5-1
5-1です。
なんにも無い1日です。
所々に薄く桜色に色付く木が目立って見える。
まだ見なれない景色に、今年もやってきたんだなぁ…としみじみ思った。
【さくら視点】
廊下を歩いていた足が、ふと止まる。
(…咲いてる)
王宮内に植えられた桜の花が咲き始めているのに気付いた。
…そういえば、私の産まれた時も桜の花が咲いていたらしい。
ぽかぽか陽気が気持ちよくてうーんと伸びをした。
…今日は何をしようか。王宮内での仕事も終わり、お昼になった。今日は珍しく何も無い日。だからと言って、私事の予定を入れている訳でもない。本当に何も無い日だ。
…久しぶりに、弾こうかな。
私は小さい頃よく行った場所に向かった。
たどり着いた先は、ピアノが1つだけ置いてある広いホール。
しばらく弾かれていないピアノも、手入れがしっかりされてあるので、とても綺麗であった。
小さい頃は毎日来ていたこの部屋も、今ではこう懐かしむ程には来ることが無くなっていた。
ひんやり冷たいピアノだが、鍵盤部分はしっかり温もりがあった。
温もりのある鍵盤は、よく弾かれて大切にされてきた証拠だ。
私は軽く弾きながら正確な音がなるか確認する。
これでも調律は出来る。
(うん、大丈夫かな)
1度ペダルを踏んで感覚を思い出す。
鍵盤に手を伸ばしたところで、ふと考えた。
…何を弾こうか?
そう言えば明日皆集まって遊ぶ約束がある。
いつものメンバーで集まるのだが…
そうだ、何か良い曲を練習してってその時弾こうかな。
自分の曲でも良いけど、どうせなら弾いた事の無い曲でも弾いてみたい。
久しぶりにこのピアノで練習してみたい。
私は親の曲の楽譜を取りに行った。
大量の楽曲の中から厳選して引っ張り出してきた楽譜を手に再びピアノの部屋に戻った。
自筆の楽譜…多分売ったら数万はするんだろうな。
まあ絶対売らないけど。
まずは弾いたことのある簡単な曲を弾いて、指慣らしをしておく。
ひ、弾けた!!
時々王宮内の精霊たちが聴きにやってきたけど…このピアノよく響くんだな。
私は本命のまだ弾いたことの…いや、弾けたことのない楽譜を譜面台に置いて、フー、と一息ついた。
私でもしかめっ面になるほど、(良い意味で)気持ちの悪い音符の羅列である。
でも、あれ?私……
……久しぶりの強敵に出会って、どうやらワクワクしているようだ。
因みにピアノはグラウンドピアノです。
作者が桜を見て、桜を突然入れたくなっただけです。本来は【さくら視点】に入れる予定だったのですが、なんか始まり方と魅せ方が気に食わなかったので、2文だけ独立してしまいました。オマケとしてご覧下さい。
ここまでご覧頂きありがとうございました。