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旦那様から拒否られました。

 ■□■ 


「ハァァーーー」


 マルガレーテ・ルイーズは重いため息を吐いた。

 彼女がいるのはシューレンゲル帝国の中でも七帝侯と呼ばれ、皇帝が選出される七家の一つ、バイエルン家。の、屋根裏部屋。


「おかしい」


 マルガレーテが呟いてしまうのも無理はない。


 今日、バイエルン家に嫁いで来た花嫁である彼女が、どういう因果か埃の舞う屋根裏部屋に立っているのだから。


 こうなった訳は、マルガレーテがバイエルン家に到着した数刻前に遡る――――。




 ■□■

「マルガレーテ・ルイーズ様でございますね?」

「はい、そうです」


 実家のオンボロ馬車から降りた私マルガレーテ・ルイーズはバイエルン家の家令に出迎えられた。


「旦那様は書斎にいらっしゃいます」


 無表情な家令さんの案内で連れてこられた、装飾でゴテゴテの部屋にはバイエルン家当主らしき中年の男がいた。おじさんだ。

 左右に女たちを侍らせてる。


「……ん? 此奴(こやつ)がルイーズ家から来た新しい側室か。……顔が気に入らぬ。なんだその娘は!?」


 当主は私を見た途端、不快そうに眉を寄せる。


「ブロンドの髪を持つ美しい娘がいると聞いたから側室にしたのに、来たのはくすんだ金髪の不細工な子供ではないか!」


 待て。

 待て待て待て。

 一体どこでそんな大嘘の情報が入ったんだ。


 綺麗なブロンド髪の美少女と自分の類似点が見つからなくて、私は目をパチクリさせる。

 ……大方、両親が物凄ーく誇張して言ったんだろーけど。


 私マルガレーテ・ルイーズの容姿はハッキリ言って美しくはない。だって、子供体型だし。童顔だし。よく名前負けしていると言われる。

 目の前でふんぞり返っているバイエルン家当主も、きっと私のことを十歳くらいだと思っているだろう。実際は十三歳だけど。

 実家は浪費癖のある両親のせいでいつもカツカツ。だから滅多に髪も洗えず、この館に来るまでの道中で土埃にまみれて髪はいつも以上に汚い。

 そういうワケで、当主が不満なのは自分でも理解できる。

 だがしかし。


「あの、当主さま。……周りにいらっしゃる方たちはどなたですか?」


 シューレンゲル帝国の七家のうちの一つだから、さぞ日頃から美女たちに囲まれてエンジョイしているんだろうと思っていた矢先に、()()()()


「この者らはわしの側室たちだ。美しいであろう?」


 当主さまの周りに侍る女の人たち。


 一人、歯が黄ばんで歯クソまで付いている女。

 一人、鼻が魔女みたいに曲がり、荒れに荒れまくったカッサカサの唇の女。

 一人、お腹がせり出してボヨンボヨンな女。


「……ヒ、ヒッジョーに個性的な奥様方ですネ」


 そういえば、近所のオバさんたちが噂してた。バイエルン家当主はトクシュな性癖の持ち主らしいって。


 ソーユーコトですか。……別に私、自分を美人だとは思ってないけど物凄い不細工ではないと自負しています。そりゃ当主さまが気に入らないはずだわ!

 美しさの基準が違ったね!?


「お前はわしのコレクションに加えん。屋根裏部屋にでも閉じ込めておけ!」


 え。

 ええー!? マジですか!?

 私これでも側室ですけど!? 妻ですけど!?


「畏まりました、旦那様」


 いやいやいや!?

 ソコ畏まっちゃダメでしょ、家令さん!?

 ちょっとどうなんの、私のこれからは!?





 ■□■

「ということで、マルガレーテ様」

「いや、ということで、じゃないですよね」


 ただいま、屋根裏部屋前。家令さんといる。


「今日からはこの部屋でお過ごしに」


 なれるワケねーだろぉぉぉ!!!


「あの、なら実家に帰らせて……」

「なりません。この屋敷で、旦那様のご命令は絶対です。……屋敷内はどこでもご自由に歩いて結構ですので」


 それだけ言って家令さんはどこかへ行ってしまった。


 ウソだろ。


「うあああぁぁぁぁッ!」


 そもそもあの両親の口車にまんまと乗せられたのがツキだった!


 ――――ご飯がいっぱい食べられる所があるんだけど行く?

 ――――えッ! 行く行く!


 クッソォォォォォッ! 即答してしまった自分が恨めしいッ!……だって食べる物が最近減ったんだもん! お腹空いてたし!

 ほんとにどーすれば良いんだろ!?


 混乱しまくってワタワタしているとお腹がもっと空いてきたので、私は脱力しながら新しい自分の部屋に入って行った。




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