串肉五本分の対価にしては大きくないですか?
ブックマークなどしてくださった方、ありがとうございますー。
今回は少し短いです。
作中の貨幣について書いておきます。
価値が高い順に、アーベル金貨、クロイツ銀貨、カリーネ銅貨、ヨーヌ銅貨、ドゥム銅貨です。
1アーベル金貨=100クロイツ銀貨
1クロイツ銀貨=100カリーネ銅貨
1カリーネ銅貨=20ヨーヌ銅貨
1ヨーヌ銅貨=20ドゥム銅貨
貨幣の名称については特に気にしなくても内容は理解できます。
親切なおにーさんーーーーヴェンから慰謝料を美味しくいただいた後、私はホクホク顔で礼を言い、帰ろうとした。けど。
「待て」
イイ笑顔で私の肩をガシッと掴んで離さないのはおにーさん。
「追加した五本分、今この場で払ってもらおうか」
「……。はい?」
私はにこやかな笑みを崩さないままジリジリと後ずさる。
「何のことですか? さっきの串肉は、僕への慰謝料ですよね? そこにいるおじさんに殴られたほっぺ、ものっすごく痛かったんですよ? ということなので……さらば!……ぐえぇ!?」
隙を見て出口にダッシュした私の首根っこをおにーさんが掴んだ。
「逃げてもらっては困る。一ヨーヌ銅貨と三ドゥム銅貨だ」
「いや、それが払えるなら僕、おにーさんに頼んでませんよね。お腹空いてませんよね!? ていうか高っ! 串肉五本でヨーヌ銅貨!? 帝都恐っ!」
「お前の事情など知らん。とっとと払え」
「うわああぁぁぁんっ! 誰か助けて! 詐欺ですよ詐欺ー!」
大声を出したら誰か来てくれるはず!
誰か来てー!
「誰も来ないぞ。ここは貸し切ってある。宿屋の主人には何が聞こえても決して来るなと命じた」
詰んだ! これ、首スパってやられて海に沈められるやつだ! それか、どっかの鉱山で強制労働を死ぬまでやらされるやつ!
「全てダダ漏れだぞ。まあ、後者は半分正解だな」
「え!? 鉱山なんですか!?」
帝都から近い鉱山は……ヨルグ銀山!? あのでっかい山!? 私、あそこに連れて行かれるの!?
「山じゃない。お前には強制労働をしてもらう。……なに、心配するな。適性がないと分かれば、すぐ解放してやる。」
「適性……。人体実験ですか!」
真っ青な私に、目の前のおにーさんはシュナップスの入ったグラスを傾けながら笑う。
「串肉五本分、きっちり身体で払ってもらおうか?」
その後、宿に甲高い少女の悲鳴が上がったとか上がっていないとか。