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19話を投稿します。

「お前がウォルス……でいいんだよな。」


「そうだ。」


体を起こして今度は胡坐をかいた魔王に俺は返事をする。

魔王とウルメスの様子を見ていたら馬鹿馬鹿しくなったので、敬語はやめた。

けして面倒臭くなった訳じゃ無い。


魔王ははっきり言って魔王らしい見た目ではない。

身長は俺より少し大きくて、顔もかっこいいのだろうが、なんかやる気が感じられない。

今も寝癖のついたショートの黒髪をガシガシとかいている。


「お互いの名前が分かったところで、とりあえず状況を整理しようか。お前はいきなり城の庭に現れたわけだが、何でそうなったか心当たりはあるか?ミーアにはさっき聞いたからウォルスの意見が欲しい。」


いきなりだらけた雰囲気から真面目になる魔王。

少し魔王の威厳らしいものが出てきた。

とりあえずここに来るまでのことを思い返してみる。

だが、割れるような頭痛とめまいでパニックに陥っていた俺にわかることなどほとんどなかった。


「そういえば声が聞こえたような気がしたな……。」


「声か。どんなことを言っていた?」


俺がぼそっと呟いた言葉を魔王が拾い、質問してくる。

たぶんあの声がしてから頭痛とめまいが始まったような気がする。

空耳かと思っていたが、考えてみれば確かに聞こえていた。


「面白いとか。転移者……?が迷惑とか。プレゼントがどうとか言っていた気がする。」


「それは本当か?じゃあ、ちょっと待っててくれ。」


魔王はそう言うと、俺の方に目を向けた。


「ステータス。」


さらに訳の分からない言葉を言うと、目を閉じた。

そしてしばらく沈黙が訪れた。


俺はこの空気に耐えられず、視線を動かす。

チラリと玉座を見ると、すうすうと寝息を立てるウルメスがいた。

まだここに来てから5分も経っていませんけどー。

メイドってそんなんでいいんですかー。


俺は駄メイドから視線を逸らし、ミーアを見る。

ミーアもこっちを向いていたようで、ばっちりと目があった。

にこっと可愛い笑みを返される。和んだ。


「おい、こっちを向け。」


魔王は既に目を開けていたらしく、ジト目でこっちを見ていた。

小声でイチャイチャしてんじゃねーぞ、とか聞こえる。


「あくまで推測ではあるが、お前らがここに転移してきた原因がわかったぞ。」


魔王はそう言うと、ふぅ、と一息入れる。


「結論から言わせてもらうと、糞神の仕業だな。」


「え、神?」


俺とミーアは同時に言葉を漏らした。

ウルメスは寝ている。


「違う、糞神だ。」


そう言う魔王は若干イライラしているように見えた。


「糞神のことを説明するには色々教えなきゃいけないことがあるんだが、とりあえず言わせてもらえば奴は俺を勝手にこの世界に連れてきた張本人だ。」


いきなり何を言い出すんだこの魔王は。


「この世界に連れてきたってどういうことだよ?世界?違う国ってことか?わけわからん。」


魔王は俺の様子を見て溜め息をついた。


「はぁ、やっぱり人間の方にも世界っていう概念はないのか……。まあ別にそこまで詳しくわからなくてもいい。違う世界っていうのは国とかそんな括りじゃなくて、なんつーか、時間の流れとか、いろいろなものが違う、ここに暮らしている誰もが知らない場所って感じのものだ。大きな違いだと、この世界には魔法ってものが存在しているが、俺の世界には魔法は存在していない、とかだな。」


「あ、ああ……。」


俺はほとんど理解できなかった。

隣のミーアもわかってなさそうな顔をしている。


「つ、つまり、俺達の全く知らないところから来たってことでいいのか?」


「……とりあえずそれでいいや。やっぱ説明って難しいな。」


魔王は説明するのを諦めたようだ。


「まあ大事なのはそこじゃなくて、俺をこの世界に連れてきた糞神が、お前らにいたずらをしてここまでとばしたってとこだ。ウォルスが聞いた声はたぶん糞神の声で間違いないだろう。で、プレゼントっていうのはスキルのことだろう。」


「スキルってなんだ?」


「はぁ、マジか。やっぱりスキルもわからねーのか。」


魔王はそう言うと頭を抱えた。


「例えばだ。お前の知り合いの中に、夜でも視界がはっきりしている奴とか、細腕で身体強化の魔法を使ってなくてもめちゃくちゃ力のある奴とかいなかったか?」


言われてみるとそんな奴がいたな。

ゴリマッチョのランドの嫁とか細い人だったのに、簡単にランドの胸ぐら掴んで持ち上げてたからきっとそうなんだろう。


「たぶんいた気がする。」


「そうか。その夜中でも視界がはっきりしている奴は暗視というスキルを持っていて、力のあるやつは剛力もしくは怪力ってスキルを持っているんだ。つーわけでその人の優れたところを表したものがスキルと呼ばれるものだ。何となくわかったか?」


「ああ、長所を表したものだな。」


「長所とは限らないが、そんなところだ。で、たぶんウォルスは糞神からスキルを貰っている。」


「人の優れたところを貰えるのか?おかしくないか、それ?」


「そこんところの概念は俺にもよくわからない。俺の世界にはスキルなんてなかったしな。けど、出来るもんは出来る。ウォルス、目をつむりステータスと唱えてみてくれ。」


魔王の言うとおりに目をつむる。


「ステータス。」


俺がそう唱えた瞬間、突然真っ暗だった視界に文字が現れた。


********************

ウォルス 18歳 男 


最大魔力量85

内魔力20  外魔力3


スキル

剣技(4)、体術(3)

自動翻訳、ステータス、適正、

********************


驚いてバッと目を開ける。

しかしまだ文字は出ているようで、とても邪魔だ。


「何だこの文字は。消えないぞ。」


「消したかったら、もういちどステータスと言え。」


「ステータス。」


言われたとおりに唱える。

すると目の前の文字は消え去った。


「消えたぞ。何なんだこれは。」


「ああ、今のがステータスというスキルだ。このスキルは自分や他の人の名前、性別、年齢、最大魔力量、内魔力、外魔力、そしてスキルを見ることの出来るものだ。人に使いたいときはその人を見て唱えればいい。目を閉じさせたのは、見易くするだけの為だから目を開けたままでもできるぞ。」


そうなのか。じゃあそれなら。


「ステータス。」


********************

ミーア 16歳 女


最大魔力量358

内魔力8  外魔力67


スキル

治癒補正、地獄耳

********************


「じ、地獄耳……。」


「あ~、なんで私の小さい頃のあだ名をっ。うぅ~。」


ミーアはそう言って俺の方を睨みつけてくる。

目には溢れそうなばかりの涙が溜まっていた。


「わ、悪い。別に悪口を言ったつもりじゃないんだ。ほ、ほら森の中でもミーアは敵に気付くのが早かっただろ?だからこのスキルのおかげなんだなーっと思って……。」


ミーアは俺の弁解を疑わし気に聞いていたが、やがて零れそうな涙を袖で拭うと、わかりましたよぅ、そういうことにしておきます。と言って許してくれた。


「ちなみにこのスキルはかなりのプライバシーの侵害になる。」


「言うのが遅いぞ。」


今度は俺が魔王をジト目で見る番だった。

しかし魔王はそんなこと気にする様子もなく、なるほどプライバシーって言葉は通じるのか。とか言っていた。



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