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13話を投稿します。

「んじゃあ乾杯だ。」


ガジカの声に合わせて杯を打ち付ける。

杯を煽ると、エールで胃の中がジワリと熱くなった。

隣ではミーアがちびちびとジュースを飲んでいる。


「お、小僧なかなかいけるじゃねーか。おい、ばばあ。鼻はまだ出てこねぇのか。」


「誰がばばあだ、この糞っ小僧。さっき持ってきたばっかりだろう、まだ時間がかかるから大人しく待ってな。」


今俺達は穴熊亭の食堂でお酒を飲んでいる。

ガジカはよくここで酒を飲んでいるらしく、宿のおばさんと仲が良さそうであった。


「ふっ、糞っ小僧。」


「あ~ん、小僧てめー笑いやがったなぁ?」


「いやいや。」


俺は手をひらひらさせて否定する。


「こっんの野郎、表に出やがれ。」


「うるさいよっ、この馬鹿たれが。」


「あいた。やりやがったな、ばばあ。」


「だーれがばばあだ。」


「あいたっ。」


俺は目の前もガジカとおばさんのやりとりを見て笑みを浮かべずにはいられなかった。

俺の両親は元気でやっているだろうか。

この二人を見ていると、少しだけあの集落に戻りたくなった。





鼻の煮物は本当においしかった。

ガジカ曰くここの親父が作るやつが一番美味いらしい。

さすがだ親父さん。


それはともかく、



「ウォルスさぁーん。」



さっきからミーアの様子がおかしい。

顔が真っ赤になり、俺の名前ばかり連呼している。

さすがにとろんとした目で見られると、俺も少し照れるから止めて欲しいのだが。

というか、ミーアはお酒を飲んでないんじゃないのか?

そう思ってミーアの目の前にある杯をとり、飲んでみた。



……うん、エールだ。


「あー、うぉるすさぁーん、かんせつきしゅでしゅよー。きしゅしゅるならそれじゃなくてーわt%@k*#$ぅ……。」


ミーアはそれだけ言うと、テーブルに突っ伏した。


「なんだーもう嬢ちゃんは脱落かぁ?」


そう言う目の前のガジカも顔が赤くなっている。

たぶん俺の顔も赤くなっているだろう。


「ミーアが酒を飲んでいたんだが。」


「あー、なんか途中から飲んでたぞぉ。結構飲んでたんじゃないかぁ?がーっはっはっは。」


「知ってたんなら止めろよ。」


「止めねえよ。酒を飲んでる中に一人でしらふってのはつまらないもんだ。嬢ちゃんだって混ざりたかったんだろうよ。」


「……そうか。」


ガジカにそんなことを言われて、何も言い返せなくなった。

確かに、周りが楽しんでいるのに自分だけが入れないのは辛い。

俺はそう思いながら隣で寝ているミーアの頭を優しく撫でた。


「ところでよ、お前は魔物ってのをどう思ってんだ?単なる仕事の対象か?何か恨みの対象か?その若さでAランクにまでなったんだろ。何かあるんじゃないのか?」


先程まで陽気だったガジカの雰囲気が変わったのを感じた。


「魔物か……、そういえば俺はそんなことを考えたことがなかったな。ただ強くなるために魔物を狩ってきた気はするが、良く考えると違うのかもしれない。」


「ほう?」


俺の言葉にガジカは目を細めた。


「俺の幼馴染の親父が殺されたんだ。だけど、俺はそのとき魔物を憎いとは思わなかった。けどその後、幼馴染から冒険者になるって言われた時、俺はたぶんその原因である魔物を憎いと思っていたのかもしれない。俺達の世界から、幼馴染を連れ出すきっかけを作った魔物を。」


たぶんそうだ。

もしあの時ユイナの親父が魔物に殺されなかったら、俺は今もあの集落でユイナと二人の時間を過ごしていたかもしれない。


「そうか……。小僧にもいろいろあったんだな。」


ガジカは息を大きく吸うと言葉を続けた。


「俺にはよ、4人の子分みたいな奴らがいたんだ。俺がまだもう少し若かった頃だけどな。生意気な奴らだったぜ。たいして強くもないくせに、俺達は冒険者だから町の人を助けるのが俺達の役目だ、とか言ってな。」


「いい子分を持ったんだな。」


「ああ、いい奴らだった。ガジカさん、ガジカさんて俺を慕ってくれる奴らが可愛かったよ。でだ、あるときコーザの森で魔物が大量発生した。それでこの町の脅威になるかもしれないってことで討伐クエストが出されたんだ。けどその時町には冒険者が少なかった。しかもその時俺も違うクエストで出払ってた。それで人が足りないからって、あいつらも一緒に討伐に出かけちまった。自分たちから行きたいって言ったんだとよ。それで、」


ガジカはそこまで言うと、杯を煽った。

杯を置いた手が震えていた。


「全員死んじまった……。」


ギリッと歯を噛み締める音が聞こえた。


「全員無残な死に方だった。運ばれてきた遺体はほとんど誰だかわからないくらいだった。遺体を見た時俺は後悔した。もしあの時俺がいれば、あいつらがあんなことにはならなかったかもしれない。少なくともランクの足りていないあいつらを連れて行かなければ、あいつらは死ぬことはなかったんだ。俺はあいつらを殺した魔物が憎い。あの時いなかった俺が憎い。」


「だから今日の朝のように、若い冒険者を脅すような真似をしたのか。」


大男の目から涙が落ちた気がした。


「そうだ。二度とあいつらの二の舞を出さないために。ランクの低い奴らはそれに合ったクエストを受けるべきなんだ。あとは俺があの森にいる憎き魔物をすべて殺してやると決めたんだ。」


もう大男の目に涙は見られなかった。

その目にあったのは、涙をも蒸発させるほどの怒り。

だがそれもすぐに消えた。


「っと、つまらん話を聴かせて悪かったな。さあ、飲みなそう。今夜は小僧をつぶすまで飲むのを止めないぞ。がーっはっはっは。」





その後、しばらくしてガジカはテーブルに突っ伏した。

そして、そのまま大いびきをかき始めた。


「そろそろ、寝なさいな。こいつは私が見ておくから大丈夫。」


「そうする、面倒を掛けたな。」


俺はテーブルで寝ていたミーアを担ぎ上げ、階段の方へと歩いて行った。

そして、ベッドにミーアを寝かせると、自分も隣のベッド入り、眠りに着いた。


俺達が寝た後の朝方、ガジカは目を覚ます。

そして荷物をまとめると、食道のカウンターにお金を置き、玄関の方へと歩き出した。


「もう行くのかい。無理するんじゃないよ。ほれっ。」


とっさに後ろから飛んできた包みを受け取る。


「ちゃんと食べるんだよ。」


「やっぱりばばあには敵わねえな。ありがとう。行ってくる。」


ガジカはそう言うと、外へと出て行った。


「いってきな。馬鹿息子。」


おばさんはそれを優しい目つきで見送った。


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