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君を忘れない理由  作者: 神里真弥
9/9

神谷時の裏

俺は咲希と登校していた日常に佐々木さんが加わり、学校までの道を歩いていた。


「眠れなかった」


「どうしてー?」


俺が呟くと、咲希が食い気味に聞いてくる。

眠れなかった理由など分かっているだろうに。


「あなた達のせいなんですが」


「え?私もですか?」


佐々木さんは自分も関わっていたとは考えなかったらしく、驚愕の表情を浮かべた。

何故俺が眠れなかったのか。

その理由はまず佐々木さんとの会話の中に気になる点が多すぎた事だ。

疑問を尋ねようとすると、咲希が風呂から上がってきたことで、話は中断されてしまい気になって眠れなかった。

そして、もう1つの理由として、咲希がいつの間にか俺のベッドに潜り込んで来ていたので、俺はベッドで寝ることは出来ず、1人寂しく体操座りをして1夜を過ごした。

以上の理由から俺は今寝不足である。

最近になって寝不足になる事が多い気がする。


「咲希はもう手遅れだ。だから俺が眠れなかった理由は佐々木さんにあると言っても過言ではない」


理不尽だと言われんばかりの言葉を俺は佐々木さんに投げかけた。

だが、その言葉に反応したのは佐々木さんではなく、咲希だった。


「私が手遅れって言うのはどうかと思うなー?時君昨日から私に対しての扱いが酷すぎるよー」


咲希の言い分も分からないではない。

確かに俺は咲希に対して無礼な態度を取ってしまっているだろう。

でもそれは仕方の無いことなのだ。

今までは咲希1人だったから面倒を見ることが可能だったが、大人しそうな性格の割にいきなり人の家に泊まりたいだとか、俺がタイムリープをしたことを知っていたりだとか。

とにかく不思議で正体が掴めない佐々木さんが乱入してきたのだ。


「ごめんな咲希。でも佐々木さんもさすがに今日は家に帰るだろうから俺が咲希に冷たいのは今日までだな。てか咲希も自分の家で寝ろよ」


咲希に申し訳ないと思いながらも、俺は2人の居候を同時に追い出す台詞を並べてみた。


「あっ今日も泊まりますよ?」


「私も……」


まさかの台詞が2人から返ってきた。

しかし、咲希の表情はいつもより暗くなっている気が。


「いつか誘拐犯にされて捕まりそうだな俺。咲希具合でも悪いのか?」


今の状況に呆れながらも、咲希の様子が気になり、尋ねる。


「ううん。何でもないんだ。ごめんね。そりゃあさすがにずっといられると迷惑だよね……」


いつも明るい咲希から少しずつ笑顔が薄れていく。

よく見ると、目には涙を浮かべていた。


「そんなつもりで言ったんじゃなかったんだ。分かった。ずっと泊まってればいいから」


咲希の両親は仕事でなかなか家には帰ってこないと咲希から聞いている。

両親に咲希に寂しい思いをさせていると分からせれば、納得してもらえるだろう。

俺の親もいつ帰ってくるんだろうか。

帰った時、女の子2人を家に連れ込んでいたなんてバレれば、考えるだけで、胃が痛い。


「う、うん。ありがとう」


どうにか落ち着いた様で、ほんの少しだが、咲希の表情に明るさが戻った気がする。


「咲希はいいとして、なんで佐々木さんまで泊まるんだよ」


佐々木さんが2日も泊まるという点には納得出来ないところがある。

そもそも佐々木さんの両親は何をしているんだ?


「いじめを止める事が出来たら、教えてあげます」


「なんで、そんなに上からなんだよ。仕方ないな。じゃあ今日止めてやるよ」


いじめをされている人間が何故こうも急に元気になったのか気になったが仕方が無い。

俺に何かが出来るとは思わないが、全力をだそう。


「いじめをしている奴の名前とか分かったりするのか?」


いじめを止めると言っても簡単ではない。

やはり、必要なのは情報収集だ。


「私にいじめをしているのは霧原春乃(きりはらはるの)前島穂波(まえじまほなみ)桜崎光(さくらざきひかり)の3人です」


あれ?1人聞いたことがある名前が混じってるような。

霧原春乃は俺が未来で傘を借りた人物だ。

髪を金に染めてはいたが、悪い人には見えなかったけどな。


「霧原春乃は俺に傘を貸してくれたことがある人物と名前が一緒なんだが」


「そうなんですか?それはあなたが男だからでは?」


男とか女とか関係あるのだろうか?


「時君女ってのはとっても怖いんだよ」


調子が戻ったらしい咲希が俺の肩に手を乗せてうんうんと頷いている。

すると、いつの間にか学校に着いていたらしく俺達は一旦別れることとなった。


「はー。暇だし散歩でもするか」


昼休みになり、俺は校庭を周り頭を冷やすことに決めた。

特に目的地もなく、歩き回っていると何やら話し声が聞こえた。

隠れる理由も無いのに、咄嗟に近くの壁に隠れてしまい、そのままの流れで声のする方の様子を窺う。


「せ、先輩。好きです。私と付き合ってください」


幸運と言うべきなのか、不運と言うべきなのか、俺は告白する場面を目撃してしまったようだ。

見た感じ、告白しているのは大人しそうな女の子で相手はイケメンの先輩と言ったところか。

あれだけイケメンならさぞかしモテるんだろう。


「悪い。俺は誰とも付き合う気はないんだ」


分からないな。

相手の女の子は地味だが、可愛い方だ。性格も悪くは無さそうだが、いや性格の判断は見ただけで決めるものではないな。

それにしてもだ。

何故告白を断るのだろうか。

人にはそれぞれ理由がある。

それを気にしても仕方が無いか。

しばらくすると、イケメンの男は去っていき、振られた女の子だけが立ち尽くしたまま残った。


「こういうのにあまり関わらない方がいいよな」


俺もその場から立ち去ろうとすると


「誰かいるんですか?」


俺が隠れていたのが、バレてしまったらしい。

仕方が無いので女の子の前に姿を現す。


「ごめん。見るつもりは無かったんだけど」


「今の見てたんですか!?」


女の子は涙目になり、嘘であってくれと言わんばかりの表情で俺を見てくる。

見られたと理解していると思ったから言ったのに、見られていたとまでは思っていなかったか。


「いや見てない」


「さっき見たって言ったじゃないですか!もうだめ。お嫁にいけない」


今誤魔化しても手遅れか。


「落ち着いてくれ」


「落ち着けませんよ!」


「分かった!」


「私にはさっぱり分かりません!」


しゃがみこみ、丸まっている女の子を前に俺はそのまま話を進める。


「俺があのイケメンの先輩と君が付き合えるように協力しよう。だから今の話は無かったことに……」


何を言っているんだろうか。

しかし、責任は取らなければならないだろう。


「本当ですか!」


最後まで言い終わる前に、女の子は目をキラキラ輝かせ、俺の手を握りしめてきた。

柔らかくて、優しい温もり、それになんだがいい匂いがって何を考えているんだ俺は。


「ああ。本当だ。だから君の名前を教えてくれないか?」


「桜崎光です!」


桜崎光か。

どこかで聞いたことのある名前のような気がするな。


「悪いけどもう1回言ってもらえるか?」


「桜崎光ですけど?」


桜崎光。

もしかしてこの名前佐々木さんの話に出てきた。


「もしかして君か」


「何がですか?」


何のことだが分からないという表情で首を傾げる桜崎光。

俺は自分の感情をなるべく抑え込み、最低な男になる決心をした。


「何でもない」


「何なんですか?私あなたみたいな人嫌いです」


俺が説明も無しに一方通行するので怒ってしまったようだ。

これから、もっと怒られ、 嫌われるような事をすると思うと、心が苦しいな。


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