初回トーナメント編~終幕~
トーナメントの試合も残りわずかとなった。
澪は不戦敗で終わる。
そしてトーナメントは一週間続いていた。
決勝戦は神無月和対如月唯の試合。
最強もの同士の戦いはおよそ2時間ほど続いていたらしい。
勝者は神無月和となり第354回目のトーナメントが幕を閉じた。
俺は重症だったためヒーリングルームにて一週間の休息が与えられた。他にも大勢の連中がヒーリングルームで重症の為、休息していて、医療班が治療している。
今、俺の隣には澪が座っていてくれた。
澪は俺を気遣ってか何も話さないままでいた。トーナメント中の一週間もの間。こっちとしては少しぐらい慰めてほしい気分だ。だが仕方がない。こんな無様に負けた俺にかける言葉などないだろう。
それにもう俺にはやる気というのも無くなっているしな。
あんな強敵、俺にどうしろと言うんだ。勝てるわけがない。あの時少しでもワクワクしていた俺を殴りたい。所詮無駄だったってことか。もういいや。
「ねぇ。あきら?」
そんなことを考えていた俺に澪は一週間ぶりにようやく俺に声をかけてきた。
俺は何も考えずに何かと尋ねる。
「大丈夫?」
-大丈夫?-そんな言葉を今更ながらに言うとはな。驚いた。大丈夫なわけがない。試合にも出ていないくせに。心も体もボロボロにされた俺の身にもなってみろよ。
「あんまり大丈夫じゃないな。」
思っていたことを言えるわけもないので丁度いい台詞を言ってみた。
「そうだよね…ごめん」
「いや…」
澪がなぜ謝ったかは知らんがこのあとずっと沈黙が続いた。
「なあ澪、もういいんじゃないか?」
俺は何故こんな事を言っているんだ。そんな状況でもないはずなのだが。咄嗟にでた台詞だった。
その台詞を聞くと澪は俯いていた顔をこちらに向けた。
「こんな状態の俺が何を言っても全然説得力が無いのかも知れないが、そろそろ言わないといけないと思う。」
「何?」
「自分でも気づいているだろ?何故お前はそんなに強いのに強さを隠しているんだ?何か理由があるんだろ?」
「……やっぱり気づいてたんだ。」
「ああ。わかるさ。なんとなくだったけどな。」
「そっか。でもごめん。まだ話せない。まだ……ね…」
「そうか。悪いな聞いて」
俺は澪とは反対側を向いてそう言った。何故か顔をあわせずらかったからな。
「ううん…」
このあとしばらく沈黙が続いた。俺にとっては嫌な沈黙だった。空気が重く今にも押し潰されそうなくらいに。それと神無月との戦いで覚えたあの恐怖感。絶対的、圧倒的な力の差を思い知らされた。その記憶をふと思い出してしまい顔が青ざめた。
「…うっ……」
思わず声を出してしまった。澪はそんな俺に気づき声をかけた。
「大丈夫っ!?」
「ああ。大丈夫だよ…。いや大丈夫じゃないかもな……。さっきも言ったか…ははっ…。」
俺は最後の方は重たい苦笑いをしていた。
「あきら…」
そしてまた沈黙する。だがすぐに澪は俺に優しく語り始めた。
「ねぇ…あきら?」
凄く優しくとても安心するような声でそう言った。
「あのときの話、覚えてる?」
「あのときの話?」
「ほら、トーナメント表が貼出された放課後の事」
「ああ。あの時か」
俺はその時の光景を思い出し想像した。
確かあれは屋上だったか。
第7話初回トーナメント編~終幕~