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君を忘れない理由  作者: 神里真弥
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プロローグ

突然だが、過去に戻りたいと思ったことはないだろうか?

人間の心理とは不思議なもので、子供の頃は大人になりたいと思い、いざ大人になってみると子供に戻りたいと思う人がたくさんいる。


きっとこれは、人間が自分には無いものを求める習性があるからだろう。

だが、現実は甘くない。

大人になりたいと思い続ければ、いつかは大人になることも出来るだろう。子供に戻りたいと思った場合はどうだろうか?いくら待ち続けても今の現代社会において、過去に戻るということは不可能というべきだろう。




しかし、もしも過去に戻るという奇跡が起きた時この世界はどのように変化するのだろうか?


「起きてよー」


聞き覚えのある声に、体を揺らされている感覚を味わい俺は目を覚ました。


「ん?朝か?」


目を擦りながら、そう言うと眼前に座る水野咲希(みずのさき)が頬を膨らませてこう言った。


「もう夕方だよ……ずっと起こしてたのに時君起きてくれないんだもん」


辺りを見渡すと、そこは俺と咲希以外は誰もいない教室だった。空は朱色に染まっており、時計を見ると、17時を過ぎていた。どうやら眠っている間に放課後になってしまったようだ。


「悪い」


俺は短く謝罪する。


「まあ幼馴染みだから時君に振り回されるのは慣れてるよ」


咲希の発言の通り、俺と咲希は幼馴染みである。

周囲からはカップルと勘違いされるほど、仲が良く、登下校も何故か一緒にというのが当たり前になってきている。


「いつも感謝してる」


俺は棒読みでそう答えると、玄関まで向かうべく歩き出す。咲希もそれについてくる。


「ねぇ、今日夕食一緒に食べたいんだけどいいかな?」


俺の家庭は両親が共働きで、家に帰ってくるのは夜遅くだ。

今は慣れてしまったが、幼い頃は寂しくて泣いてしまうことが多かった。

そんな俺を心配してくれた咲希は料理を覚え時々俺の家まで来て夕食を一緒に食べるようになった。


「咲希の料理は美味しいからな。もちろんだ」


俺がそう言うと、咲希は少し頬を赤らめて


「褒められると照れちゃうね。えへへ」


笑顔で返してきた。この後も、俺と咲希が何気ない会話をしていると、校庭の草むらで何かをしている少女を見つけた。


「何してるのかな?」


咲希が気になる様子で、俺に尋ねてくる。

当然俺に聞かれても、分かるわけがない。


「俺が様子を見てくる。咲希は先に帰って夕食の準備をしててくれないか?」


「う、うん。時君が喜んでくれるように私頑張るね!」


咲希が張り切ったように言い、俺は笑顔で返す。

1人で帰っていく咲希を目で見送った後、俺は草むらで何かをしている少女に近づいていく。


「何してるんだ?」


俺が声を掛けると、少女は振り向いた。

第一印象としては、肩まで伸びる黒髪と吸い込まれてしまいそうな綺麗な碧眼が特徴的だった。しかし、何かに怯えているようにも見える。


「……ご、ごめんなさい」


突然謝られ、俺は困惑する。


「いや、謝る必要なんてないぞ。君が何してるのか気になっただけというかなんというか……」


今の慌てている姿を自分で見たら、キモイという感想が1番に出てきそうだ。

少女はしばらく俺を見たあと、くすくすと笑いだした。


「ごめんなさい。あなた優しいんですね。他の人とはどこか違う気がします」



また謝られてしまった。

しかし、優しいという言葉は今の俺に対して正しいのだろうか。ただ慌てていただけのように感じるが。

俺が返すべき言葉を探していると、少女は続けて話しだした。


「私は、捜し物をしていたんです。星型のペンダントなんですが……心当たりはありませんか?」


捜し物をしていたのか。よく見れば、少女の細くて小さい手は少し汚れていた。


「星型のペンダントか。心当たりないな」


「そうですか……」


少女は餌を貰えなかった犬のように、しゅんとなり再び捜し物作業に戻った。

その様子を見て、俺も捜し物作業を始める。

すると、少女が驚いた様子で、こちらを見てきた。


「何してるんですか!?」


少女が突然叫ぶ。


「何って捜し物手伝ってるんだよ。どうしたんだよ?急に叫び出して」


「どうしたんだよはこっちの台詞です……捜し物を手伝ってくれてるのは分かりました……私の手伝いをするような事はやめてください……私には関わらない方がいいです……」


少女の伝えたい事が俺には理解出来なかった。


「君がどうしてそんな事を言うのかは知らないけど、1人で捜すより、2人で捜した方が早く見つかると思うぞ。それに……捜し物してますって言われた後に、はい、そうですかとは帰れないだろ」


俺は草むらを手当り次第にかぎわけながら言った。

少女はそんな俺を呆然と眺めていた。


「君、名前は?俺は神谷時(かみやとき)だ」


少女にこれ以上言葉を続ける気配が無かったので、こちらから少女に名前を尋ねる。


「……佐々木茜(ささきあかね)です」


佐々木さんは小さく呟くと、捜し物作業に戻った。



「あった!これだろ?佐々木さん!」


数分が経過してから俺は星型のペンダントを見つけた。興奮しながら、俺は佐々木さんの物かどうか確かめる。


「それです!それです!良かった……見つかって……」


佐々木さんはとても嬉しそうに頷く。

よく見れば、少し瞳に、涙が浮かんでいる。


「捜し物も見つかったし、俺は人待たせてるから先に帰る」


ふと、咲希を待たせていることを思いだし、慌ててそう言った。


「あっはい……ありがとうございました」


佐々木さんからの返答が来たあと

俺は佐々木さんに手を振り、家まで走り出した。


「久しぶりに笑えた気がします……神様ありがとうございます……最後の日が楽しい日になって良かったです……」


そう呟いた佐々木さんの声は当然俺には聞こえるはずもなかった。

人が死ぬ描写があります。

残酷な死に方ではありませんが、苦手な方は申し訳ございません。

しかし、皆様が楽しめるような作品を作っていきたいと思いますのでよろしくお願いします


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