捩レ飴細工
洋館の地下室には、さらに地下への階段があった。雑誌記者の俺は、「やり方に口出し無用」の条件で案内を引き受けてもらった国籍不明の男と、彼が連れている少女とともに進んだ。少女は黒髪だが、男は「日本人ではないので安心しろ」という。意味が分からない。「カナリアさ」とも。彼女のふびんな雰囲気に情が移る。妹に似ているからか。
「なんだ、こりゃ」
やがて広間に出たとき、俺はカンテラに照らされた光景に目をむいた。
薄暗い中、柱や壁が光沢を帯びたガラス質の物体に変化しひどく捩れていたのだ。横方向はともかく部分的な縦方向の捩れは、なんだ? いずれも形が違いずらりと並ぶ。
「ネェイジル・アムジィルク・フェノメノン」
男の言葉はそう聞こえた。
「これがメイヤーズ・ハウスやスレイド・ホールなどとは違うところさ」
そう説明した時、少女が悲鳴を上げた。半透明になりぐにゃりと横に縦にと捩れはじめた。
「来た! 逃げろ」
叫び遁走する男を慌てて追う。
振り返ると少女は無気味にひとり踊っていた。
後で知ったが、やや霊感の強い者は避雷針の代わりになるそうだ。妹がこうなった理由は分かった。あの少女もあのままで、生きているのだろう。
おしまい
ふらっと、瀨川です。
他サイトのタイトル競作に瀨川潮♭名義で出展した旧作品です。やや改稿しています。
なかなかしんどいタイトルだったような記憶があります。
特に「レ」をどうするか。
あまり気にする必要ないかな、とか思いつつも翻訳という形で処理しました。