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「ねぇねぇ、美言。今日のColorsのツブヤキッターみた?新キャラ来るんだって!!」
「みた!!たしか、緑系統なんだよね!!」
「たのしみ!!」
最近はやりで、女性に大人気のアプリゲーム、その名も「Colors」。プレイヤーはカラーマイスターと呼ばれ、色の失われていく世界で、色を取り戻すというある種、冒険的な要素のある戦略ゲームだ。私、千代崎美言もその「Colors」にドはまりしている一人。その「Colors」は今年で三周年を迎え、盛大にお祝いをしている最中。アニメ化したり、くじの景品になったり、いろんな展開がされているおかげで供給過多だ。そんな私にはとんでもなく推している、推しキャラなる存在がいる。それは秘色色と呼ばれる色がもとになった、秘色くんだ。長い秘色色の髪の毛を一つの三つ編みにして、リボンでまとめている。公式設定より身長は高めで百八十センチはあり、顔立ちは少し冷たい印象を与える。セリフで「別にあなたのことは心配していません、勘違いしないでください」と言っておきながらあとでこっそりマイスターを心配するようなタイプ。もう、めちゃくちゃ可愛い、推せる。しかし彼のステータスは同じ武器の中でも最低ランクと言われ、初期でわりときついことを言われるから人気キャラとはお世辞にも言えないのが現状。私は好きだからステータスが低くても彼を使いこんでるし、フェーズ三までステータスもカード立ち絵も開放済みだ。もちろん親愛度も上限突破。
「あんた、まだ秘色使ってんの?」
「秘色くん馬鹿にしないで。めちゃくちゃ可愛いんだから」
「そう?アタシにはその良さがわかんないわ」
「わかんなくていいの。それより、なんか攻略の方では新キャラは淡萌黄と薄萌黄って出てるんだけど、二人実装かなぁ?」
「え、字違いの読み一緒?」
「なんかシルエット二人あるし、もしや?って」
大学の食堂で、Colorsをやっている友人と食事をしながら最新の情報の共有も欠かさない。緑系なら武器は楽器の楽師だし、性能はいいかもしれない。私は永遠に秘色くん推しだけど!!そんな他愛無い話を友人と楽しみながら、今日も一日、大学生活を乗り切ったはずだった。
この瞬間が、来るまでは。
「お待ちしておりました、千代崎美言様。あなたは今日からカラーマイスターです」
「え?」
一人暮らしをするアパートの玄関を開けた瞬間、突然、景色がぐにゃりと歪み、咄嗟に目をつむってしまった。次に目を開けた時、そこは私がスマホの画面で見ていた「Colors」のホーム画面と同じ景色が広がっていた。