放課後の男友達
つなぎの部分です。
―次の日。
「葉月ー!葉月ー!あ、いたいた!ねぇねぇ、ちょっといい?」
走りながらあたしは葉月を追いかけた。
「何だよ。そんなデカい声出さなくても聞こえるから。」
ぷっと噴出した葉月。何でかなぁ。そういう時はいっつも。
「笑わないでよねー!大事な話なんだからっ!!」
けんか腰になっちゃうんだ。葉月が相手だと。どうしてかな?
すると思いもよらない事を言われた。
「俺のこと、好きになるなよ。」
「はぁ!?誰が葉月なんかっ!」
「お前、俺のこと好きになりそうだからクギを刺しといた。」
「何言ってるの?あたしはもう恋なんてしないの!」
「何で?」
「報われない恋って辛いだけでしょう?」
「それって…」
「とにかくあたしは葉月を好きになったりしないから安心してよ!それより!!」
話がだいぶ脱線してしまった。本来葉月を呼び止めたのは愛だの恋だのについて語るのが目的じゃないんだ。
「また会いたいの。」
「誰に?」
「ダメだったらいいんだけれど…杏果さんに!」
「別にいいけど、一つだけ注意して欲しい事がある。」
「なに?」
「昨日も言ったけど、杏果は人間じゃない。だから体温が低くなると、人でいう貧血みたいな状態になるんだ。だからあんまり長話とかは出来ない。分かってくれるか?」
「うん!分かった。気を付けるよ。ありがと、葉月。」
「それ禁止。」
「え?」
「語尾に『葉月』って付けられると、なんか照れる。」
「?照れられても困るんだけど…それじゃ、下の名前で呼び合うのもダメになる?」
「それはいいけど。」
「うん!葉月!!あ、ごめん。」
うっかりもう一度口にしてしまった。
「……もう、いいよ。慣れるようにするから。」
半分諦めたように言う葉月に、いつもみたいに笑って欲しかった。
だからあたしは必死で取り繕った。
「え、でも本当に嫌だったら言わないようにするよ?」
「いいって。『かんな!』」
葉月は仕返しみたいな意地悪な笑顔で名前を呼ぶから…。
「!ううー言われてみれば照れるかも…。」
あたしは少し恥ずかしくなったし、よくわからないけど変なドキドキがした。
うん?まさかねー?葉月なんて…。
好きになるわけ無いじゃない!
平然と会話を続けている様に見せかけて、葉月の見せる意地悪な笑顔だったり、満面の笑みだったり、泣き出しそうな曇り空の様な悲しい表情、そして口喧嘩してる時のあたしと張り合う強気な顔…天気の様に変わりゆく葉月の見せる感情に惹かれ始めていたのは本当だった。
だけどまだ好きとは違うものだと思っているし、憧れてもいないし、異性に慣れていないだけだと思った。
かんなは男勝りで、負けず嫌いで、勝気な性格ゆえに男子にモテた試しがない。
当然男の子と付き合った事もない。だから知らないのだ。男子がどういう子が好きで、どんな子が好みなのか。漠然と淑やかな女性らしい杏果の様な人がいいのだと思っているのだ。
だって、現に身近な葉月が好きな女性なのだから―。
「………」
「おーい、かんなどうした?黙っちゃって。」
「あ、ううん、ちょっとぼーっとしちゃって。ごめん。あ、えっとさっきの続きだけど。あたしは嫌じゃないな。」
「家族とかに呼ばれ慣れてるから?」
「それもあるけれど、葉月は友達だからかな。うん、きっとそう」
「友達か…。」
何故か少し残念そうな表情をしたのは、あたしの事が気になってるから?なんていう自惚れた気持ちと、もしかして杏果さんは葉月の事を友達としか見ていなかったのかなとか、色々想像してみたけれど―。
男の子の考えている事って、やっぱりよく分からない。
ましてやついこの間、友達になったばかりなのだから―。
まだ続きます。




