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瞳に映るAiの色  作者: 穂水美奈
24/24

Episode 23(終):「Hold me... A whole lot...」

 隆太たちの高校進学が決まり、仲良し4人組は、それぞれの夢を叶えるべく、進路も住む場所もバラバラになってしまうことになった。









 叶えたい夢のため。 それは誰もが承知だったが、仲良く過ごしてきた友との別れは、まだ思春期な彼らにとって、大きな試練でもあった。











 3月半ば。 まだ冬の寒さが居座っている青森を、隆太の(元)恋人、友加里が東京の学校へ進学するために、故郷を旅立つ日が訪れた。








 友加里は、自ら家族を説得し、隆太と最後のデートの時間を貰い、過ぎ行く時間を惜しむかのように、しっかりと手を繋いで、かつて初々しく歩いた思い出の街を、二人仲良くその思い出を追懐しながらさまよっていた。











 「ここ、懐かしいね…。 青い海公園。。。 初めて隆太とデートした時、ここでウチ、恋愛は3年生までって言ったら、隆太、すっごい動揺してたの思い出すわぁ…ww」











 …隆太は、それに対して特に返事もせず、深々と降る雪を掃おうともせず、ただ黙って、水平線の彼方を見つめているのだった…。











 「おいっ!!隆太ぁ!? 聞いてんの…!? …ってか、こんなムードの時にあんた何も感じないわけ!? いくらウチらが今日で離れ離れなのが淋しいからって、シカトするとかあんまりじゃね…!?」











 …勿論、そんなつもりはない。 隆太は、これまで一途に自分を慕ってくれた友加里に対し、どんな言葉をかけてあげればいいのか、散々迷いまくっていたのだ。











 「友加里…。ごめん…。。。 こ、、、こんな僕じゃ、気の利いたセリフで、友加里のことを見送ってあげられないよ…。 ずっと僕だって、友加里のことが好きだった…。 遡れば、小学生の頃からそうだった。。。 でも、、、友加里が、3年で恋愛を終わらせようって言って来た時、僕はわかったんだ。 この恋は、失恋に終わるだろうって…。」











 …友加里も俯いて、コートに積もる雪をさりげなく落としながら、隆太に言葉をかけた。











 「うん…。 その失恋の原因作ったの、ウチのせいだからね…。 ってか、ウチだって隆太が、めっちゃ年上の女性の、涼子さんにガチ恋するとか想像もしなかったよ…。 ウチだって、結果的に隆太にフラれたようなものじゃん!! 本当だったらもう口もきいてないんだよ!? …でも、、、でも、、、 …隆太が、一番の話し相手だったし…、何より、、、隆太じゃなきゃ、ダメだったんだよ…。」








 友加里は、隆太の胸元にポロポロと涙を零しながら、寒さ強まる海辺の公園で、胸の内を語り始めた。











 「隆太って、とっても人に優しいし、誰とでも友達になれる、いい性格を持ってると思ってたよ。 ってか、ウチ的には、隆太って何かと自分に従順だから、恋人っぽく付き合ってもらえてたんだよね。 あきら達みたいな他の男子だって気にはなったけど、やっぱりウチには、隆太じゃないとダメなんだってことが、一日一日過ぎるごとに強く感じるようになってて…。。。 隆太は、ケンカしちゃってもすぐに仲直りできるし、だからこそ、ワガママなこともいっぱい言っちゃった。。。 隆太って、今まで出会って来た異性の中で、ウチのいいとこもダメなとこも、一番良く分かってくれる、唯一無二の男子だって、ずっと信じてた…。」











 …隆太は、少し泣きじゃくる友加里の瞳に、やさしくハンカチを当てた。











 「友加里…。 ありがとう…。 僕だって、友加里がいないと、全然女子の友達なんて増えなかったと思う。 愛莉と仲良くなれたのだって、友加里がいたからだって思ってるよ。 本音言うと、もっと友加里と好き同士でいたいさ…。 だけど、友加里には、叶えるべき夢があるんだろ…? それも、今思いついたとかじゃなく、ちっちゃい頃からずっと憧れていた夢が…。 だからこそ、その夢のために恋愛さえも犠牲にするんだろ…? 友加里ってすっごい根性の持ち主だよ!! その友加里のハンパない覚悟があれば、絶対に売れっ子の作曲家になれるって、僕、信じてる!! 大丈夫だよ…。 僕は僕で、ちゃんと元気に生きていくから…。」











 友加里は、隆太の優しい表情に、思わず涙腺を崩壊させてしまった。











 「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーん・・・・・・・・・!!!!!! 隆太!! 隆太ぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・!!!!」











 隆太は、泣き叫ぶ友加里をぎゅっと抱きしめた。 凍える夕空の下、二人はいま感じている時間が、このまま止まってしまえばいいと思っていた。











 友加里は、なおも泣き顔で隆太に訴えかけた。








 「隆太!! ありがとう!! 隆太にそう言ってもらえたら、後はウチ、恋愛にはけじめをつけて、ちゃんと夢叶えるために頑張れるよ!! グスン…。。。 だけど、前も言ったよね! あんたとウチは、ずっと大切な友達でいようって…!! それは、、、グスッ…、、、それだけは、、、絶対、、、絶対に忘れんなよなっ…!!!! あんたもあんたで、ちゃんと涼子さんと幸せになれよ!! 浮気とかすんじゃねぇぞ!!!! ちゃんと結婚式にはウチも呼べよ!!!! たまにはウチのことも思い出して生きろよ!!!! いいか!? 絶対だぞ!!!!」











 掠れる声で、隆太に叫び、彼の胸をバンバンと叩いた…。











 隆太は、胸にあらゆる感情の込み上げる中、彼女への励ましの言葉を探しつつ、いつも以上に強く友加里を抱きしめた。











 友加里も、声が枯れるまで泣いた。。。 隆太は、友加里が何を語って来ても、笑顔を崩さず、心だけで涙しながら、無人の公園の真ん中で、友加里をずっとずっと抱きしめた。








 


 …もう、僕達は長い間、会えないかもしれない…。 …だけど、心だけは、遠く離れていても、時間に隔てられてしまっても、途切れることなく、いつでも、いつまでも共鳴し合っていたいのだ。











 今はただ、目の前に迫る別れの瞬間を悲しむことしかできないが、せめて最後は、全力で素直な気持ちをぶつけたい…。 自分のためにも、彼(彼女)のためにも…。











 長いようで短かった3年間の思い出は、凄まじい勢いで脳内に蘇った。 もう戻れない過去。 もう戻れないお互いの関係…。 それを思うと、後はただ、涙でその気持ちを見せ合うだけになっていた…。














 そんな二人を静かに慰めるかのように、ふと途切れた雪雲の隙間から、優しい夕陽の光が隆太と友加里を包み込んでいた…。




















 …やがて、日没となり、そろそろ友加里の乗る列車の発車する時間となった。 二人は、かつて手を繋いで流美と鉢合わせしてしまったコンビニであたたかいスープを買い、それを飲みながら駅に向かった。








 駅には、友加里の母の他に、あきらと愛莉、そして、流美と涼子の姿もあった。 聞けば、友加里の旅立ちをみんなで見送ろうと、急遽あきらと愛莉が、青森駅に集まるよう声を掛けたのだそうだ。














 友加里は、母親から大きなトランクを手渡された。 隆太が「僕も持ってあげようか?」と尋ねた時は、「いいよ…。」と断ったが、こんな時ぐらい、彼に甘えてもいいだろうと思い直し、「じゃ、、、ちょっとだけ、お願い…。」と、二人でそれを持ったまま、駅のホームへと向かって歩いた。











 18時発の寝台特急「あけぼの」が、ホームに静かに滑り込んできた。 発車までは数十分あるので、友加里は自分の寝台に荷物を置くと、見送りに来たあきら、愛莉と共に、よもやま話に花を咲かせた。








 あきら「友加里!!元気でな!! お盆かお正月になったら、絶対また会おうな!!」








 愛莉「友加里…。あたしもきっと、立派な演奏家になって、水泳の選手になるっていう夢、両立させるから!! 友加里も頑張ってね!! 友加里…。 バンドで一緒に音楽演奏したこと、ずっと忘れないよ…。 ケンカしちゃったことも、事故に遭った時に支えてもらったこともね…。」








 流美「友加里ちゃん。。。 本当に元気でね。 隆太は大丈夫だから…。 友加里ちゃんが、一人前のアーティストになって帰って来る日のこと、心から信じて待っているからね。」








 涼子「友加里ちゃん♪ …これ、私からの餞別だよ。 浅虫温泉の高野山神社で買って来たお守り♪ 大願成就のお守りだから、友加里ちゃんがこれから困難にぶつかった時も、私達が心から支えていることを思い出して、頑張ってっ!!」











 …隆太は、何か恥ずかしそうに目線を泳がせていたが、流美に促されて、友加里のもとへ立たされた。








 「…友加里…!! 友加里ぃぃぃ…!! うっ…、、、うわぁぁぁぁぁーーーん!!」








 友加里「ちょwww こ、、、ここで大泣きするかぁ…!?!? ウチはもう、きれいさっぱりさよならできるって思ってたのに…、、、なに、バカな真似するんだよぉぉぉ…。。。 そんなことされたら、ウチだって…、、、ウチだって…」








 友加里は、列車のデッキにうずくまり、泣いてしまった。











 すると、それを見ていた涼子が、隆太に耳打ちした。








 「隆太くん!! 最後はきみが友加里ちゃんを元気いっぱいに見送らなきゃダメなんだから!! ほら、彼女の手を握ってあげて…。」











 隆太が友加里の手を握ると、彼女は涙を零しながらも、渾身の笑顔で隆太たちに「ありがとう!!」の気持ちを返した。




 …列車の発車時刻が、あと数分というところまで迫った。









 友加里の母は、集まった皆に対し、優しくこう語った…。








 「みなさん。 いままで友加里と仲良くしてくれて、本当にありがとうね。 友加里はこれから、厳しい世界に船出することになるけれど、こんなにステキなお友達がいてくれて、みんなが優しい気持ちをいっぱいくれたんだから、絶対に大丈夫だよ。 もう二度と会えない別れじゃないから、みんなもあまり悲しまないで。 そして、友加里のことを、ずっと覚えていてね。」








 あきら「友加里!! 頑張れよ!! 友加里がCD出したら絶対買うからな!!」








 愛莉「また一緒に音楽を演奏しましょう!! もちろん、友加里の作曲した音楽でね!!」








 流美「楽しかったよ。 今度会った時は、みんなで盛大なパーティーを開きましょうね!!」








 涼子「元気でね♪ 私も友加里ちゃんから、いっぱい楽しい思い出をもらったよ(*^-^*)♪ いつかまた、みんなで会うことがあれば、うちの宿を解放してあげるからね!!」














 …隆太が声を掛けようとした瞬間、列車の発車を告げるメロディーとアナウンスが鳴り響いた。 隆太は、最後に話しかけるタイミングを失ってしまったかのように思えたが…











 (アナウンス)間もなく、3番線から、奥羽本線、寝台特急列車”あけぼの”上野ゆきが、発車いたします。 ドアが閉まります。ご注意ください…。











 …その音声に負けないくらいの大声で、友加里の体を抱きしめて、こう叫んだ…。











 「友加里ぃ!!!! ありがとう!!!! ずっとずっと、僕らは友達だよ!!!! 絶対だよ!!!!」

















 …そして隆太は、徐に封筒のようなものを取り出して、彼女のコートのポケットに押し込んだ。














 やがて、列車のドアを閉める笛の音が響き渡り、車両のドアが、文字通り友加里と隆太たちを寸断した。











 静かに雪の降る夜、友加里を乗せた列車は、汽笛を鳴らし、ゆっくりと暗闇の彼方へ向かって走り出した。 友加里も、客車の窓からみんなに手を振っている。 そして、瞳には涙を浮かべている…。














 「ピィーーーーーッ!!  ガタン…、、、  ゴトン…、、、  ゴトン…、、、」














 列車は、さよならの合図のように聞こえる汽笛と共に、どんどん速度を上げて走り去った。

















 「さよなら!!!!友加里!!!!元気でなぁ!!!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

















 隆太は、友加里の乗った車両をホームの隅っこまで走って追いかけて、ひたすら手を振った。








 やがて、列車のテールランプが闇の中へ消えてしまっても、隆太は暫く、その方向を見つめたまま動けなくなっていた…。











 そんな彼の肩をたたいたのが、涼子だった。 彼女は、涙でいっぱいの隆太の表情を見ながら、優しい微笑みを浮かべてこう話した。











 「友加里ちゃん、笑顔で手を振っていたね♪ よかった…。 みんなの、そして、隆太くんの想い、バッチリ届いたってことだよ♪ さ、隆太くん!! 後は友加里ちゃんの未来を信じて、私達も頑張っていきましょう!!」











 「…はい…。。。」

















 ホームに残った静けさが、妙に皆の心に淋しさを与えたが、一方で、大切な友の新たな旅立ちを祝うべきとも思い、彼らは帰路に就く間、友加里と過ごした思い出を語りながらも、きっと彼女なら大丈夫…という安堵感も抱き、家路を急いだのであった。











 列車の中の友加里は、寝台車の窓からぼんやりと、暗く、吹雪の外を眺めるばかりであった。








 しかし、ふとコートを見ると、ポケットに封筒が入っていることに気づき、彼女は慌ててそれを手に取った。 それは紛れもなく、隆太からの手紙だったのだが、中には二人がデートした時に撮ったツーショットの写真が1枚と、小さな便箋にたった一行の文章が…。














 「ずっと僕を忘れないでね。 大切な友達、友加里♪ きみにみらいあれ!!(*^▽^*)!!」














 いつかライブで聴いた歌の一節が織り込まれた、隆太直筆のメッセージだった。 それを見た友加里は、クスっと笑みを浮かべつつも、黙ってそれをポケットに仕舞い、寝台のカーテンを閉めて横になった…。














 心の中で、友加里は思っていた。

















 「ずっと友達に決まってるよ…。」

















 …友加里の乗った寝台列車は、春とは言えまだ寒い上野・東京へと到着した。 列車を降りた友加里は、名実ともに、新たな世界での第一歩を踏み出した。

















 それから何日か経ち、今度はあきらと愛莉も、県外の高校に入学することになったので、故郷を離れる時が来た。








 もちろん、隆太も見送りに来たが、友加里とは違い、さほど遠い場所へのお別れではないことと、メールなどで普通に話しはできるといった気楽さがあって、友加里との別れの時ほどの号泣などはなかったが、それでも、親しくしてきた友達と離れてしまう現実は、淋しく、切ないものでいっぱいだった。











 あきらは、秋田県に向かい特急列車で、愛莉は、岩手県に向かい新幹線で、それぞれの新しい場所へと旅立っていった。








 ちなみに、恋仲なあきらと愛莉は、若干の遠距離恋愛になることを承知で、週に1度、どちらかの住んでいる場所でデートをしようと約束していた。 また、隆太は知らなかったが、その時あきらは愛莉に「俺達の将来のことも、本気で考えて付き合ってくれ…」と、やや遠回しな結婚のお願いもしていたのであった。














 一人地元に残ることになった隆太は、最初のうちは虚ろな表情をしていたが、それを慰めてくれたのが、恋人でもあり、最も親しく思える存在の、涼子であった。











 「元気出して!! 隆太くんも新しい学校へ行ったら、新しいお友達ができるんだよ♪ どんどんお友達が増えて、いろんな価値観とか楽しみとかが増えていけば、みんなと再会した時にいっぱい楽しいお話ができるんだよ♪」











 ”トン!!”…と背中を叩かれた隆太は、何か暖かく、力強い勇気を胸に込められたような気がした。




















 4月になり、隆太は新品の制服を着て、高校生活をスタートさせた。








 もちろん、友加里も、あきらも、愛莉も、新しい日々の始まりを迎えた。








 それぞれの想いや夢、叶えたい事は多々あっても、ずっとお互いを見つめ合ってきた3年間の中学校生活。











 瞳に映った愛の色…。 それは、恋心は勿論のこと、お互いを心配すること、大切に想うこと、そして、幸せを願うこと…。 具体的な色の名前はないけれど、忘れてはいけない、忘れられない、素晴らしい宝物だ。

















 「Aiつ…、今頃どうしてるかなぁ…??」














 ふと、4人の誰もが同じことを考えてしまっているのだった。 心もソラも、必ず一つに繋がっている。 いつか再び、みんなで集う時には、どんな話で盛り上がろうか…? それを考えるのもまた、日々の楽しみでもあり、様々なチャレンジ意欲を掻き立てる一因となっていた。














 隆太も、涼子との少し内緒の恋を育ませながら、まだ不慣れな高校生活を張り切って過ごしていた。 時に遅刻しそうになって、パンをくわえて走るようなこともあったが、少しドジな性格もまた、隆太が皆に好かれる遠因だったので、新しい学校では、男子、女子を問わず、多くの友人が生まれた。














 高校での勉強や部活は、やはり厳しいものがあって、慣れない彼らは、それぞれに苦労していたが、中学校時代に学んだ、お互いを思いやる気持ちを発揮させていくと、次第に軌道に乗っていくのがわかった。














 離れていても、どんな苦労が訪れても、思う心はただ一つ…。























 「僕達の譲れない夢、絶対叶えて見せるぜっ!! さぁ!!新たな未来の始まりを!!!!」












 - おしまい -

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