23
23話を投稿します。
目が覚めたのは、昼を少し過ぎた頃だった。
俺がちっとも起きてこないのを見かけてミーアが起こしにきた。
皆既に起きているらしく、さすがに昼食には顔を出した方が良いだろう。
「ガジカは大丈夫なのか?もう起きているんだろう?」
俺がそう言うと、ミーアは困ったような顔をした。
「それが、起きてはいるんですけど部屋に引きこもってしまって、話しかけたらしばらく一人にしてほしいと言われました。」
「そうか。」
ガジカも割り切れないところがあるんだろう。
自分の敵に囲まれているようなものなのだ。
今すぐ暴れ出さないだけ、カジカは凄いと思った。
モウラは昨日からどこかに行っているみたいで、戻ってきていないみたいだ。
「おはよう。よく眠れたか?」
「ああ、少し寝過ぎたようだ。」
ミーアに案内されて食堂らしきところに行く。
そこには既にカイトとウルメスがいた。
挨拶をしてきたカイトは二日酔いの気配もなく、目の前の料理を食べている。
パッと見たところ、人族と魔族で食べるものの差はあまりないようだ。
変なものを食わされたらどうしようと思っていた俺は、ほっと息をついた。
いつの間にかいなくなっていたウルメスがどうぞと言って、目の前に料理を置いてくれる。
料理についてカイトに聞いてみる。
「俺は魔族の食事しか知らないが、魔族と人族の食事はあまり変わらないぞ。中には虫とかを好んで食べる奴もいるけどな。しかもここにも人族が住んでるから、人族にしかなかった料理も結構広まってるぞ。」
「ここに人族がいるのか?」
「数は少ないけどな。」
カイト曰く、ここには100人近い人族が住んでいるらしい。
その人族の大体の人は人族の国の方で魔族と仲良くなってこちらに来た物好きらしい。
その他に、何かしらの事情を抱えてこちらに来た人もいるらしいが。
「魔族は人族を嫌っているんじゃないか?」
人族が魔族を恨むように、魔族だって人族に恨みはあるのではないだろうか。
モウラのように家族を殺されたような人たちは特に。
「う~ん、どうだろうな。人族領と魔族領の境にいる奴らは結構嫌っている奴もいるんじゃないか?でも、ここは結構人族の国から離れているからな。基本的に魔族は集団より個々を見て生きてきた奴らだから、その人の人柄が悪くなければ嫌う奴はほとんどいないぞ。ぶっちゃけ魔族の人達は外見をあまり気にしないから、人族のことだって角とかがない特徴の少ない魔族、ってな位にしか見てないと思うな。気になるなら町に降りてみればいい。いきなり危害を加えられることはまずないから大丈夫だ。」
「魔族って寛容なんだな。」
「まあな。けど、魔族は危害を加えたりする奴に対しては一切の容赦はないから、一応気をつけろよ。」
「わかった。」
俺はそんなことをしないと思うが、問題はガジカだ。
今は部屋にいるからいいが、出てきたときに暴れたら大変だ。
少ししたら話をしておくべきかもしれない。
「あの、カイトさん。私達泊めて貰って、ご飯まで頂いているんですけど、ご迷惑じゃないですか?」
さっきまで出された料理を小さい口で一生懸命食べていたミーアが、恐る恐るといった風にカイトに尋ねた。
確かに、なし崩し的にお世話になっている状況で申し訳ない。
「別に構わない。てか、いつまでも滞在していて欲しいところだな。ここにも人族は住んでいるけど、皆世帯持ちだし、あんま話しする機会がないから人族の友達が欲しかったところだ。迷惑じゃなかったらしばらくいてくれ。」
カイトの言葉はありがたかった。
実際今の状況が把握出来ていないため、行動しようがなかったのだ。
「それに昨日話をして俺がウォルスを鍛えることにしたから。なっ?」
そう言えばそうだった。
カイトが俺に協力して、ケンイチを倒すという話。
「あ、ああ。」
昨日の考え事を思い出してしまった俺は、なんだか煮え切らないような返事をしてしまった。
「何だよ、ビビってんのか?大丈夫、俺が優しく指導してやるからな。」
そう言ってニカッと笑ったカイトに対して、非常に申し訳ない気持ちになった。
「あの、私も鍛えていただけませんか。私も強くなりたいです。」
ミーアも強くなるつもりのようだ。
たぶん魔族領から人族領に移動するのに、ある程度強さがなければ帰ることは出来ないだろう。
そう言った意味でも、ミーアが強くなりたいというのはいいことだと思った。
「その任務、このウルメスが承りました。」
そう言って、右手をおでこにあてて敬礼するウルメス。
なんていうか全く侍女らしくない。
「侍女ではなくメイドです。」
俺を見てそう言うメイド。
ついに心まで読まれた。
何か違う世界から来たカイトより、この人の方がよっぽど謎だと思う。
「ウルメスは魔法が得意だからちょうどいいな。じゃあウルメスはミーアに魔法を教えてやってくれ。」
「イェス、サー。」
この人は一体何処に向っているのだろう……。
カイトを見ると、呆れたような顔で笑っていた。




