見終わるとリーリエに目線を戻した。
「この子はどこから連れてきたんだい?」
「私が魔法で召喚しました、、」
リーリエはアベクの顔を見ることが出来なかった。
「そうか。なぜ黙っていたんだ?」
「怒られると思いました。あと、魔物の子が魔物を召喚したって言われて、家を追い出されると思いました、、、」
サペンは2人のやり取りを静かに聞いていた。
アベクは質問を続けた。
「そうなるかもしれないことは召喚する前にも分かってたいはずだ。それでも召喚したのはどうしてだい?」
「、、たから、。お友達が欲しかったからです。」
リーリエは今にも泣き出しそうな声で答えた。サペンと別れないといけないかもしれないという不安があったからだ。
アベクはしばらく目を瞑って考えた。少しの間沈黙が続いた。その空気を動かしたのはアベクだった。
「はぁーー。どうしても一緒に居たいんだな?」
俯いていたリーリエは涙目でアベクを見てしっかりと答えた。
「ずっと一緒に居たいです。」
その目に嘘がないことをアベクは感じとり、立ち上がった。
「わかった。そしたら、サペン君もこの家にいなさい。」
その言葉を聞いた2人は顔を見合わせた。
「アベクさんいいの?」
「あぁ。」
2人は喜んで抱き合った。
「ただし、リーリエと一緒に家の手伝いをしなさい。それが条件だ」
「分かりました。ありがとうございます」
サペンは答えた。
「ジェラと村の人達からは私から伝えておく。サペン君は今日は部屋にいなさい。明日からしっかり働いてもらうから」
そう言うと、お店の準備に向かった。リーリエもそれに着いて行った。道中でリーリエはアベクに話しかけた。
「アベクさん本当にありがとうございます。」
「気にしなくていい。君はむ。。」
何か言いかけたが、話すのをやめお店に向かった。リーリエはお店に着くと準備を始めた。アベクは寄るところがあるということだった。
その日は今朝起こったサペンのこと以外変わったことは無く、お店のお手伝いを終わらせ家に帰ってきた。2人は今朝あったことが嬉しくてこれからも一緒に居れることを喜んだ。
「これでこれからも一緒に居れるね!」
「良かったよ」
リーリエは胸を撫で下ろした。
「それよりなんで気づいたんろう?」
リーリエは疑問に思っていたが、その疑問にはサペンが答えた。
「昨日リーリエのことが心配で覗いていたんだけど、誰かと目が合っちゃったんだ。たぶんその人物がアベクさんだったんだよ!」
「覗かれていたのか、、、」
リーリエは恥ずかしくなった。2人は明日一緒に働けることを楽しみにしてベッドに入り眠りについた。
寝ていると急に大きな音が家に響いた。サペンは起きなかったが、リーリエは目を覚ました。
(なんだろう今の音。下の階からだ。)
リーリエは恐る恐る階段を降りるとリビングから2人の会話の声が聞こえてきた。
なにか大事な話をいてるようだった。
読んでくださりありがとうございます!
第6話長くなりそうなので2部に分けます!
リーリエは泣き虫ですね(。ŏ﹏ŏ)
いつも泣いているような、、汗
続きは早く出せると思うので楽しみにしていてください!
コメント、評価お待ちしています!