Episode 0:瞳に映るAiつ
登場人物設定など(この物語はフィクションです。)
小野隆太 Age:12
中学1年生。大人しい性格だが、背が低く、身体が弱いことをコンプレックスにしているが、異性からはそんなところを萌えポイントのように思われている。幼少の頃から水泳に親しんできたため、中学校では水泳部所属。色恋沙汰にはあまり興味を持っていなかったが…。
浅倉友加里 Age:12
中学1年生。隆太とは幼少の頃、水泳を通じて知り合った。隆太は彼女にとって、水泳部的にはライバルだが、片思いの恋心を抱いている。ツンデレな性格もあるため、人前では男子に対して刺々しい態度を見せるが、隆太と二人きりの時は、別な人格が表れる。将来の夢は作曲家。
織畑愛莉 Age:12
隆太、友加里同様、水泳部所属の女子。中学入学を期に知り合ったが、彼女もまた隆太に淡い恋心を抱いている。基本的には明るい性格で、思っていることをストレートに口に出してしまう分、あらぬトラブルもよく起こる。
とあるアマチュアバンドのメンバーでもある…らしい。
柊あきら(ひいらぎ・あきら) Age:12
隆太の幼馴染。彼もまた背丈は隆太に似てやや低い。性格もそっくりな上、学校では男子が少ないので、貴重な同性の親友でもある。既に付き合っている彼女がいるというが、それについては誰にも口外しようとしない。しかし女子との付き合いはあまり上手いとは言えない。
小野流美 Age:18
隆太の姉。専門学校生。いわゆる「ギャル系」女子で、弟にはきつい。だが一方で、ブラコンな一面もあり、弟の女子との交流を監視しているような行動も見せる。私生活は「だらしない」の一言。
真野杏奈 Age:13
隆太たちの所属する水泳部での先輩。中学2年生。ラフな性格で、先輩後輩の区別を気にせず、屈託のない心の持ち主だが、失恋を経験しているため、彼女の前での恋バナはもはや禁句の領域である。
謎の女性 Age:??
…??
ここは、A県のとある田舎。
小中学校も1学年1クラス程度しか存在しないような、良く言うとひなびた村。良く言わないと寒村である。
そんな、この村にもようやく春が訪れ、カレンダーは4月のページを掲げるようになった。
”ダダダダダダッ・・・・・・!!”
「ややや、、、やばいぃぃ…!! 入学式だってのに遅刻とかどんだけだよぉ~!!」
真新しい制服を着て、まだ雪の残る道を駆け抜ける男の子がいる。彼の名は、小野隆太。今年から中学生だ。
「はぁっ!! はぁっ!! …ゆうべ、入学式のことで緊張して眠れなかったんだよなぁ…」
息切れしながらも、教室のドアをガラっと開けた。「お、、、おはよう…!!」
「りゅーたww おめぇ、入学初日から遅刻しかけるとかどんな笑わせ方だよww」
…やや不敵な笑みを浮かべながら声をかけて来たのは、柊あきら。彼の幼馴染だ。因みにだが、間違っても悪友とかではない。
「いや、ほら、今日のこと考えてたら眠れなかったんだよ… 新しい先生のこととか、部活のこととか。 し、しかもだ、、、僕が今日の入学式で、新入生代表であいさつすることになってるじゃん」
「そりゃそうだけど、それ以外今更何を心配するんだよww クラスメイトは小学校時代からほとんど一緒だし、何が怖いっていうんだよww」
「そ、それは…」
隆太が目線を遣った方向にいたのは、小学校時代からの交友関係がある女子、浅倉友加里だった。
「お、、、おはよう、、、友加里。」
彼女は怪訝そうな眼差しで見つめ返し…
「おはよ…。ってか、相変わらずドジだねーww 入学式の日に遅刻したら卒業まで笑いもんだよ? あはは、はんかくせぇ~ww(※津軽弁で「恥ずかしい」の意)」
「わかってるっつーの…!! で…、でも、、、うっ・・・!!」
隆太は一瞬、友加里を見て言葉を詰まらせた。それまでに見たことのない、友加里の制服姿。そして、春休みを隔てて再会して、どこか大人びた様子もまた、真新しい印象を受けたためだ。
「…なに見てんだよヘンタイww」
「…あ、ごめん、、、別にそんなことない…」
地味に気まずい状況に、思わぬ救いの手が差し伸べられた。「おっはー♪」
声の主は、織畑愛莉。新しく出会う相手だが、妙に社交的な挨拶をしてくれた。彼女とは小学校時代は、学区が違うので会うことはなかったが、中学では同じクラスに所属となった。話を交わしていると、どうやら愛莉は、中学で友達ができるかどうか、不安でならなかったそうだ。
そこで、第一印象で接しやすい相手を見つけて声をかけようと思っていたそうだが、その相手が隆太たちということになったようだ。
愛莉「ところでさ、中学っていったら部活じゃん。みんなは、何部に入るの?」
隆太「僕は、水泳部。それ以外能がないからなーw」
あきら「俺も、隆太に同じ。」
友加里「あたしもだよー♪ そうだ!愛莉も水泳部入ってみない!? きっと楽しいって!!」
「ええー、、、アタシ、水泳とか殆ど経験ないし、、、」
友加里は愛莉に躊躇う隙を与えないようにと、続けざまにこう言った。
「だって、いいカレシゲットする絶好の部活じゃんww」
(・□・)"" 友加里以外は、ぽかーんとした表情になる。何せ、そんな話には耐性のない人達なのだから。友加里だけ別格なのだ。
愛莉「いや、っつーか、まだメンバーも知らないのに彼氏も何も…」
…などと、照れくさそうにしつつも、その瞳はチラチラと、隆太とあきらの方を往復していた。
「あ、いいね♪ アタシも入るわ♪ 水泳部!!」
…だが、そのセリフの次の瞬間、友加里の表情がやや歪んだ。
「あ、愛莉? 言っておくけど、隆太だけは付き合う人決まってるから、忘れないでおいてな!」
(X□X)” 隆太もうすうす感じていたが、友加里は変な所で自分に積極的なのだ。ただ、そんなことを人前で言うのだけはやめてほしい…。ヘンな噂が立とうものなら、学校生活は地獄絵図になりかねないww
愛莉はあえて話をはぐらかし…
「あ、でも、、、隆太とかあきらとか、友加里とかに水泳教えてもらえれば、ワタシも県大会とか出られるかもね♪ ってか、男子の話し相手できるのっていいかも…」
ガタッ!!…
友加里が妙に不機嫌そうに、持っていたカバンを机に投げ出した。
友加里は心の中で後悔していたのだ。「まさか、愛莉が水泳部入りたいなんて言い出すとは思ってなかった…。カレシできるとか冗談のつもりだったのに…、、、ってか、あの目つき、マジで隆太のこと狙ってるよなー」
4者4様の期待と不安を抱きながら、入学式が始まって、全員が体育館へ集合した。
先生方や偉そうな人たちのスピーチが長いのはお約束だが、隆太だけは緊張で硬直した様子だった。何せ、新入生代表で、壇上でスピーチを披露しなければならなかったので。。。
「続きまして、新入生からの言葉。 1年、小野隆太」 「は、、、はぁいぃ!!!!」
自分でも失笑大確定の返事の仕方だったが、今はそれにツッコミを入れている心の余裕などない。
「えーー、、、僕達はこれから、、、中学校という新しい舞台で、勉強、運動にいそしんで、自分らしさと強い心を育んでハグしちゃって…あわわわ、、、んーっと、、、何事にも負けない心で、新年あけましておめでとうございます!!」
”ドッ!!!!!!” (体育館に響く笑い声)
…仕方ないよね。初めて壇上に上がった隆太の脳内は、アドレナリンMAX大フィーバーだったからね。
額に汗を浮かべながらも、スピーチは何とか終了。もうこれで校内の笑いもの決定ww
そう心に覚悟したが、式の後に待っていたのは意外な言葉だった。
あきら「りゅーたww ウケルーww ドンマイドンマイww」
「あ、あああ、、、もう人生8割終わったよーーー」
愛莉が駆け寄り、声をかけた。「隆太、かわいいとこあるね。アタシも実は、入学式って超緊張してたけど、おかげで気持ち楽になったわーww」
友加里もまた。「隆太すげぇよww やっぱりウチの彼氏にぴったりだよwww」
(はぁ??…僕っていつから、友加里の彼氏になったん…??)
愛莉の表情は曇った。しかし次の瞬間、戸惑う隆太を励まそうと、彼の手を握って離していた。無意識に…
「りゅ、、、隆太。。。あ、、、アタシだって、、、その…」
はっ!!…と気づいたが、もう遅かった。何を言いたかったのかは不明だが、明らかに友加里を抜きん出る行動をとってしまった。
赤面する隆太と愛莉。そして、それを見ていた友加里が目を三角にしている。休み時間が、彼らにとっての小さな修羅場と化していた。
あえて友加里は背中を向けて…「ま、ウチのカレシに手ぇ出すとか冗談だよなーww」
…そんな強がりの裏には、燃え盛る強い何かを感じている友加里だったが、一応ここは、出会ったばかりのクラスメイトということもあるので、あえて彼女的には「大人の応対」をしたつもりだったらしい。
入学1日目は、ホームルームなどが中心なので、特に授業はなく、午後には帰宅の時間となった。
初めての中学校生活、隆太にとってはガタガタ極まりない思い出になってしまったが、一方で、それまでに抱いたことのなかった女子への感情が、静かにこみ上げていることもわかっていた。
「友加里…、愛莉…、」
”好き”とか”嫌い”とかではない、自分でもどう扱っていいかわからない気持ちが心の中を錯綜し、またも眠れない夜を過ごすことになってしまった。
だが、彼にとっての「新しい世界」は、この程度のものでは当然ない。
1日1日が冒険のような日々になるだろう。
その夜、彼のケータイに一通のメールが届いた。
送信相手は、誰であろう友加里。
「From:友加里 隆太、頼みある。 明日の午後、市内のファミレス行くんだけど、そこで話したいことある。 お願い、来て。 あと、このこと絶対誰にも言うなよ。」 -END-」
…彼にはある程度の察しはついていたが、友達付き合いの長い友加里の頼みも断れまいと、翌日、そそくさと電車にのって、A市に向かった。
ファミレスの片隅には、スマホをいじる友加里の姿があった。隆太はいつも通りの表情で声をかけ、彼女の向かいの席に座った。
そして友加里は、ドリンクバーのメロンソーダの入ったコップを彼に渡すと、胸に込めた思いのたけを、訥々と語り始めた…
「隆太、あんたさぁ…」 …
-つづく-