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幼馴染みとゲーム大会




 国内のゲーム大会は法律の問題で賞金を出すのが難しい。優勝商品はTシャツやクリアファイルなどのグッズ、もしくはコントローラーやゲーム機だ。

 一方、海外の格ゲー大会では賞金が何百万も出たりする。RTSだと億単位の賞金がもらえるほどだ。そのぶん海外にはレベルの高いプレイヤーが山ほどいる。

 ゲームの大会は毎月どころか毎週、世界中のどこかで行われているので、プロゲーマーはそれに出場して賞金を稼ぐ。

 本日、都心にそびえたつゲーセンで催される大会は優勝賞金が出ない。プレイヤーは名誉を求めたり、腕試しだったりとさまざまな理由で出場している。

 エントリーはネットで簡単に済ませることができた。入場および観覧は無料だ。

 都心だけあって、フロアの広さは地元のゲーセンの何倍もある。ネオンなんかの装飾も色とりどりできらびやかだ。

 場内は熱気につつまれている。みんなの格ゲーに対する想いが、会場の温度を上昇させていた。そしてむさい。男だらけだ。女性もちらほら見かけるが、ゲーム大会だけあって男性客が過半数をしめている。人いきれがむんむんして、舌先に酸っぱさを感じる。

 都心のゲーセンは人が多く集まるから好きになれない。あと大規模な大会とかロケテストも苦手だ。たくさん人のいる場所に来てつくづく思うのは、試合はネット観戦にかぎるということだ。特に俺みたいな人嫌いはな。


「……下野」


 驚きのまじった声がする。

 後ろに目を向けると、イナズマデザインのロゴが入ったTシャツを着た凛子がいた。伊達眼鏡も装着済みだ。

 その隣には音葉さんもいて、気さくな笑みを浮かべて手を振ってくる。

 凛子は伊達眼鏡のフレームを指先で押しあげて位置を調整すると、まじまじと俺を見てきた。


「大会、出るんだ……」

「まぁ、ちょっとした腕試しにな」


 べ、べつに凛子にお願いされたから出るわけじゃないんだからね! とツンデレふうに返そうと思ったが、引かれそうなのでやめておいた。

 そっか、と凛子はやわらかな笑みをたたえる。

 その笑顔がまぶしくて、つい目をそらしてしまう。

 俺と凛子が戦うことになったとしても、結果は目に見えている。あらかじめ勝敗が決まった試合なのに、凛子はなぜそんなに嬉しそうなのか? 俺との戦いになにを求めているのか?

 それとも……俺と戦うこと自体に意義を求めているのか。勝敗とかは二の次で、子供の頃のようにまたゲームで対戦することに価値を見出しているのか。

 凛子と戦えば、その答えが得られるかもしれない。


「えっと、おたがい、がんばろうね」

「ん……まぁな」


 なにがまぁななのかよくわからないが、できるだけのことはやるつもりだ。

 これって俺からも何か言ったほうがいいのかな? どうもそれっぽい雰囲気だ。どうしよう……。今日の調子はどうだ、とかそういうことでいいか。いいよな。よし、それでいこう。

 FPSで狙いを定めるスナイパーよろしく凛子に視線を合わせる。なんか……緊張してきた。わかっていたことだけど、こうして見ると凛子はかわいい。緊張しないほうがどうかしている。

 それでもファイトだ、俺。腹を固めて声をかける。


「ウルフスピアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!」


 かけようとしたが……どこかのバカ女が雄叫びをあげて背後から凛子にタックルをかませてきた。

 ひょいっと、凛子は横にずれてかわす。それによって突っ込んできたバカ女は凛子と向かい合っていた俺に激突する。


「ぐほっ!」


 またかよ。お腹に衝撃が走ると、後ろに弾き飛ばされて尻もちをつく。腹とケツが痛い。


「クズミ……」


 凛子は低い声でバカ女の愛称を口にした。


「なによけてんだゴラッ! わたしがウルフスピアで突撃したんだから、くらえよ! ほんと空気の読めない女だな、リコリンはよぉ~!」


 現れるなり、さっそく凛子に突っかかる。その前におまえ、俺に謝れよ。クズミだから謝らないって知ってるけど、謝れよ。

 よっこいせと起きあがる。久美に目をやると、俺は眉間をひそめずにはいられなかった。


「ん? なんだヒラオもいたのかよ。ぜんぜん気づかなかったぜ。おまえはわたしの子分のくせに影薄いからな~」


 なんでタックルをかませた相手に気づかないんだよ。頭おかしいだろ。あと俺はヒラオじゃないし、子分でもない。


「おまえ、そのTシャツ……」

「これか? これはわたしが契約を結んでいる海外のゲーミングデバイスメーカーのロゴ入りTシャツだ。わかるか? ゲーミングデバイスメーカーな」


 黒無地のシャツにドクロのロゴが描かれている。やっぱそれ、スポンサーのロゴだったのか。なんちゅう悪趣味なデザインだ。悪趣味なぶん、クズミには違和感なくマッチしている。


「ひさしぶりね、久美ちゃん」

「うおっ! ……ってなんだ、凛子の姉貴じゃねぇか。超必殺技を使って凛子が分身したのかと思ったぜ。びっくりさせんなよ」


 いやいや、二人に増えるとかありえんだろ。確かに凛子と音葉さんは顔立ちがそっくりだけど、普通に姉妹なだけだ。こいつ、どんだけ格ゲー脳なんだ。


「相変わらずおもしろい子ね」

「おもしろいっていうより、うざい」

「はああああああっ! わたしのどこがうざいってんだよ! どこがうざいのか説明してみろよ! ほらほらっ、論理的に説明してみろよ!」

「ぜんぶ」

「ぜ、ぜんぶ! ぜんぶだと……ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!」


 存在を全否定されて、久美は歯噛みする。リコリン、手厳しいね。確かに久美は存在そのものがうざいけど。


「さっき会場をひと通り見てまわってきたけど、凛子と久美ちゃん以外は女性のプロゲーマーはいないみたいね」


 音葉さんはちょっぴり残念そうに言って、鼻から息をもらした。

 もともと女性プロゲーマーは稀少だ。大会とかでも男性のプロほど見かけることはない。

 そんな女性プロゲーマーに勇気づけられる女ゲーマーはたくさんいるらしい。凛子のファンの女子とかも、その例にもれない。久美には……女性ファンはいるのかな? いなさそうだ。クズミだし。


「へんっ、どんな奴が出場していようと関係ねぇよ。どうせ優勝するのはわたしだって決まってんだからな。ザコばっかだし」


 久美は余裕たっぷりの不遜な笑みをつくる。とことん発言がクズい。でも、こんなクズだけど格ゲーの腕は一流だ。神様は才能を与える人間を誤ったな。


「やい、おっぱい女!」


 ビシッと久美は凛子を指差した。ゆたかな胸のあたりを。


「それって……もしかしてわたしのこと?」

「たりめぇだろうが! わたしと一つしか違わねぇのに無駄に乳ばかり育ちやがって、このおっぱい女が!」

「その呼び方、不愉快だからやめて」


 眉尻をつりあげて凛子は頬を赤くした。ちらりと眼鏡越しにこちらを一瞥してくる。いや、そんな見られても反応なんてできやせんぜ。


「や~い! おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱいぱいぱぁ~い!」


 久美はリズムよく「おっぱい」という単語を連呼しながら、右足と左足を交互にあげてステップを踏む。幼稚園児かよ……。

 カッと眼光を鋭くすると、凛子は前方ダッシュで一気に距離をつめる。驚愕に顔をこわばらせた久美のほっぺたを両手でつかみ、ぎゅ~っと引きのばした。んぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ、と久美は涙目でうなる。

 凛子が手をはなすと、久美は赤く腫れた頬をさすった。


「っ痛てぇな! なにすんだ、このクソチチ女!」

「そっちが変な歌を歌うからでしょ、ナイチチ」

「な、ナイチチじゃねぇ! わたしの胸はまだ可能性を秘めてるだけだ! 秘めすぎてて小さく見えてるだけだ!」


 可能性なんてこれっぽっちも感じられないほど真っ平らだが……それは黙っていよう。

 凛子と久美は試合前だというのに、睨み合いながらバチバチ火花を散らす。このまま放置したら取っ組み合いの喧嘩になりそうだ。


「あの、止めなくていいんですか?」


 それとなく静観している音葉さんに仲裁を促してみる。


「いいのいいの。いつものことだから」


 いつものことなのか。そっか。いつもこんな調子で凛子は久美にからまれているのか。厄介な女に目をつけられたな。同情する。


「とにかく優勝するのはわたしだ! これはもう決定事項なんだよ! だからわたしにボコボコにやられるために、おまえは決勝まであがってこい! いいな、我が宿命のライバル!」

「負けないし、ライバルでもないから」

「負けまぁ~す。リコリンはわたしに負けまぁ~す。百パー負けまぁ~す」


 ばかにするように下唇を突き出し、両目を見開いた顔で挑発してくる。ひっぱたくのを我慢している凛子はえらいと思う。

 はんっ、と鼻を鳴らすと久美は俺を流し見てきた。


「ヒラオ、もしかしておまえもエントリーしてんのか?」

「……一応は。あとヒラオじゃない」

「ヒラオでいいんだよ、おまえなんか。ま、眼中にないけどせいぜいがんばれよ。鼻クソくらいには思っておいてやるから」


 ぽんぽんと馴れ馴れしく肩を叩いてくる。俺のなかのイライラポイントが蓄積されていく。ちなみにポイントがMAXになっても何も起きない。ただ寝る前に何度もクズミのことを思い返しては呪詛を唱えるだけだ。


「んじゃあ決勝で待ってるからな! 絶対に来いよ!」


 ビシッとまた凛子を指差すと、久美は駆け足で去っていった。

 嵐のように騒々しい女だった。いなくなった瞬間に内側から疲労感がわいてくる。凛子も同じらしく、小さくかぶりを振っていた。


「さて、そろそろ掲示板にトーナメント表が貼られるわね。見にいきましょうか」


 音葉さんが人差し指を立てて提案すると、俺達は会場の奥にある掲示板に向かう。

 トーナメント表の前には、人だかりができていた。プレイヤー達は自分が誰と当たるのかをチェックしてざわついている。

 けっこう人が多いので確認しづらい。かといって人だかりのなかに突入するのはごめんだ。なるべく他人とは密着したくない。ここは他のプレイヤーが散るまで待とう。

 ふぅ、というため息が聞こえる。隣を見ると凛子は脈でも測るように左手で右の手首をつかんでうつむいていた。


「なに?」


 俺の視線に気づいた凛子は、顔をあげると不思議そうに見返してくる。


「いや、おまえでも緊張とかするんだなって」

「……するよ、緊張。試合前はいつもしてる。慣れることはない」


 俺もそれなりに緊張しているが、凛子の感じているプレッシャーはそれとは比べ物にならないほど大きなものだ。凛子は腕試しに来ている一般プレイヤーとは違う。プロだ。プロという肩書きを背負って出場している。そこには必然、他人からの注目と期待が集まる。

 凛子が感じるプレッシャーの重みは、容易に想像できるものじゃない。

 深呼吸をして気持ちを落ち着ける凛子に、音葉さんは何もしない。声をかけたり、背中をさすったりせず、何もしないで見守ることが一番効果的だとわかっているようだ。

 人だかりが減っていくと、俺らもトーナメント表を確認した。


「凛子と久美ちゃんはシードみたいね」


 キャリアのある選手は大会によってはシードに配置されたりする。二人ともプロゲーマーだから妥当な組み合わせだ。

 トーナメント表を見るに、凛子と久美がぶつかるとすれば決勝戦しかない。


「で、平太くんは……」


 幸か不幸か、俺の名前は凛子のすぐ隣にあった。つまり順調に勝ち進めば、俺は二回戦で凛子と当たる。

 トーナメント表を眺めながら、凛子はくすりと頬をほころばせる。


「久しぶりだね。下野とゲームで対戦するの」

「……かもな」


 かもなというか、めちゃくちゃ久しぶりだ。たぶん五年ぶりくらいだ。けどまだ対戦できると決まったわけじゃない。俺が一回戦で敗退したら、凛子との対戦は反故になる。仮に対戦できたとしても、俺の大会は二回戦で終わる。この時点でとっくに結末は見えていた。


「凛子、自分の試合が始まるまではどうするつもり?」

「とりあえず、他の試合とか観戦したいかも」


 そう、と音葉さんはうなづくと俺にも目を向けてくる。


「平太くんはどうする?」

「俺も、適当にぶらついていますよ」


 だからどうぞ、お二人だけで行動してください。というニュアンスを言葉にこめる。

 俺はなるべく一人でいたい。凛子とは、あまり一緒にいたくなかった。


「わかった。じゃあ凛子、行くわよ」

「うん……」


 音葉さんはこちらの意向をくみとってくれたようだ。凛子は不承不承といった感じでうなづくと、音葉さんと二人で行ってしまう。

 あちこちで電子音が鳴り響くなか、二人の後ろ姿が小さくなっていくのを、俺はぼんやりと眺めていた。



 

 ――六番台でシモノ選手とタムタム選手の試合を行います。


 というアナウンスが場内に流れた。ちなみに俺は下野という名字をそのままプレイヤーネームにした。いや、だってプレイヤーネームってその人のセンスが問われるじゃん。自信満々にプレイヤーネームをつけて笑われたりしたら自殺もんよ。下手な勇気は出さずに、ここは無難に名字でいって正解だろ。

 四列にわけられた対戦台まで行くと、筐体の上に貼られた名簿を確認しながら歩く。六の番号と自分の名前を発見したら、指定された対戦台についた。

 対戦台のそばには、運営スタッフの男性が佇んでいる。勝敗をチェックしたり、不正がないか目を光らせているようだ。

 背中に感じる視線は皆無だ。観戦しにくる客はいない。当たり前か、みんな俺の試合なんかに興味はない。それはありがたいことだ。あんまり人に見られたら緊張感がいや増しになる。

 反対側の台に対戦相手のプレイヤーが座った。筐体の横からちらっと顔が見えたが、三十代くらいのおじさんだ。そういえばガキの頃に初めてゲーセンで負けた相手もあのくらいのおじさんだったな。いやだなぁ、おじさん。思い出したくもないことを思い出してしまう。


「それではこれより六番台の試合を開始します」


 運営スタッフの男性が合図を口にする。

 ドクンと心臓がはねた。両手が汗ばむ。よく考えたら大会とかに出場するのはこれが初めてだ。胸のなかには不安しかない。

 今日まで練習を積んできたけど、どうだろう? 通じるだろうか? わからない。本番が始まるまではわからない。その本番は、もうすぐそこまで迫っている。

 汗で湿った左手でレバーをつつみ、右手の指をボタンにそえる。

 俺の座っている台は2P側だ。キャラクターセレクトでは、迷うことなく持ちキャラのヴリュンヒルデを選んだ。

 対戦相手のタムタムは1P側。選んだキャラクターは雷神トールだ。筋骨隆々の赤髭を生やしたオヤジで、ミニョルという柄の短いハンマーを右手に握っている。リーチは普通で機動力もそこまでないが、パワーと爆発力はある。そしてコマンド入力技がレバーを一定方向に溜めてからボタンを押さないと発動しない、いわゆる溜めキャラだ。

 両者ともキャラクターセレクトを終えると、画面が灼熱の国ムスペルヘイムの対戦ステージに切り替わる。

 日本の大会なので、試合形式は二本先取の三ラウンド制だ。先に二勝したほうが勝者となる。

 いよいよだ。いよいよ始まる。もう後戻りはできない。待ったなしだ。己の実力をぶつけて、敵を打ち負かさなきゃいけない。

 さぁ、いくぞ。


 ROUND1 FIGHT


 画面に戦闘開始と表示される。トールは初っ端からミニョルを振りかぶって立ち強攻撃を仕掛けてきた。

 反射的にレバーを倒してガードする。

 トールは立ち強に次いで、ミニョルに稲妻をまとわせて殴りかかってくる突撃技のサンダーアタックをくらわせてくる。

 ヴリュンヒルデのガードを固めたまま、サンダーアタックも防ぐ。こちらのライフゲージが微減して、ガードゲージも少しだけ削られた。

 すかさず反撃。立ち中攻撃を叩きこみ、そこからしゃがみ中、立ち強、さらに突撃技のフレイムソードで突っ込むと、二回の追加攻撃であるコマンドを入力する。

 全ての攻撃をガードされてしまったが、ライフゲージを微減させることはできた。ガードゲージにいたっては、トールのほうが減っている。

 だがトールは密着したヴリュンヒルデにぶっとい左腕をのばしてつかむと、地面に叩きつけてきた。雷撃の弾けるエフェクトがかかる。

 コマンド入力技のサンダープレスだ。通常の投げとは異なるので、投げ抜けができない。

 焦るな。まだ試合は始まったばかりだ。焦っちゃいけない。けど先にダメージをもらったことに心は急いていた。

 残りライフが九〇%になってダウンしたヴリュンヒルデが起きあがる。目の前にいるトールを警戒して立ちガードで待ち受けるが、トールの次の打撃はしゃがみ中攻撃だった。そこからしゃがみ強、雷をまとったミニョルで殴りあげる対空技、サンダーアッパーをぶちかまし、ヴリュンヒルデをふっとばす。

 読み違えたことで残りライフが七〇%まで削られる。

 ふっとんだヴリュンヒルデに空中受け身をとらせて地面に着地。バックステップで距離をとると、遠距離技であるフレイムウェイブを放つ。

 飛んできた炎の斬撃をトールはガードすると、ミニョルを振りかぶり、敵の頭上に雷を落とす遠距離技、サンダーブレイクを使ってきた。

 レバーを倒し、画面の上方から降ってくる落雷をガードする。

 次いでトールはダッシュで間合いをつめてくる。

 立ち攻撃か、しゃがみ攻撃か、投げか、それともコマンド入力技か、わからない。読めない。


「っ!」


 噛みしめた前歯の隙間から地声がもれる。

 咄嗟にヴリュンヒルデをジャンプさせて空中強攻撃を行い、突っ込んできたトールにヒットさせる。そこから着地すると立ち強、フレイムソードを使い、二回の追加攻撃を入力するが、出ない。追加攻撃が一回しか出ない。二撃目は出なかった。

 ミスった。コマンド入力をミスった。コンボがつながりそうだったのに、焦りでレバーとボタン操作を誤った。

 あんなに練習したのに、練習どおりにいかない。本番ではぜんぜん思うようにならない。凛子のように上手くできない。凛子だったらこんなミスはしない。

 レバーを握る左手が汗ですべる。緊張感は抜けるどころか高まっていく。

 残りライフが八〇%ほどになったトールが、立ち中で反撃してくる。ヴリュンヒルデのガードが遅れて、ダメージをもらう。そこからトールはしゃがみ中、しゃがみ強、立ち強、最後にミニョルで殴りまくってくる超必殺技、ミニョルインパクトをくらわせてきた。

 ヴリュンヒルデがふっとび、ダウンする。残りライフが一気に三〇%まで減った。

 ……落ち着け。勝てないことはない。どのくらい差があるのかわからないほどの圧倒的な差はこの相手からは感じられない。凛子ほどのプレイヤーじゃない。俺との実力は拮抗しているはずだ……たぶん。事実はどうあれ、そう自分に言い聞かせる。

 こいつには勝たなきゃいけない。勝たなきゃ凛子と戦えない。勝った先で、凛子が待っているんだ。だから絶対に勝つ。

 ヴリュンヒルデが起きあがると、前方ジャンプでトールにとびかかる、空中強攻撃を仕掛けるが、対空技のサンダーアッパーで迎撃されてしまった。

 くそっ、と胸中で毒づく。苛立ちの余り冷静さを欠き、空中受け身をとり忘れる。

 瞬時にジャンプしたトールは空中中攻撃、空中強、二段ジャンプ、空中中とコンボをつなげてくる。

 ヴリュンヒルデのライフがやばい。このままだとゼロになってしまう。

 動揺しながらマジックゲージを見れば、MAXまで溜まっていた。オーバースパークを発動しようとするが……間に合わなかった。その前にトールの空中強をあびせられてヴリュンヒルデはKOされる。

 1PWINと画面に描かれる。

 一ラウンドめを先に取られてしまった。

 プレイが乱れて、正しい対処がまったくできてない。練習やCPU相手ならできていたことが、本番だとできない。思うように実力を出しきれない。家やゲーセンでやるのとは全く違う。これが大会なのか。

 凛子や久美は、こんなプレッシャーのなかで最高のパフォーマンスを発揮している。あいつら、どんだけすごいんだよ。

 とりあえず深呼吸をする。冷静にならないと戦えない。まだ一ラウンドを取られただけだ。敗北が確定したわけじゃない。こっちはマジックゲージを満タンで持ち越せた。その強みを活かすんだ。


 ROUND2 FIGHT


 二本目が開始される。

 ヴリュンヒルデをダッシュさせ、トールの懐にもぐりこませる。しゃがみ中攻撃がヒットすると、しゃがみ強、立ち強とコンボを決めていき、復讐の炎を前面に放出して敵を焼き尽くす最強必殺技、ヘイトレッドエクスプロージョンを決めた。

 復讐の炎をあびたトールはライフが六〇%まで減り、盛大にふっとばされてダウンする。

 よし、これでかなり相手の心を揺さぶれたはずだ。最強必殺技を使用したのでマジックゲージはゼロになったが、良好な出だしを切ることができた。

 再びヴリュンヒルデをダッシュさせて、起きあがるトールに接近。攻撃を仕掛けるが、ガードを固めたトールはこちらの打撃を全て防ぎきった。

 だったら投げだ。ヴリュンヒルデを密着させてトールを投げようとするが、この瞬間を狙っていたかのようにトールは立ち弱攻撃を当ててきた。立ち中、しゃがみ中、しゃがみ強、立ち強とつなげると最後にサンダーアタックを叩き込んでくる。

 ライフが六五%まで減り、ふっとんだヴリュンヒルデは壁際でダウンしてしまう。また受け身をとり忘れた。

 ヴリュンヒルデが起きあがると、トールは前方ジャンプで距離を縮めつつ、空中強攻撃をしてくる。

 炎の剣で突きあげる対空技、フレイムスラストで迎撃しようとするが……技が出ない。どうしてだ? どうして出ない、くそっ、またコマンド入力をミスった。

 トールの空中強がヒットしてダメージをくらう。着地するとトールはしゃがみ中、しゃがみ強、立ち強、サンダーアッパーとさらにダメージを加えてきた。

 ライフが三五%まで減り、形勢が逆転される。

 これ以上のダメージはまずい。ヴリュンヒルデが上空にとばされると、今度はちゃんと空中受け身をとる。前へ空中ダッシュして壁際から抜け出す。

 ヴリュンヒルデが地面に着地すると、トールはダッシュで迫ってきて打撃を叩き込もうとしてくる。反射的にフレイムソードで突進し、二回の追加攻撃を入力した。

 カウンターヒットが決まり、トールのライフが四〇%まで減る。トールはふっとんだが、その場で受け身をとってダウンを回避してきた。

 大丈夫だ。勝てる。やはり俺と相手には、そこまで実力差はない。

 ヴリュンヒルデをダッシュさせて、トールに肉薄。待ち構えるトールは左腕をのばしてつかんでこようとする。サンダープレスだ。直前で止まりバックステップでかわす。

 サンダープレスが外れると、再びダッシュで迫り、立ち中、しゃがみ中、立ち強をヒットさせる。そしてヴリュンヒルデが全身に炎をまとって斬りかかる超必殺技、フレイムアベンジャーを入力した。

 その直後、トールの身体が白く発光する。オーバースパークだ。トールはマジックゲージを全部消費して、超必殺技を決めようとしたヴリュンヒルデを強制的にふきとばした。

 今のは……きいた。ヴリュンヒルデのライフにダメージはないが、俺への精神的なダメージは大きい。超必殺技が決まった……そう思った瞬間に決まらなかったときほど悔しいものはない。闘志が折れてしまいそうになる。

 トールはライフを二五%残したまま立っている。

 ヴリュンヒルデがダウンから起きあがると、トールは遠距離技のサンダーブレイクを放ってきた。頭上から降ってくる落雷をヴリュンヒルデにガードさせる。

 そしてトールはダッシュで距離をつめてくる。畳み掛けるつもりだ。ここで引いちゃいけない。ここで引いたら、負けてしまう。

 ダッシュで迫ってきた敵に対して、こちらもダッシュで応戦する。両者ともに地上での攻撃を繰り出したが、トールが速い。カウンターヒットが決まってしまう。

 立ち中、立ち強、しゃがみ強、サンダーアッパーとコンボをもらい、ぶっとばされたヴリュンヒルデのライフが残り一五%になる。

 空中受け身をとって地面に着地すると、トールがダッシュで迫ってきて猛攻を叩き込んできた。

 ガードを固める。立ち攻撃としゃがみ攻撃を防ぐ。ライフがじりじりと削られていき、ガードゲージが大幅に消費される。

 トールの攻撃がやんだ瞬間に、フレイムスラストを入力して弾きとばす。

 空中受け身をとってトールは地面に降りる。残りのライフは二〇%だ。

 次はこっちから攻める。ヴリュンヒルデをダッシュで接近させ、立ちとしゃがみの打撃を交互に織りまぜて叩きつける。

 トールは正確にガードすると、投げでつかんできた。投げ抜けは間に合わず、ヴリュンヒルデは投げ飛ばされてダウン。

 こっちのライフはやばい。もう一〇%もない。

 胸の鼓動が乱れる。息がつまり、緊張はピークに達する。

 ヴリュンヒルデが起きあがると、トールは先ほどの猛攻で溜まったマジックゲージを消費し、万雷の嵐で敵を蹴散らす超必殺技、サンダーストームをお見舞いしてきた。

 サンダーストームは離れている相手にも連続でヒットする厄介な技だ。咄嗟にレバーを倒してガードする。

 ガードしてから、奥歯を食いしばった。ヴリュンヒルデのガードゲージは、残りわずかだ。サンダーストームはガードしたが、ないに等しいガードゲージが減っていき、ゼロになる。

 ガードクラッシュ。ガードが外れる。ガードが外れたことでサンダーストームをもろにくらい、ヴリュンヒルデのライフがなくなった。

 またしても画面にKOと表示される。

 これで、決着だ。

 ……負けた。

 俺が負けた。一回戦での敗退が確定した。

 脳味噌が凍りついたように呆然となって、画面に描かれた1PWINの文字を凝視する。

 対戦相手のおじさんが席を立つと、我に帰って俺も椅子から立ちあがる。

 足が重い……生気を吸い取られてしまったように体中がけだるい。

 運営スタッフの男性はペンを握ってシートに何かを書き込んでいる。勝敗を記しているんだ。誰が負けて誰が勝ったのか、その事実をそこに刻みつけている。

 自分が負けたということが信じられない。思考が現実に追いつかず、実感がわいてこない。こんなにもあっさりと終わってしまうものなのか……。あんなに練習したのに、これでもう終わりなのか……。

 対戦台からはなれていくと、視線を感じる。

 おもむろにそっちに首をかたむけて……目が合ってしまう。

 唇をつぐんでいる凛子と、目が合ってしまう。

 なんでおまえが……いるんだよ。

 いや、いるに決まってるだろ。凛子は俺と戦うことを望んでいた。俺の試合を見に来てもおかしくないはずだ。

 凛子は迷いながらも、なにか言葉をかけてこようとしている。

 慌てて顔をそむける。凛子を振り切るように早足で歩き出す。

 今はどんな言葉もかけてほしくない。なぐさめることも、責めることもしてほしくない。どんな言葉をかけられても、みじめになる。だからそばにいてほしくない。

 恥ずかしい。負けた自分が恥ずかしい。凛子は二回戦で待っていたのに。俺が勝ちあがるのを信じて待っていたのに。俺との対戦を楽しみにしていたのに。

 その期待を裏切ってしまった。こんなにも自分の弱さを恨んだことはない。

 やるせない気持ちを握りしめて、俺は凛子のもとから逃げ出した。




 他の試合を観戦するわけでもなく、広々としたゲーセン内を他人とすれちがいながらそぞろ歩く。

 負けたんだな。ぼんやりとそのことが頭に浮かぶ。敗北感みたいなものは希薄だ。それよりも、凛子に対する申し訳なさのほうが大きい。


 ――九番台でリン選手とタムタム選手の試合を行います。


 凛子の試合を告げるアナウンスが流れると、会場にいる観客の足が一斉に動き出した。みんな九番台に向かっている。やっぱり凛子のプレイには注目しているみたいだ。

 俺はどうすべきか? 行ったほうがいいのか? でも結果は予想できる。そんな試合を見にいく価値はあるのか?

 いや、価値があるとかないとかじゃなくて、見にいかなきゃいけない。じゃなきゃ俺がこの大会に出場した意味さえなくなる。

 誰に対する体裁なのか、わざとらしく肩を落としてから九番台に足を向けた。

 九番台に来ると、気が重くなる。まるで巨大なドーナツのように、対戦台を大勢のオーディエンスが取り囲んでいた。やだなぁ、人間が多いなぁ。

 頭の中で不満を垂らしつつ、我慢しながら人ごみにまぎれ込んで対戦画面が見える位置まで移動する。

 前の方には音葉さんの姿があった。マネージャーとして凛子の試合を見守るようだ。久美はいるかどうかわからない。いたとしても小柄だから見つけにくい。

 対戦台を覗くとイナズマデザインのロゴ入りTシャツを着て、伊達眼鏡を装着した凛子がいた。背筋をぴんとのばして、姿勢正しく椅子に腰掛けている。その姿は凛々しくて、どことなく近寄り難い。神秘的でさえあった。

 1Pを操作する凛子が選んだキャラクターは、持ちキャラのオーディンだ。

 そして2Pを操作する対戦相手のおじさん、先ほど俺を打ち負かしたタムタムはトールを選択する。

 もしも俺が一回戦を突破できていれば、ここで俺と凛子は戦うことになっていた。凛子に勝てるだなんて思っちゃいないし、戦いたくもない。だけど凛子と戦えなかったことに、俺はもどかしさを覚えていた。そのもどかしさは熾火のようにくすぶり、じりじりと胸を焦がしてくる。

 両者がキャラクターセレクトを終えると、筐体の画面がヴァルハラ宮殿の対戦ステージに切り替わる。


 ROUND1 FIGHT


 試合開始と同時に、トールはいきなりサンダーアタックで突撃してきた。

 オーディンはガードで防ぐと、即座に反撃。しゃがみ弱をヒットさせ、しゃがみ中、しゃがみ強、立ち強を当てる。トールがわずかに地上から浮くとオーディンはジャンプ、空中中攻撃、空中強、二段ジャンプ、空中中、空中強、そして空中で二羽のカラスを召喚して上方から飛ばすフギンとムニンをくらわせた。

 華麗な空中コンボを決めると、オーディンは地面に着地してバックステップ、距離をとる。

 ライフが六五%まで減ったトールも空中受け身をとって地上に降り立つ。

 オーディンは少し離れた位置から二匹の狼、ゲリとフレキを召喚して突撃させる。

 トールはしゃがみガードで二匹の狼を防ぐと、ダッシュでオーディンに接近。しゃがみ強攻撃を仕掛けるが、ヒットする直前でオーディンはバックステップ。絶妙なタイミングでかわした。

 そこからオーディンはリーチの長さを活かして立ち中をヒットさせ、しゃがみ強、立ち強、ゴッドクラッシャー、追加攻撃の二回をくらわせてトールのライフを四〇%まで削る。

 壁際までとばされたトールは受け身をとるのをミスしたのか、ダウンする。

 その隙にオーディンは超必殺技である力のルーンを発動、自身の性能を強化すると壁際に向かって疾走した。

 ダウンから起きあがるなり、トールは超必殺技のサンダーストームを使う。

 降りそそぐ万雷の嵐をオーディンはガードする。ライフゲージがわずかに削られ、ガードケージはかなりの量が消費される。

 サンダーストームがやむと、トールはサンダーアタックで殴りかかってくる。

 サンダーアタックがオーディンにヒットする瞬間、オーディンの身体が青く光った。鋼を叩いたようなエフェクトがかかる。

 パーフェクトガードだ。一フレームのずれもなく、敵の攻撃がヒットした瞬間にコマンド入力をすることで、ライフゲージとガードゲージを全く減らさずに攻撃を防ぐガード技術だ。

 これにはオーディエンスも「おぉ~」とうなり、舌を巻いていた。

 緊張を余儀なくされる大会という場で、あんな高難度の技術を成功させるなんて、やっぱり凛子はとんでもないプレイヤーだ。対戦相手のおじさんは度肝を抜かれたに違いない。

 パーフェクトガードを決めたオーディンはすかさず立ち中攻撃をくらわせると、しゃがみ中、しゃがみ強、立ち強、ゲリとフレキ、フギンとムニンとつなげていき、敵に向かってルーン魔術をとばす超必殺技、勝利のルーンを決める。

 コマンド入力技からコマンド入力技へとつなぎ、さらに超必殺技につなげた今のコンボは、力のルーンで強化した状態でなおかつ壁際じゃないと成功しない。条件が整って初めて可能となるコンボだ。

 残りライフが一ドットになったトールは、もう後がない。ダウンから起きあがるとガードを固める。

 そこにオーディンは肉薄すると、トールを投げ飛ばしてKOした。

 1PWINと画面に表示される。あっさりと一ラウンドを先取した。

 敵の攻撃をガードした際に少しだけライフは減ったが、まともなダメージは一撃も受けていない。ほぼパーフェクトで凛子は勝った。実力差は誰の目にも明らかだ。

 二ラウンドめが開始されるとオーディンは積極的に攻めていき、トールのガードを崩してライフを削っていく。そしてまたまともなダメージをもらわずに圧勝した。

 苦もなく二本先取のストレート勝ちを決めて、凛子は三回戦へと進む。

 トール使いのおじさんは、そこまで俺と実力が変わらなかった。つまり俺が凛子と対戦していたら、今みたいに惨敗していたということだ。

 俺じゃ凛子に勝てない。それはわかっていた。わかっていたが……こうして目の当たりにすると、胸がしめつけられる。きりきりと体の内側を引っかかれて、鋭い痛みが生じる。

 他人が凛子に敗れたところを目にして、ようやく俺は一回戦で負けたという実感を持つことができた。もう俺は、この大会では誰とも戦えない。その権利を失ってしまった。敗北とは、戦う権利を奪われることだ。

 ……いやになるほど痛感させられる。凛子とは違うんだということを。俺は高い所にいるあいつを見上げることしかできなくて、同じ目線に立つことはできない。

 才能に恵まれた者と、恵まれなかった者の差がそこにある。

 凛子が初出場したゲーム大会で優勝したのを見たときの、あのむなしさが去来する。自分がちっぽけな存在に思えてならない。

 試合が終わると、集まっていたオーディエンスは散っていく。音葉さんは勝利をおさめた凛子に小走りで近づいていった。

 俺はきびすを返した。声をかけたりはしない。凛子と顔を合わせたところで、何を話せばいいのかわからない。ましてや勝利を祝うなんてできそうにない。

 見つかる前に、さっさとこの場から退散しよう。




 次の試合からも凛子は順調に快勝を続けていき、苦戦することなく決勝戦までのぼりつめた。決勝の相手は予想通り久美だ。あいつも次々と他のプレイヤーを薙ぎ倒していき、決勝まで駒を進めた。

 俺は、もう帰ろうかなと何度も思ったけど、このまま凛子に何も言わずに帰るのはどうなんだろう。どうなんだろうっていうより、そんなことをすればかなり印象が悪い。そしたらのちのち玲奈さんを召喚されるかもしれない。なので出口に足が向くことはなかった。ていうか俺は玲奈さんと喋ったことないのに、どんだけびびってんだよ。

 ここまで来たら、最後まで見届けるとしよう。凛子が勝つのか、久美が勝つのか、結果はどちらでもかまわない。かまわない……はずだ。どっちが勝っても、俺には関係ない。凛子が負けたところで、俺に被害はないんだから。

 トイレを済ませると、会場のフロアにつながる細長い廊下を歩く。もうすぐ決勝戦が始まる。会場にいる観客達は、さぞ盛りあがっていることだろう。俺は彼らのように純粋な気持ちで決勝戦を楽しむことができるだろうか? あまり自信はない。

 後ろ向きなことを考えていたら、前から近づいてくる人影が目に入り、ぴたりと足が止まった。

 相手もうっすらと眉間に縦皺を寄せて立ち止まる。

 俺と凛子は、無言で見つめ合う。

 凛子は顔をうつむかせると、清掃の行き届いた床に視線をすべらせた。おもむろに顔をあげると、小さな唇をちょっとだけ震わせて声をかけてくる。


「その……残念だったね」


 なにが残念だったのかは、はっきりと口にせず濁してきた。気を使われている。


「べつに、負けたことは気にしてねぇよ。おまえと戦っても、どうせ俺は負けていたし。一回戦を勝てたとしても、二回戦は突破できなかった。優勝なんてはなからできると思っちゃいない」

「そんなの、やってみなきゃ……」


 わからない、なんて言うつもりか? 自分と俺は一緒だって、言うつもりなのかよ。自分にできることが、俺にもできるって本気で信じているのか?


「やってみなくてもわかるだろ。俺が負けた相手に、おまえは圧勝したんだから」


 それがすべてだ。凛子にできてしまうことが、俺にはできない。俺にはできないことを、凛子はあっさりとやってのける。


「おまえと俺は、ちがうんだ……」


 突き放すように、諦観の想いをこめてそう言った。

 そばにいたら、それだけでつらい。凛子がゲームで活躍している姿なんて見たくない。昔も今も、おまえを見ていたら苦しくてたまらないんだよ。きっとこれから先も、この感情は変わらないままだ。


「そもそも俺とおまえが対戦していいはずないだろ? つりあわないからな、俺とおまえとじゃ。……住む世界が、ちがいすぎるんだ」


 もうガキの頃のように、無邪気に遊んでいるだけの幼馴染みではいられない。そんなわかりきったことを、いまさらになって打ち明けた。

 凛子は胸の前でぎゅっと拳を握りしめて顔をふせる。どんな表情をしているのか見えなくなる。


「そんなの……」


 うわずった声がもれる。凛子の声だ。


「そんなの、ぜんぶ……下野が決めたことじゃん。対戦したらだめだとか、つりあわないとか、住む世界がちがうとか、そんなのぜんぶ、下野が一人で勝手に決めたことじゃん。わたしはそんなこと……一つだって、思ってないのに……」


 言い返すことはできない。俺が自己完結して、ふてくされているのは事実だ。でも俺が持ってないものを凛子が持っているのだって、変えようのない事実だ。


「わたしは……下野と対戦したいって、そう思ってただけなのに……っ」


 タンッと床を蹴って、凛子は背中を向ける。来た道を駆け足で引き返していく。遠くに行ってしまう。

 走り去る間際、鼻をすする音が聞こえたような気がした。

 泣いていた……のか? 

 ……いや、まさかな。もともと俺とは疎遠だったんだ。そんな当たり前のことを再確認しただけで、泣くはずがない。

 思いあがっちゃいけない。俺は凛子にとって、影響をおよぼせるような人間じゃない。

 しょせんはただのご近所さん。同じクラスの他人に過ぎない。

 もう、仲の良い幼馴染みなんかじゃないんだ。




 決勝戦だけあって、対戦台を囲むオーディエンスの数はこれまでの比ではない。会場を訪れた観客全員がここに集っている。

 みんな興奮した様子で口々にどちらが勝つか予想しあっていた。レートは五分五分といったところだ。まぁどっちが勝とうが俺の知ったことじゃない。むしろ久美が徹底的に凛子を負かしてくれれば、これまでの鬱積が晴れてすっきりする。

 そんな最低なことを考えて自嘲しつつ、人ごみのなかにとけこむ。影が薄いことには定評があるので、凛子の視界に入らない自信はあった。情けない自信だ。

 対戦台の前に凛子と久美がやってくると、集まったオーディエンスは神聖な儀式でも見守るように沈黙した。


「へっ、待ってたぜ! 我が宿命のライバル! ここでおまえとの因縁にケリをつけてやりゃあ!」


 相変わらずテンションの高い久美は八重歯を覗かせてニヤつき、ビシッと凛子の顔を指差してくる。対照的に凛子はテンションが低く、冷めた目で久美を見ていた。


「べつに待たせてないし、ライバルでもないから。ついでにクズミとは何の因縁もない」

「そこは空気を読んで乗れよ! 因縁があるってことにしておけよ! そのほうがドラマ的におもしろいだろうが! 決勝戦だぞ、決勝戦! なのになんだ、そのしけたツラは! もっと元気を出せ、元気を!」


 へんっ、と鼻を鳴らすと久美は対戦台についた。

 凛子も口を閉ざしたまま対戦台に座る。


「……まずいわね」


 かすかなつぶやきが耳に入ってくる。声の主を探してみると、それは前列にいる音葉さんだった。

 音葉さんは真剣な眼差しで凛子の背中を凝視している。真剣だからこそ、不吉なものがそこにあった。


「ではこれより、決勝戦を行います」


 運営スタッフの男性が声をかけると、二人ともキャラクターをセレクトする。

 1Pを操る凛子はオーディンを選ぶ。

 2Pについた久美が選ぶキャラは、フェンリルだ。リーチはそんなに長くないが、素早さと突撃力のあるスピードファイター。神話では巨狼となっているが、ラグエンでは人の形をした黒髪のイケメンキャラになっている。

 キャラクターセレクトを終えると、画面が切り替わる。対戦ステージは凍える死者の世界ニヴルヘイムだ。

 ついにはじまる。プロゲーマーとプロゲーマーの対戦が……。


 ROUND1 FIGHT


「おらあああああああああああああああああああああああああああ!」


 試合が開始するなり、フェンリルはダッシュで迫り、しゃがみ中攻撃をオーディンにヒットさせてきた。そこからしゃがみ強、立ち強、さらに立ち弱を三連打であびせてくると、鋭い爪で突き刺す突撃技ウルフスピアに、追加攻撃を一回するコマンド入力を行う。

 いきなり攻めてきやがった。噂どおり好戦的なプレイスタイルだ。そしてプレイ中にうるさいというのも噂どおりだ。ゲームをしているときでもクズミはうざい。

 ライフが七五%まで減ったオーディンはふっとばされたが、受け身をとってダウンを回避する。

 一拍の間をおくことなく、オーディンはゲリとフレキを召喚して突撃させる。


「んなもん当たらねぇよ!」


 フェンリルは前方ジャンプでゲリとフレキをかわすとオーディンとの間合いを縮め、空中から地上に向かって突進し、牙をむく空中技、ハンターファングを使ってきた。

 立ちガードでオーディンが防ぐと、フェンリルは空中で後退しつつ地面に着地する。

 オーディンはダッシュで前に出ると、リーチの長さを活かして猛攻を叩き込む。


「見え見えなんだよっ!」


 繰り出される立ち攻撃としゃがみ攻撃をフェンリルは正確に見切ってガードした。連撃がやむとフェンリルはダッシュで肉薄、オーディンをつかんで投げ飛ばす。

 オーディンはダウンする。ライフは残り七〇%。


「まだぁまだぁ!」


 フェンリルはダウンしたオーディンのもとまで走り寄ると、ダウン中の相手をつかみあげて爪で切り裂くコマンド入力技、エクスキューションで追撃を加える。受け身がとれない投げの後には有効な技だ。

 爪で切り裂かれたオーディンは後ろにふっとぶと後転受け身をとって距離をとる。残りライフは六五%だ。

 オーディンはフギンとムニンを上方に召喚して襲いかからせる。フェンリルが立ちガードで防ぐと、オーディンは駆け出した。フェンリルに密着するまで近づき投げようとするが、投げ抜けをされて外される。


「おらあっ!」


 フェンリルが反撃してくると、オーディンはバックステップで回避。即座にオーディンは立ち中を繰り出してヒットさせ、しゃがみ中、しゃがみ強、立ち強、フェンリルが地上から浮いたらジャンプ、空中中を当てて、さらに空中強を当てようとするが……。


「え……」


 無意識に俺は声をもらす。

 次のコンボにつなげるはずのオーディンの空中強攻撃が当たらなかった。久美は何もしていない。単にオーディンが空中強を出すのが遅かっただけだ。テンポをミスった。そう、ミスったんだ。

 凛子が、あの凛子が……コンボミスをした。

 それ以上コンボをつなげられなかったオーディンは地面に着地する。

 ライフが七五%まで減ったフェンリルは空中受け身をとると、そのまま空中でバックダッシュし、距離をとって着地する。


「はっは~ん! ミスりやがったな! この下手クソが!」


 久美が悪態をついてくる。その態度に「なんだあいつ」と苛立つオーディエンスもいた。そして凛子がコンボミスしたことにどよめくオーディエンスもいる。

 俺の心中も穏やかじゃない。

 凛子が俺と同じようなミスをするなんて、ありえない。そりゃプロだって時にはミスを犯すだろう。一度もミスをしない奴はいない。けど、さっきまでの試合で凛子はミスらしいミスは一つもしなかった。じゃあなんで急にミスをしたのか? なんでよりにもよって決勝の舞台でミスをしてしまったのか?

 はなれた位置にいる音葉さんを見やると、しかめっ面になっている。凛子の様子がおかしいことに、あらかじめ気づいていたんだ。

 対戦画面に目を戻す。オーディンがダッシュで間合いをつめて攻撃を仕掛けるが、フェンリルはジャンプで回避しつつ空中強をヒットさせる。そこから地面に降り立つと立ち中、立ち強、しゃがみ強、ウルフスピアに追加攻撃の一撃とコンボを決めてくる。

 ライフが三五%になったオーディンは壁際までふきとばされるが、受け身をとってダウンを回避。

 フェンリルは黒い声音を飛ばす遠距離技、デスボイスを撃ってくる。

 オーディンは立ちガードでデスボイスを防いでからゲリとフレキを突撃させる。フェンリルがしゃがみガードしたら、またゲリとフレキを突撃させた。

 ……逃げ腰になっている。ライフが残り少なくなって凛子の攻めが甘くなっている。さっきまでの試合ではそんなことはなかったのに。劣勢になったとしても冷静なプレイスタイルを維持できていたのに。さっきまでできていたことが、この試合ではできていない。

 突撃してきたゲリとフレキをフェンリルは前方ジャンプでかわす。地面に降りると、ダッシュで迫ってくる。

 オーディンは前方ジャンプをして空中強で攻めかかるが、フェンリルは爪で切りあげる対空技、スカイエッジでオーディンを迎撃する。

 今のダメージで残りライフが三〇%以下になったオーディンは後ろに弾きとばされるが、空中受け身をとると壁際で降り立った。

 その降り立つのに先んじてフェンリルはダッシュで肉薄しており、しゃがみ弱を当ててくる。そこからしゃがみ中、しゃがみ強、立ち強、ウルフスピアに追加攻撃の一回、さらにしゃがみ弱を二連打で当てると、


「こいつでトドメだぁ!」


 フェンリルの姿が巨狼に変わって食らいついてくる。画面が暗転するとオーディンは猛然と切り裂かれまくり、KOされた。

 フェンリルの最強必殺技、ゴッドイーターだ。

 2PWINと画面に表示される。

 最後に久美が決めたコンボは、壁際でテンポよくメリハリをつけなければつならがない。数フレームのずれも許されないプロの技だ。素人がやろうとしても、再現するのは難しい。よしんばできたとしても成功率は低い。ましてや本番で決めるなんて無理だ。

 それにトドメに使用した最強必殺技。別に超必殺技でもオーディンをKOすることはできたはずだ。溜まったマジックゲージを次のラウンドに持ち越すという有利を捨てて、なぜ最強必殺技を使ったのか? あえて派手に決めることで凛子にプレッシャーをかけるのが目的か? それともただ派手に決めたかっただけか? 久美のことだから後者のような気がする。

 なんか、息苦しい。凛子がKOされて一ラウンドを取られてしまったことに動悸がする。凛子がKOされたのを目の当たりにしてうろたえていた。

 ここから見える凛子の背中には覇気がない。黒い霧のような負のオーラが漂っている。そんなものは見えないが、そう思えて仕方ない。俺のなかの不安が肥大していく。

 コンボミスをしたり、攻めが甘くなったり、どうしてそんなプレイスタイルが乱れているんだよ。凛子らしくない。ただの緊張というわけではないだろう。なにかがあった。じゃなきゃ音葉さんがまずいなんて口にするはずがない。

 なにかって……そんなの一つしかない。けど冗談だろ? なんで高い所にいるおまえが、底辺を這いつくばっている俺の言葉に影響されてんだよ。あんなことで負けたりするなんて、下らなすぎるぞ。

 そこでふと、疑問が生じる。

 なんで俺は、こんなに焦っているんだ? あいつが敗北するのを恐れる理由なんて俺にはない。むしろ負けてしまえと思っていた。ずっと以前から落ちぶれればいいって、不幸になればいいって、そんなゲスなことを考えては、あいつの才能に嫉妬していたはずだ。

 なのに、なんでこんなにも落ち着かない? あいつに勝ってほしいなんて望んじゃいないのに。望んじゃいないけど、凛子が負けることを否定したい自分がいるのも確かだった。

 悪い予感というのは、得てして当たる。

 二ラウンドめが開始されると、凛子はまたコンボミスをやらかした。行動もたやすく読まれてしまい、どんどんライフが削られていく。残りライフがわずかになると、やはりオーディンの攻めは甘くなった。


「んだよこれっ……!」


 なぜか優勢なはずの久美が毒づく。

 フェンリルは立ち中攻撃をオーディンにヒットさせると、立ち強、しゃがみ強、口から黒い川を吐き出す超必殺技、ヴォーンを発動する。

 オーディンのライフがゼロになり、KOされた。

 2PWINと再び表示される。

 二本先取のストレート勝ち。久美の優勝が決定する。

 オーディエンスは興奮しながら試合の感想を囁きあう。その内容はやはり久美のプレイを賞賛するものばかりだ。凛子を賞賛する人はいない。その逆だ。まばらではあるが、酷評されている。

 俺は周囲の話し声を耳にしながら……なんでだよ、という問いを繰り返していた。

 なんで負けちまったんだよ。おまえが負けていいわけないだろ。俺の言葉が精神に負担をかけたとしても、おまえは負けちゃいけない。いつだって凛子は勝者でなきゃいけない。敗者になるなんて、あっちゃいけない。

 そんな無責任な不満をぶつける。

 凛子の背中には哀愁があった。さっきよりも負のオーラが濃くなっている。そんな気がした。

 どんよりとしたまま凛子は椅子から立ちあがると、対戦台の前から去ろうとする。


「おい! なんだよ、さっきのウンコプレイはっ!」


 優勝を決めた久美は、凛子のもとまで駆け寄ってきて食ってかかった。真っ赤になった顔は飢えた野犬のように獰猛だ。


「おまえそれでもわたしのライバルかよっ! あんなクソみたいなプレイする奴に勝ってもぜんぜん嬉しくねぇぞ!」


 久美の怒声が反響すると観客に困惑の波がひろまった。「なに?」「どうした?」とみんなの視線が凛子と久美に集まっていく、

 凛子はどこかに感情を置き忘れてきたかのような冷たい面持ちで、背の低い久美を見下ろす。


「わたしはライバルじゃないし、そっちが勝ったなら、それでいいじゃん。なにが不満なの?」

「不満に決まってんだろうが! ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアカが! まさかさっきの試合がいいものだなんてマジで思ってんじゃねぇだろうな! 思ってたら最強もんのヴァカだぞおめぇはっ!」


 久美はマグマのごとき憤怒を爆発させる。両目を鋭くとがらせて、鼻先が触れるほどの距離まで凛子に顔を近づけた。


「いいか! あんなのはなぁ、いつものおまえじゃねぇんだよぉ!」


 ハッと凛子は瞠目すると、よろめきながら後ずさった。おぼつかない様子で視線をおよがせて……そのつぶらな瞳が俺を見てくる。

 どきりとする。肩がこわばって身動きがとれなくなる。痛みが、じんわりと体の内側から浮かんできた。毛穴が逆立ち、肌寒さを覚える。

 俺は凛子と目を合わせることにたえられなくなり、ほんの一瞬だが、視線をそらしてしまった。

 ……凛子は長いまつ毛を伏せてうつむくと、俺を見るのをやめた。再び凍てついた表情を固めると、気丈な態度で久美を睨みかえす。


「わたしが不調だったとしても、それはクズミには関係ないことだよ」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」


 青筋を立てて久美は叫ぶ。はんっと鼻を鳴らすと傲然と胸を張った。


「あぁ~、そうでちゅかぁ~。そうでちゅね~。調子が良かろうが悪かろうが、どうせわたしが勝ってましたもんね~。ハッ! おまえみたいなザコはわたしのライバルでもなんでもねぇよ、ボォケが!」


 罵倒を吐き捨てると、久美は顔をそむける。もう凛子を見ようともしない。


「ちょっときみ、なにをやってるんだ」


 さすがに見かねた運営スタッフの男性が、久美に注意してくる。久美は悪びれることもなく、ケッと舌を打った。

 凛子は無表情のまま、足早に会場を立ち去っていく。音葉さんはやれやれとかぶりを振るうと、凛子を追いかけていった。

 オーディエンスにはまだ困惑の余波がひろがっている。この場からはなれていく者もいれば、なかにはスタッフに叱られる久美を眺めている者もいた。

 もしも俺が凛子から目をそらさなかったら、どうなっていただろう? ……おそらくどうにもならなかった。だっていうのに後悔ばかりがふくらんでいく。

 俺のせいで、凛子のプレイに支障が生じたのは明らかだ。そんなことあっていいはずがないのに、それでも凛子は負けた。よくない負け方をした。実力を惜しむことなく出し切っての敗北なら、久美だってあんなに激怒しなかった。本調子じゃない凛子と戦ったことが、久美は不服なんだ。

 それがはっきりしたところで、どうにもならない。起きてしまったことは変えられない。じゃあこれから改善できるかと問われれば、それもできはしない。今から凛子を追いかける気力なんてない。追いかけたところで、俺にはなにもできない。

 きっと大会に出場したことが間違いだったんだ。いつもどおり、凛子と適度な距離をおいておけば、こんなことにはならなかった。

 俺は自分になにを期待していたんだろう? 期待できることなんて、一つもない人間なのに。そのことを、俺は誰よりもわかっているはずなのに。




 授賞式は最悪だった。優勝した久美も、準優勝した凛子も、笑顔一つ見せることなく、始終ぴりついた空気が流れていた。

 俺は授賞式を最後まで見ずに、途中で会場を後にした。

 いつものように、誰とも肩を並べることなく一人で家に帰っていった。




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