転生したのは辺境の田舎娘でした 5
「!?!?」
男の人は目を丸くして足を止める。私は彼と会話ができるくらいの距離で立ち止まり、遅れてランもやってきた。
「君たちは…?」
「あの…えっと、その…」
息絶え絶えに何か言おうとしていた時。
足元、いや、この辺り一帯が小刻みに揺れ始めた…?
数秒後。
ドドドドドォォォォオオオ!!!!!
「「「!?!?」」」
背後から突如大きな音。しっかり踏ん張らないとまた転ぶ!
少しして揺れも音も止んだ。踏ん張ったおかげかなんとか転ばずに済んだ。
男の人はさっきより一層目を丸くして、私ではなくその向こうを見ていた。恐る恐る、彼の視線を追いかける。
「……っっ。」
…ーついさっきまでランと立っていた場所が跡形もなく土砂にのまれていた。
これって…。
「助かった、の?」
「助けられたんだよ!!」
「うおっ」
ランに両肩を掴まれブンブンされる。ちょ、ぐわんぐわんする。やめて。
「盛り上がっているところ失礼。一体どういうことだい…?」
男の人が声をかけてきてランのブンブンは止まった。ありがとうございます…。
そりゃあそうだよね、最も状況を把握出来ていないのはこの人だ。
「えっと…彼女が先日ここの土砂崩れの映像を魔法で視たらしくて。それが今晩のことかもしれないと思ってここまで来たら、映像の通り貴方が現れたんです。」
「映像?…君が見たのかい?」
言いたいこと全部ランに言われてしまった。驚いた顔のまま、男の人は視線をランから私にうつす。質問の答えはYESなので首を縦に振った。
「そうか、そんなことが…」
なんかぶつぶつ言い出したんですけど。なになに、なにかまずかった?
10秒くらいして、彼は困惑する私達に視線を戻した。
「ありがとう。君達は私の命の恩人だ。是非お礼をさせて欲しいところだがあいにく私は行くところがあってね。お礼の前に、先にボール村に行かせてもらっていいかな?」
「ボール村ですか?私達はボール村の者です。よかったら案内します。」
「本当かい?ますます感謝しなければならないね。この道以外の行き方は知らなくて…。」
「「…あ。」」
…そうだ、たった今道潰れちゃたじゃん。ここから広い道に出るにも、まずこの土砂を越えないと出られないのでは…?ランと顔を見合って青ざめる。
「ここから村への方向はわかるかい?」
「それならなんとか…。」
「なら問題ないよ。」
「えっ?…ええええ!?」
問題ないと言われた瞬間足元がスースーして…下を見るとなんと身体が浮いていた。ランも右に同じだ、一緒にあわあわする。男の人も浮いている。
「風の魔法の応用だよ。で、村はどっちかな?」
「あ、あ、あっちですぅぅぅ!!」
わかった、と頷かれたかと思えば私達3人の身体は指さした方向に向かい動き始めた。なんじゃこりゃああああああ!!!!
私を宙に浮かせている張本人を見ると、先程とは違いむしろ楽しそうにすら見えた。
「ランドル!!!!トゥシェちゃん!!!!心配したじゃない、どこに行ってたのよ!?」
だいぶ山のふもとに近づいたとき、1番はやく私達に気づいたのはマヌーヴル伯母さんだった。伯母さんの声を聞きつけて、人が何人も集まる。そこには私の両親もいた。
地上に降り立つと、それぞれの両親が私達に抱きついてきた。
「ごめんなさい、心配かけて。」
村の人達も駆け寄ってくる。迷惑かけるちゃったな、申し訳ない…。
お父さんの腕の中で反省していると、先程まで私達を浮かせていた人の声が聞こえた。
「…久しいね、マヌーヴル。この青年は君の息子さんだったんだね。」
「あなた…エリオット?」