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放課後の謎の美人

今のところまだ完結しません。

授業が終わったら、会いに行くからね!





「ねぇ!名前、なんて言うの!?」

勢いよく話し出すから、あたしはビックリしちゃって。

「俺はハヅキだよ!木浦葉月(きうらはづき)!!」

腰に手を当ててこっちを向き、立て続けに喋る男の子に半分呆れながら答えた。

飯崎(いいざき)かんな!」

そうぶっきらぼうに言い放ったら、二人とも同じ道を通って、同じ学食をおばちゃんに注文するから。

なぜかむっとして。

「ち、ちょっと、かんなの真似しないでよねー!」

「してねーよ。たまたまだし!オレだって、うどんすきなんだよ!」


「そーなの?今日のトッピングは、山菜かちくわだもんね♪

「オレちくわー。」

「あたし山菜!」


それで、食堂…どこ座ろう?

あんまり空いてないんだよね・・・

空くまで待つ?

うーん…おなか空いたよ~。


そしたら横っから「ツンツン」されて。

ビックリして、振り向いたら

…トッピングのかまぼこと山菜を一緒に食べるタイミングが同じ、ハヅキがいた―。



「こっち」

昼食の学食を食べ終えて、あっという間に放課後に。

お腹空いたなーなんて思っていると。

ハヅキが先導して向かった場所は―


「うわぁ立派な…料亭??」

「新しい友達が来ると言って、ちょっとした料理を作らせてもらった」

友達?…になったんだ。わたしたち―。



「そんなことしていいの?なんか悪いじゃんっ!…っていうか、かんながお腹空いてるって何で分かったの!」

ムキにになりつつも柄にもなく遠慮して。

ちょっと葉月に抵抗する。

「俺ってエスパーだから!なーんてなっ」

すると、音もなく奥から―藍色ののれんがハラリと揺れて。

急にお風呂上りを思わせる、黒髪ロングのお姉さんが現れた。


「お帰りなさい。葉月(はづき)さま…」

そうやって、頬を紅潮させる。

「なんだよ?杏果(きょうか)。誘ってんの」

慣れた手つきで彼女の顎に手をやる葉月は、なんかとてもイヤらしい。しかし、よく見ると触れそうで触れていないのはどうしてだろう?


「そんな…畏れ多いです。葉月さまをお誘いするなんて…」

彼とは真逆に純情乙女といった風情を醸し出し、そしてますます赤くなる杏果。

むーっ。なんか気に入らない展開で置いてきぼりを食らった様子のかんな。空気を破る様にこう言い放った。


「あー、かんなお腹空いたなぁ。きょーかさん、なんかおいしーもの食べさせてくれるの?」

チラリ。今のうちに杏果のスペックを確認する。

顔…色白で和服が似合う美人。物腰柔らか。胸…ある。

それに引き換えわたしは…顔、普通?性格、素直になれない負けず嫌い。胸…ない。

葉月…顔、悪くない…よね?性格、わたしと合わない。筋肉…鍛えてそう?…葉月のスペックなんてどうでも良いか。

くだらない事に頭を使ってると、目の前でパチンと手を叩く音がした。


「かんなさま、おうどんが冷めてしまいますわよ」

パチンの主は杏果だった。

彼女は自ら温かいうどんを振る舞ってくれたのだった。

「…うどんなら、昼に食べたんだけど」

ぶっきらぼうに呟くと、今度は申し訳なさそうに杏果が言った。

「!まぁ、そうでしたの…天ぷらにすれば宜しかったかしら?…申し訳ございません。次回からは気をつけますね」

「べつに、そんな謝らないでよ。…おいしいじゃん」

かんなは杏果の作ってくれた煮込みうどんをつるりとたいらげた。

「おいしかったー!杏果さんて美人で家庭的だし、何者!?」

帰り道、送り届けたいけれど用事があって出られないと申し訳なさそうにしていた杏果さんのことを、葉月に突っついてみる事にした。


「俺の―好きな人。」

「へぇ?いいじゃん」

「でも、叶わないから」

「なんで?」

「…でるから」

ん?今なんて言った?

「葉月、今なんて―」

「死んじゃってるからっ」

振り絞るように葉月は言った。


「え…?死んでるって…生きてるじゃん?もしかして杏果さんて幽霊なの!?嘘~?そんな訳ないじゃんねー?…葉月?」

あたしは思いっきり冗談で言ってみたのだけれど、葉月は下を向いたまま黙っている。

「は、葉月?ごめんね…?本当に…亡くなってるようには見えなくて、あたし…」

そっと葉月の背中に手を当ててみる。震えている。

「…かんな、誰にも言わないか?」

「うん?」

「信じてくれるか?」

「もちろん!」


「杏果さんは俺のお姉さんみたいな人だったんだ。血のつながりは無いけれど、家が近くて親しくしていた。家にもよく遊びに来てくれていた。でも、死んじゃった。」

「…どうしてか、聞いていい?」

「交通事故」

「え…」

「杏果さんは横断歩道を渡っている時に、向こうから突っ込んで来た車にひかれて亡くなったんだよ」

「そんな!」

「で、俺の家は特殊な温泉場をやっている」

「旅館?だもんね。さっきいたところ」

「ああ。それで、幽霊の人と一般の人と場所は違うけれど両方の人が浸かれる温泉場をやっているんだ」

「あの、じゃあさっき杏果さんの頬が赤かったのは…」

「風呂上がりだろ」

「えっと、素朴な疑問なんだけど…幽霊の人もお風呂に入るの?」

「入らないとこの世に居られない。この世に居るには体温が必要だからな。体温は体を暖める事で得られる。」

「じゃ、じゃあなんで仲居さんやってたの!?うどん作ったり…」

この質問になって、やっと葉月は笑ってくれた。

「そんなの俺にもわかんねー!」

「えー!」

安心してあたしはツッコミを入れる。

「俺はすべてを知ってる訳じゃないんだ。それにミステリアスな美人ってところもまたそそるんだよ。杏果は。」

何なんだろう。そそるとか下品な事を言っているのに、葉月は真っ直ぐに前を見つめていた。

「遠くに行っちゃって、もう二度と触れる事も出来ないけれど…杏果にそばにいて欲しい気持ちもあるけど、やっぱり…早く成仏して欲しいんだ。それが杏果にとって一番だと思うから。」

さっき見た笑顔は、空元気だったみたいで―今の葉月の顔は曇り空で、泣きそうだった。

「…ごめん、何も出来なくて。」

あたしはそれしか言葉を発する事が出来なかった。

でも、一つ気になった事がある。

どうして葉月は杏果さんをさんづけしたり、本人の前で呼び捨てしたりして、呼び方を統一しないんだろう?

その疑問は後ほど判明する事になるのだけれど―。

ありがとうございました。

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