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17話を投稿します。


人間は自分と異なるものを嫌い、排除しようとする生き物である。

肌の色、髪の色、目の色、姿形、そして思想まで全て受け入れられたなら、この世界の生き物は手を取り合って生きていくことが出来るのかもしれない。








「ん……、ここは何処だ?」


俺が目を覚ました場所は落ち着いた雰囲気の大きな部屋の中だった。

周りには高そうな飾りが施されており、近くにあるランプが優しい光を放っていた。

窓の方を見ると、月明かりが差し込んでいたため今は夜だと分かる。


柔らかなベッドから降り、少し距離のあるドアの方へ歩いて行く。

そして細やかな装飾が施されているドアを開けた。


「うひゃあ。」


「うおっ?」


開けた瞬間に聞こえてきた声に少し驚き、ドアを閉めてしまった。

気を取り直してもう一度ドアを開く。

目の前にはお盆を持ったミーアがいた。


「ウォルスさん起きたんですね。」


「ああ、今さっきだけどな。」


目の前で笑みを浮かべるミーアを見て、少しほっとしたような気分になった。


「さっ、中に入ってください。ご飯を持ってきました。」


さっき驚いてご飯を落としそうになっちゃったんですよー、と言うミーアに促されながら再び部屋に戻される。

そして、部屋の隅の方にあった小さな机に座った。

座りながらミーアが机にご飯を並べるのを待つ。

ミーアは自分の分も持ってきたようで、並べ終わると対面の席に座った。


「なあ、ここは何処なんだ?」


俺の問いにミーアは少し考えるような仕草を見せた後、口を開いた。


「うーん……、私もあまりわからないんですけど、モウラさんに教えてもらった話だとここは魔族の住む所で、この建物は魔王の城らしいですよ?」


「は……?」


俺は開いた口が塞がらなかった。

魔王の城?

部屋を見る限り、てっきりどこかの貴族にでも拾われたのかと思っていた。

そもそも森にいたのに貴族に拾われるのもおかしな話ではあるが。


「じゃあそろそろ食べましょう。いただきます。」


そう言って普通にご飯を食べ始めるミーア。


「な、なあ、ここは大丈夫なのか?」


少し震える声でミーアに問いかける。


「さあ?」


こてん、と首を傾げてミーアはそう言った。


「さあってなんだよ。魔王って魔族の王様ってことだろ?やばいんじゃないのか?」


慌てる俺をきょとんとした目で見ているミーアは、何か思いついたのかにっこりと笑った。


「大丈夫です。だって魔王は人間でしたから。」


「は?」


あまりにも予想外な言葉に、俺は再び開いた口が塞がらなかった。








ミーアは食事をとりながら、俺が気絶した後の話をしてくれた。

森の中で俺が突然頭を抱え、叫びだしたこと。

心配して駆けつけたところで現れた魔法陣。

目の前が真っ白になり、気付いたらこの城の庭にいたそうだ。

そこに魔族がたくさん現れ囲まれたが、モウラが話をしてくれて城の中に入れてもらったらしい。


少し問題だったのがガジカで、最初は呆然と立っていただけだったらしいのだが、城の中に入るときに暴れようとしたのでミーアとモウラで押さえつけたらしい。

で、今は違う部屋で眠っているとのことだ。


「二人でだってガジカを押さえつけるのは大変だろ。どうやって落ち着かせたんだ?」


「なんか魔族の方が魔王さんを呼んできてくれて、魔王さんが気絶させたんで大丈夫でしたよ。」


「話を聞いている限りだと、とても大丈夫じゃない感じなんだけどな……。」


「そうですよね。私も魔族の人達に囲まれた時は目が回ってしまったんですけど、モウラさんが落ち着かせてくれましたし、魔族は知能があるんだからって自分に言い聞かせたりとかして何とかなりました。それに、ウォルスさんのことが心配でしたからしっかりしなきゃって……。」


「わるい、迷惑かけたな。」


「いえいえ、本当に無事でよかったです……本当に……。」


とても暖かい空気が部屋に流れているような気がした。

目の前のミーアは少し俯きがちだ。

本当に俺のことを心配してくれたんだろう。





コンコン、とドアを叩く音がした。


「ウルメスでございます。魔王様がお呼びですので、ご同行願います。入ってよろしいでしょうか。」


「はい、だいじょうぶです。」


先程まで俯いていたミーアが返事をする。

静かにドアを開いて現れたのは、フリフリの服を着た青い肌の女性だった。


「む、何やら甘い空気が漂っています。すんすん。」


入ってきた女性はいきなり部屋の匂いを嗅いだと思ったら、俺の目の前に来た。

そして目を合わせると、口を開いた。


「爆発しろ。」


「は?」


こうして俺はポカーンとした状態で、ミーアと共に連れて行かれたのだった。



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