薔薇の秘密 In alium orbem terrarum 《Ⅰ》
私は、手元のハンドフォンを操作して、カウンターに座った男女が言った16世紀の歴史について調べた。
確かに無敵艦隊を率いていたのは、ヒスパニア(スペイン)のフェリペ2世ではある。しかし、私の歴史では、それを撃破した女王の名はジェイン・ケイト・グレイ。
ヘンリー8世の異母妹の孫娘だった。
新教徒ではあるが、温厚なジェイン・グレイ女王の下、旧教の信仰も守られ、幸福な17年と言われた黄金時代。
しかし、彼女は1番目の夫は病死し、二番目の夫とも子供ができないまま33歳で天に召された。
私が知るエリザベス1世。
それはアンゲリア、こちらで言うイングランドとの戦争、ソルウェイ・モスの戦いに敗れたスコットランドのジェームズ5世の幼な妻のことだった。
彼女がスコットランドに嫁いだのはわずかに9歳。
ソルウェイ・モスの戦いは旧教から新教に国教を変えたヘンリー8世が、異母妹の息子であるジェームズ5世にもそれを強いて、拒否されたために起こった戦だった。
結果はイングランドの圧勝であり、スコットランドの捕虜は1200名を越えたという。
その中にはジェームズ5世もいた。
彼らは捕虜の身としては丁重に扱われた。
ただヘンリー8世は解放の条件に、ジェームズとエリザベスとの結婚し、彼女を共同統治者とすることを迫った。
もちろん、エリザベスはまだ幼い。13歳になるまでは肉の交わりを持たない白い結婚とすることも条件となっていた。
ジェームズ5世は1年前に妻が亡くなったばかり。その妻が生んだ1歳になる王女メアリーがいるだけだった。
幼い子供に何ができると思ったのか、ジェームズ5世はエリザベスとの結婚を承諾する。
彼がまだ29歳であり、4年という月日を待てると考えたのかもしれない。
その後、エリザベスに嫡子を生んでもらえばよいのだと。
現代では、叔父と姪の結婚は一部の国を例外として禁忌としているが、大陸では貴賤結婚を戒める法がある時代である。
ジェームズ5世は新教徒に改宗し、エリザベスとイングランドの教会で結婚する。
しかし、ジェームズ5世はその3年後に熱病に罹って死亡してしまう。
彼の早すぎる死は、前妻の娘、メアリーとエリザベスとでスコットランド王位を争う戦乱の幕開けとなった。
メアリーはフランス(パリシア)を後ろ盾に、ジェームズ5世とエリザベスの白い結婚は無効として、女王として即位した。
むろん、エリザベス、いや、イングランドも黙っていない。
エリザベスもスコットランドの王冠を戴き、二人の女王は激突するのだ。
「伯爵令嬢の婚約破棄は教会の鐘と共に?」 の架空歴史とリンクをしております。
架空歴史については、これからも順次書いていく予定でおります。
パラレルワールドの歴史を考えてあるのですが、なかなか作品としては書き切れません。
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