君の掃除機
あなたがひどいことを言った。
私に向けて、遠慮なしに。
よし! 私はちゃんと受け止めるよ!
君は意味もなく、人を傷つけないって知ってるから。
君だけ傷ついて、私は無傷なんてフェアじゃないでしょ?
良いことも、悪いことも。なるべく、一緒に。
言うだけ言って、スッキリしたのかな?
君はいつも通り、申し訳なさそうな顔をして。
私をギュッと、抱き締めてくれる。
それだけで、私は幸せなんだよ。何度も耳元でごめんと言われても、逆に困るんです。
君のギュッ、はですね。どうやら私にとって必要不可欠なものになってるようなので。
・・・強がることは出来てもさ。本当に強い人は、きっと少ないから。でもさ、弱くてもいいよね?
私は弱いおかげで、君のそばがこんなにも愛おしいと思えてるから。
私は、君の掃除機だ。嫌なこと、なんでも吸い込んであげる。だから代わりに、大事にしてください。
君が大事にしてくれるなら。私はいつまでも、君が綺麗なままでいれるようにしてあげる。
◆
『今日、大切な話がある』
一瞬、ドキッとしたんだ。悪い意味で。
『悪いことじゃないから! とっても大切な話だから!』
別の意味で、ドキッとした。良い意味で。
・・・・ 今日は、奮発してみよっかなって。
きっと、そういう話だよね? だから、美味しい料理をふるまおうかなって。
お祝いってことで・・・ いいんだよね? 顔がにやつくのは、仕方ないよ。
・・・子供がね。引かれそうだったの。
ごめんね、せっかく美味しい料理作ろうとしたんだけど。ぐちゃぐちゃになったかなぁ?
でもね、その子は大丈夫だと思うから安心して?
君みたいに、ギュッ!ってしてあげたから。きっと、大丈夫だよね。
ごめんね? ・・・声が、出ないんだよね。
いっぱい、いっぱい。話したいのに・・・
あ・・・ 泣かないで。大丈夫、大丈夫だよ。
ちょっとだけ、ちょっとだけ休んだら。
いつもみたいに。君の嫌なこと、全部受け止めるから。
だから、ね?
いつもみたいに、優しく抱き締めてね。