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 私はリッチェル様とその取り巻き達に向き直ります。

 まずはお互いのドレスに髪型、装飾品まで褒める事から令嬢達のお喋りは始まります。

 それから褒め終わるとリッチェル様は悩ましげに息を吐いた。

「王妃様のお誕生日が舞踏会デビューだなんて羨ましいですわ。私は我が家の舞踏会でしたのよ。」

 表情、目の動き、声音からどう思って言っているのか瞬時に察して顔と声を作る。

 どうやら本心から出た言葉らしい。フランゾール家を持ち上げては王妃様に失礼になってしまう。かといって誇らしげにしてもリッチェル様を見下す感じになってしまってよろしくない。

「まあ、私もリッチェル様の舞踏会に行ってみたいですわ。」

 心底行きたそうに目を輝かせて笑う。

 これが正解のはず。

 心にもない事を言って内心溜息を吐く。どこにも行きたくない。自室でゆっくり過ごしたい。

「それはいいですわね。招待状を送りますからぜひいらしてね。」

 嗚呼、自滅している気がします。作った私は勝手に感謝の言葉を言う。

 舞踏会は十五歳からなのでついこの間なった私は招待状を貰った事はありませんでした。

 この王家主催の舞踏会の招待状はお父様に届いた物ですから私に来るのはフランゾール家の招待状が最初かもしれません。

 話題が世間話に移行した時にファンファーレが鳴った。

 驚いているとリッチェル様が両陛下がいらっしゃった事を教えて下さり、緊張してきました。

 これから先に来ているはずの両親と合流して挨拶をしに行かなくてはいけません。

 リッチェル様達も挨拶をする為に別れの挨拶をして去っていきます。

 私もライルと両親を捜して合流すると、陛下に挨拶する為に既に並んでいる列に並びます。

 勿論貴族社会ですから身分の高い者、影響力のある者は前に並ぶのです。

 アルバーレ家は真ん中位でしょうか。待っている間も表情には出しませんが緊張していて、この時辺りからの記憶は曖昧です。

 挨拶の順番が来て卒なくこなした事は何とか覚えています。

 舞踏会デビューおめでとうと声を掛けて下さった事も覚えています。



 ですがその後の衝撃が強く、私の心が悲鳴を上げました。

 問題の事件はダンスが始まり、ライルとダンスを踊った後です。

 疲れが出てしまってライルに休まされ、壁の花になっている時でした。

 声をかけられ顔を向けると淡い金髪の男性が立っていました。

 何故声をかけられたのか分かりませんでしたが、いつものように微笑んで私に何かと聞きました。

「気持ち悪い。」

 何を言われたのか分かりませんでした。

 失礼な(ひと)、何が気にいらなかったの?

 おかしい。いつもと同じ完璧な淑女のはずなのに。

 彼の目は冷たくてーー。


 見たくない!アイスブルーの目からさっと逸らす。

 理解したら壊れてしまう。本能的にそう思った。

 何が壊れるのだろう。そう思ったが思考をそこで止めた。

 私と男性の周囲だけ静かで、別の空間にいるかのようだった。

 それが破れたのは彼女が現れたからだ。

「こちらへいらっしゃいな。ブランチェスカさん。」

 リッチェル様が助けて下さった。

「良いですわね。ローヴェル様。」

 男性ーーローヴェル様と呼ばれた方の返事を聞かずに背を片手で押されてやっと動く事が出来ました。

 人気のないバルコニーに連れられて何があったのかなど聞かれましたが、答えられませんでした。

 助けて頂いて心苦しいですが、私の内側はたとえ家族であろうと話せない。それに気持ち悪いと言われた事を知られたら、どう思われるのか怖いのです。

 私に気持ち悪いという印象がついてしまう。もし、そうなってしまったら私が今まで築き上げてきた作った私の存在が危ぶまれる。

 負の印象を壊す事は難しい。

 頑なな私に折れたのかリッチェル様は溜息を吐く。

 内心それに怯える。

「ここで待っていて。いいですわね。」

 有無を言わさぬそれに頷くとバルコニーを出て行った。

 私は待っている間、出来るだけ考えないようにしていた。考える度に無心になれと心で唱える。

 暫くしてリッチェル様がライルを連れて帰ってきた。

 疑問に思う間もなくアルバーレ家の馬車に乗せられリッチェル様に見送られてしまった。

 どうやら私は具合が悪いという事になっておりライルにだいぶ心配されてしまった。

 リッチェル様に感謝しなければ。


 私の部屋に着き香り袋を嗅いでやっと落ち着く事が出来た。

 落ち着くと今まで張り詰めていたものが解け、我慢していた思考が溢れ出てきてしまった。


 嗚呼消えてしまいたい消えてしまいたい消えてしまいたい。

 死にたい死にたい死にたい死にたい。


 否定されてしまった。

 胸が痛い。

 苦しい。


 負の感情は止まらない。

 冷静な私がこれ以上は駄目だと言っている。

 でも止められない。

 声を押し殺して泣く。

 本当に危ないと体が判断したのか机の引き出しを開け、小さな箱からピンク色の石を出して胸の前で握る。

 石の名はクンツァイト。

 ひんやりとして握っていると負の感情が吸い取られていくようだ。

 これもおまじないがしており、これは癒しの効果が付与されている。

 疲れを癒す為だろうか。私は気づけば寝ていた。


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