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前回の投稿から1か月以上たってしまいました。

申し訳ありません。

今回は久しぶりなので少し長めにしました。

「うー、まだ頭が痛いです。」


「慣れないことをするからだろ。」


次の日も俺とミーアはコーザの森に来ていた。

宿を出た時間が遅かったので、今はもう昼くらいになっている。

隣を歩くミーアはさっきからずっと唸っており、幾分か顔色が悪いように見えた。



「やっぱり宿で休んでいればよかったんじゃないか。」


「うー、大丈夫です。宿で待っている方が嫌です。」


「そうか。やばくなったら言えよ。」


明らかに二日酔いのミーアに宿で休むように言ったが、自分も出かけると言って聞かず、結局着いて来た。

こんな様子でも、既に2匹のバッシュボアを討伐している。


「そういえば、ガジカさんいなかったですね。」


「そうだな。既に出かけていたらしい。もしかしたらまたここで会うかもしれないな。」


宿のおばさんに聞いたところガジカは既に出かけたと言っていた。

俺が起きたのが結構遅かったからかもしれないが、昨日のガジカの話を聴く限り、毎日朝早くから出かけているのではないだろうか。

ガジカにとってコーザの森の魔物は敵のようなものだから。


「あの、ウォルグさん。今何か聞こえませんでしたか?」


バッシュボアを探しながら歩いていると、突然ミーアがそんなことを言った。それを聞いて、先ほどよりも集中して辺りに耳を澄ます。


「……何も聞こえ「きゃあぁぁぁぁぁー。」」


はっきりと聞こえた悲鳴に、俺とミーアは顔を見合わせる。


「行くぞ。」


「はいっ。」


俺とミーアは悲鳴の聞こえた方向に走り出した。








「……どういう状況だよ、これは。」


悲鳴の聞こえた方向に走って行った俺が見た光景は、想像を絶するものだった。

目の前には10匹近くのバッシュボアがおり、そのバッシュボアに囲まれるように5歳くらいの女の子がいた。


そして、


「ムウン!!」


手に持つ大剣によって、女の子に向かってくるバッシュボアを真っ二つに両断。さらに違うバッシュボアの体当たりを大剣を縦にすることで、真正面から受け止め、逆に跳ね返す、筋肉隆々の緑色の戦士がいた。



「あれはゴブリンなのか?」


「わからないです。ど、どっちを倒せばいいんですか。」


状況は良くわからないが、ゴブリン……のような魔物が女の子を守っているように見える。


「とりあえずバッシュボアを倒そう。」


「わかりました。」


俺とミーアは周りにいるバッシュボア目掛けて攻撃をする。そして俺とミーアが一匹ずつ倒したところで、辺りを見渡すと、既に他のバッシュボアは息絶えていた。


俺は生存しているバッシュボアがいないことを確認すると、女の子の方へ向かっていく。


女の子の前にいるゴブリンらしき魔物は俺達が近づいて来たことに気付くと、大剣を構え、女の子の前に立ちふさがった。

女の子は魔物の後ろで声も出せずに震えている。


「おい、女の子を離せ。」


「ム、キサマラガアンゼンナモノデアルカカクニンデキナイト、コノムスメヲソチラニワタスコトハデキナイ。」


俺は目の前のゴブリンらしき魔物が言葉を話したことに驚いた。

しかし、言葉は通じているようだが、女の子を解放するつもりはないようだ。


「何だと?ゴブリンがその娘をどうするつもりだ。」


「ドウモコウモナイ。ヒメイガキコエタカラタスケタマデダ。」


「そうなのか?俺達も悲鳴が聞こえたから助けに来たんだ。だからその女の子をこちらに引き渡してくれないか?」


「コトワル。キサマラガゼンニンデアルコトヲカクニンデキテイナイ。」


「何だと?」


「私たちは善人です。」


俺の後ろからミーアも説得する。


「ホウ?ダガホントウニソウデアルカカクニンデキルスベハナイノダロウ?シンヨウデキナイ。」


目の前の魔物は本当に強情な奴だった。

このまま女の子を保護しなくとも女の子に怪我はないのかもしれない思うが、やはり保護して村に返すべきである。

大体魔物が村に入って女の子を親に返すことが出来るわけがないじゃないか。

いや、そもそも魔物が本当に人を助けるのだろうか。


「悪いがそう言うことなら、力ずくで行かせてもらうぞ。」


俺は脅しのつもりで目の前の魔物に剣を向けた。


「……フン、カカッテコイ。チカラデシカカイケツデキナイオロカモノヨ。カエリウチニシテクレルワ。」


俺は挑発に乗せられ、構えた剣で魔物に切りかかった。


「ヌルイナ。」


「ぐっ……。」


単純に振り下ろされた俺の剣は、下からすくい上げられるように振られた大剣によって弾き飛ばされた。

弾き飛ばされた勢いを殺し切れず、俺の体まで宙に飛ばされた。

俺は空中で体制を立て直し、地面に着地した。


目の前の魔物は間違いなく俺よりも上の存在だった。

大剣を使用しているはずなのに、剣速は俺と同じか、それよりも速い。

しかも、空中で無防備な俺に一切追撃をせず、体制を立て直す俺を余裕そうに見ていた。


「なめるなよ。」


既にかけている身体強化の魔法にさらに魔力を込める。

身体強化の魔法は魔力の質が大きく関係しているが、魔力の量もわずかに関係している。

よって、消費する魔力は多くなるが、多少なりとも動くスピードは速くなる。


今度はフェイントを掛けつつ、魔物の身側にまわる。

そして、魔物の上体に視線を合わせたまま、足目掛けて剣を横なぎにした。

魔物は少し驚いた顔を見せるが、狙われた足を守るように大剣で弾く。

今度は大剣も少し弾かれた。

俺は弾かれた勢いを利用、コマのように回転すると、今度は首目掛けて剣を振るった。


「何だと?」


俺の剣は振るう前に止まっていた。

俺の手首が大きな緑色の手で捕まれ、眼前には大きな魔物の鋭い目があった。

そして、魔物は俺を掴んでいる左手とは逆の手を大きく振りかぶった。


強い衝撃。

咄嗟に左腕で顔を庇ったが、庇った左腕ごと俺の顔面にぶち当たった。

視界がぐらりと歪み、目の前の魔物の緑色の顔が伸びたり縮んだりして見える。

しかも、俺はまだ右腕を掴まれた状態で吹き飛ぶことも出来ないでいる。

左腕は砕け、だらりと下がったまま上げることが出来ない。

少し離れたところでミーアの声がする。


魔物は再び腕を後ろに引いた。

これを受ければ、俺は死ぬだろう。

そんな予感が頭を過ぎり、俺は足を使って魔物の体を蹴るが、魔物の強靭な体にはほとんど効果が無いように見えた。

魔物は俺の微々たる抵抗も気に留めず、振りかぶった腕を振り降ろす。


「ム、マホウカ?」


俺に二度目の衝撃は訪れなかった。

魔物の振りかぶった腕は光る輪によって魔物の首と一緒に縛られていた。


「ウォルスさんに何するんですかっ!」


目に怒りを込めたミーアは杖の先から光弾を大量に生み出し、魔物へ飛ばす。

魔物は顔を守るために俺を掴んでいた左腕を離し、俺を放り投げた。

俺はよろ着いた足で移動し、剣を取ると魔物に向かって切りかかった。


「緑のおじちゃんをいじめないでっ!」


切りかかろうとした目の前に、突如女の子が現れ、俺は剣を止めてしまう。

ミーアもその声に驚いたのか、放つ前の光弾を消してしまった。

魔物も驚いた顔で女の子を見ている。


「緑のおじちゃんをいじめないでっ!」


クリッとした瞳に涙を溜めた女の子は、俺を睨みつけると大きな声でもう一度そう言った。

俺は剣を下ろし、魔物の方を見る。

魔物は2対1で戦い、右腕と首を光で繋がれ、今にも切りかかられそうになっていた。

傍から見ればいじめているように見えなくもない。



しかし、いじめられていたのは俺の方だ、と思わずにはいられなかった。

しかも、フウンッとか言って軽々と光の輪を引きちぎる魔物を見て、俺はもう一度そう思わざるを得なかった。



感想を書いてくれた方ありがとうございます。

引き続き頑張って投稿していきたいと思います。

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