第12話 ミア=アサール
イネンザイデでの2日目。2人は街を見回りながら、一族の情報を集めに出掛けた。
「魔物の一族がどこに住んでいるのかって?そんなの知らないね。全員死んでいれば俺は嬉しいよ」
笑いながら死を口にする住民に、リーリエは沸き上がる感情を抑えて聞き込みをした。だが、有力な情報は手に入らず半日が過ぎてしまい、一旦テラス席のあるお店で昼食を採ることにした。
「なかなか情報が手に入らないね」
「そうだね。でも、みんなそんな風に言わなくても良いよね‥」
話を聞けば聞くほど彼女は悲しい気持ちになった。
そしてみな共通しているのは、ペルム一族を恨んでいるが、なんでそう思うのかは誰一人教えてくれなかった。
二人が悩みながら通りを見ていると、一人不思議な格好をしている女の奴隷が目に入った。
服装や重りは他の奴隷とさほど変わりがないが、腕や足には深い切り傷がたくさんあり、顔は麻の布のようなものを顔に巻いていた。
その女は両手で大きな入れ物を担ぎながら歩いていた。
「あの子、あんなひどいことをされてる…助けないと…」
リーリエがその光景を見て反射的に立ち上がったので、サペンは腕を引っ張って止めた。
「ダメだよ!そんなことしたら、君まであの子と同じ目にあっちゃうよ!」
「でも、もう我慢できないよ…」
昨日から迫害されている姿をたくさん見てきた彼女は我慢の限界だった。
「ダメだって、リーリエ!!!」
奴隷の女の子が見えなくなるまでサペンは必死に引き留めた。
「なんで、あんなことを許している人があんなに崇められてるの!!」
怒りのぶつけどころがわからずテーブルを強く叩いた。そんな彼女をサペンは静かに見ていた。
しばらくの沈黙の後、リーリエが口を開いた。
「私、デューネって人がどんな人か調べる。人が人に上とか下とかつけるのは間違ってると思う」
彼女は意思を固めている目をしていた。サペンは止めようと思ったが、無駄なのがわかったので諦めることにした。
「わかったよ。ただし、命の危険があるって僕が判断したらそこで調査は終了だよ?」
その提案にリーリエは頷き、午後から領主のデューネについて調べることになった。
調査を始めて1人目からとんでもない情報を手に入れることできた。
「調査でわかったことは、デューネは街を攻めてきたペルム一族から街を守っていて、その時に捕まえた人を奴隷として売っているらしい」
「じゃあ、あの人達はみんな私と同じペルム一族、、、」
「リーリエ、、?」
心配そうにサペンが問いかける。
「大丈夫だよ。」
そういう彼女の両手は握りしめられ震えていた。
大丈夫と言いながらも大丈夫じゃないのはこの二日間の彼女を見ていればわかる。
「この話が本当なのかもっと調べる必要があるね」
路地裏でそんな話しをしていると遠くから女性の声が聞こえてきた。
「助けて!!!!!!」
二人は声のする方を向くと1人の女性が3人の男性に追いかけられていた。
「待てこのやろ!!!」
1人の男性が低い声で叫んだ。
「この街は寂しい、、、」
サペンの隣を背中から紫の炎を出しながら声のする方に向かって歩いていった。
「いなくなっちゃえ…」
そう呟きながら放たれた炎は男三人を気絶させるのには十分な威力だった。
サペンはすぐに周りを見渡した。この戦闘を見られていたら、リーリエがペルム一族だとバレてしまうと思ったからだ。誰も見ていないことを願ったが、1人に見られていた。それは助けた女性だ。
サペンはリーリエに声をかけようとした瞬間、助けた女性がものすごい勢いで走ってきた。この街にはもう居れないと思ったが、彼女の反応は意外なものだった。
「ねぇあなた!もしかして、あの一族の人!?いや、絶対そうだよね!気になる~」
女性はリーリエをじろじろ見て、体を触ってきたので、さすがに怖くなり少し距離を取った。
「な、、なんですか!あなたは!」
リーリエは裏返った声で聞く。
「私?私は……。おっとその前にここで話していると追手がきちゃうかもだから話しは後にして、私の家においで!ほら行くよ!」
リーリエの意見を全く聞かずに、すごい勢いで引っ張って家まで連れていった。その勢いのせいなのか、唖然としてるサペンと対照的に近くで止まっていた鳥が羽ばたいていった。
「ここが私の家!」
引っ張られて着いたのは街の端っこのマンホールらしきところの前。ふたを開けるとそこには地下へと続く梯子がかかっていた。
「早く降りるよ!」
休む間もなくどんどん進む彼女にもうどうにでもなれと言う気持ちでついていった。
中に進むと広くなっているところがあり、そこにはたくさんの本が色々なところに散乱していた。
本が散乱していることを除けば、地下とは思えない綺麗さで、匂いもさほど気になるレベルではなかった。
「まぁまぁ、ゆっくりしていってよ~」
そういう彼女はお茶を入れてリーリエと一緒にテーブルを囲んだ。
「は、はぁ、?」
リーリエはいまだに現状を飲み込めていない様子だった。状況を整理するために質問をしようとすると、机に穴が開いた。
「えっ、なに!?」
彼女の目は驚きと興奮で目を輝かせていた。
その穴からはサペンがぴょこっと出てきた。
「僕を置いていくなんてひどいじゃないか!!」
サペンは彼女に言ってみるが、全く話を聞いていない様子だった。
リーリエが咳払いをして、彼女に質問をした。
「えーっと、まずは、あなたの名前はなんですか?」
彼女はサペンのほっぺをつんつんしながら口を開いた。
「まず人に名前を聞くなら自分から名乗るべきじゃないの?」
まともな行動を取ってない人にまともなことを言われ、うっとなった。複雑な心境だ。
リーリエが自分の名前を名乗ろうとしたら
「私はね!ミア=アサール!ミアって呼んでね!」
「先言うんかい!あと、ほっぺぷにぷにやめい!!」
思わずサペンがミアの人差し指を叩きながら突っ込みをいれた。リーリエも苦笑いをする。
「じゃ、じゃあ今度は私の番ね!私はリーリエ=スノーブルーメ、リーリエってサペンから呼ばれてるよ。サペンって言うのはこの子」
紹介されたサペンは胸を張る。
「君たちのことすごく興味がある!!まわりくどいの嫌いだから直球で聞くね!リーリエ、君はペルム一族じゃない?」
すごい笑顔で普通の人なら怖がるようなことを聞かれた。
「い、いや、私は普通の魔法見習いだよ!ね、ねぇサペン?」
「う、うん!僕は召喚獣だし!」
明らかに動揺しているのがバレバレだった。
「まぁ、素直に、はいそうです、とは言えないよね。この世界の現実やこの街を見ていたら。」
ミアは急に真面目な顔をして、リーリエの顔を見る。
「私はペルム一族が迫害されているのは間違っていると思うの。それに私はある病気の治療法と学校では習わない歴史の真相について知りたいだけなの。だから、話だけでも良いから聞いて欲しいの。お願い!!」
ミアは二人に頭を下げた。そんなミアを見て二人は少し相談をした。
「ねぇリーリエ、この人悪い人じゃなさそうだし、自分のこと伝えても良いんじゃないかな?それに、僕たちよりもペルム一族について知ってそうだし」
「そうだね。話を聞くだけなら大丈夫だよね。もし危なかったら逃げればいいよね」
二人の意見は一致した。
「わかった。まず話を聞く。その後の事はそれから考えさせて」
「ありがとう!!!」
二人の答えを聞き、ミアは顔を上げ満面の笑みを浮かべた。
「それじゃあまず、一般的に知られている歴史について話すね」
社会人になって2週間。今のところ楽しくやってます。
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