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星の巫女  作者: 赦縷々
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第二話 これが異世界

主人公がほとんど喋りませんがあまり独り言を呟かないだけで、普段は喋ります。


 大声を出したことによって少し落ち着いた俺はここが見ず知らずの誰かの家だったことを思い出した。

 ここにあるベッドは二つ、一つはこの女の子の物だろう。だとするともう一人、この子と一緒に暮らしていた保護者的な人がいるはずだ。


 早く外に出てここがどんな世界なのか見てみたいが、この子の体を勝手に使って保護者に迷惑をかける訳にはいかない。とりあえず会っておこう。

 あれほどの奇声を上げたんだ、すぐに気付いてここに来るだろう。


 そう思い椅子に座って待つことにした。


 ……のだが誰も来る気配がない。しばらく待ってみたが足音一つしない。

 あれだけの奇声を上げて誰も来ないとはどうなっているんだ?保護者じゃなくても近所の人が来そうなのだが……。近くに人が居ないのだろうか?


「……もういいか」


 いい加減待つのが嫌になってしまった。せっかく異世界に来れたんだ。何時までもここに居続けるなんて楽しくないじゃないか。

 どうせ近くに人が居ないならば誰かに話しかけられたり、何か問題を起こしたりもないだろう。

 物を壊したり、服を汚したりしなければ大丈夫だろう。


 そう思い、俺は席を立ち扉の前に行った。

 扉には閂が付いている、この世界には鍵はないのだろうか?この世界の防犯に若干の不安を覚えつつ閂を抜き、扉を開くと……。


 そこは林の中だった。


 林の真ん中のぽっかりと空いた平地にこの小屋は建てられているみたいだ。

 そして小屋の前に恐らくこの林を抜けるためと思われる林道があった。人が四人並んで歩けるぐらいの幅がある。


 これならあの声に誰も反応しないのも頷ける。まず近所が無かった。

 ということは保護者は町まで出かけているのかもしれない。遅くならない内に帰ろう。


 とりあえずそれまではこの異世界を見て回ろう。

 小屋の前で深呼吸し肺いっぱいにこの世界の空気を入れる。自分のいた世界に比べて空気が美味しいように感じる。この世界には空気を汚すものが無いのだろう。


 空を見上げると雲一つない青空に太陽が一つ輝いている。

 異世界でもこの青空は変わらないようだ。


 やばい、凄くわくわくしてきた。

 町に行ってみたいな、どうなっているんだろう?どんな人がいるんだろう?獣人とかエルフとかもいるんだろうか?魔物もいるのかな?魔王とか勇者もいるのかな?魔法もあるのだろうか?


 わくわくしすぎて妄想が暴走状態だ。

 だがまずは周辺探索だな。ゲームでもスタート地点に何かあるし。


 ということで、まずは小屋の周囲を見て回ることにした。

 小屋だと思っていたこの建物は外から見るとログハウスのようだ。正直こんなところに二人も住んでいるということ事態驚きだ。


 小屋改めログハウスの横には牧が積んであり、錆びかけの斧が立てかけられている。

 こういうところに生活感を感じる


 裏に回るとそこには畑があった。家庭菜園のわりにはそこそこ大きい。自給自足しているのだろうか?

 井戸もある、やはり水道はないようだ。しかし、ログハウスの中は蝋燭のものではない灯りがついていた。水道は無いのに電気はあるのだろうか?いや、電線はない。魔法で動いているのかも知れない。後で調べておこう。


 そう思いつつ辺りを見回してみると、畑の向こうに獣道がある。

 これはゲーム的に考えるとこの奥に何か重要なものがあると見た!

 ここは周辺探索が終わってからにしよう。


 ログハウスのもう一方の横側に素早く回りを適当に見回す、花壇があるだけで他は何もない。

 獣道の奥が気になるのでこちら側の探索はそうそうに切り上げる。


「よし、行くか!」


 景気づけに声を上げ獣道に入る。足元はそんなに悪くなく人が何度も通ったもののようだ。これは正直助かる。慣れない体で荒れた道だと転んでしまうかもしれない。女の子の体を傷つける訳にはいかない。


 幾らか進んでみたが道は曲がりくねっていて奥まで見通せない。一体どこまで続いているのだろうか。ゲームだと森の奥に伝説の剣が!っていう展開がありそうだがまさかこの世界に来たばっかりでそんなこともないだろう。


 そんな風に妄想していると急に開けた場所に出た。

 この空間だけ綺麗な円形状に木が生えていない。何か特別な場所っぽい。

 その中心にぽつんと一つ石柱が立っている。


 やばい、凄く興奮してきた。

 これは絶対重要なものだろう。

 石柱に書いてある文字を読めば凄い魔法が使えるとか、神の御導きがあるとか、魔王が復活とか……最後のはいらないな。


 一歩ずつゆっくりと石柱に近づいていく。


 心臓がさっきのように高鳴っている。


 段々と石柱に近づいてきた。


 石柱の表面に何か文字が書かれているのが分かる。


 そして、たどり着いた。


 ……読めない。


 石柱の字は見たこともない字で短い文が書かれていた。

 いや、確かに異世界なのだから言語が違うのは当たり前かもしれないが、こういう時はたまたま一致していたとかあってもいいと思うんだ。


 期待が大きかった分、ショックも大きかった。

 そんな風に落ち込んで目線を下げることで気が付いた。


 石柱の真下に花が添えてあったことに。


 よく見ると石柱の真下は最近何かを埋めたように草が生えておらず、土と枯草が混じっている。短い文章もよく見ると名前を刻んだだけのように見える。花はついさっき添えられたように萎れていない。


 ……つまり、あれか。


 これはお墓なのか。


 二人住んでいたと思わしき家に一人しかおらず、大声を上げても誰も来なかったのは……もう居ないからか。


「……」


 俺は下がっていたテンションをさらに下げながらも手を合わせておいた。

 この世界でも同じことをするとは限らないが、何もしないよりはいいと思って。


 顔を上げ一度戻るかと思うと石柱の裏、来た道の反対側からガサッと音がした。

 一瞬ビクッとしたが、隠れるのは相手に失礼かと思い石柱からひょっこり顔を出すと……目が合った。


 自分の世界では見たこともないような赤い大きな目をした人と。

 さらに言うなら体毛が濃く大きく曲がった鷲鼻で薄汚い布を纏い武装した小人三人と。


 例えるならあれだ、ゴブリンだ。

 ゲームや小説で見たのと見た目は違うが雰囲気はそんな感じだ。


 ……落ち着けゲームの様に襲い掛かってくるとは限らない、まずはコミュニケーションをだな。


 ニコッと、敵意の無いよう微笑んでみた。


 ニヤァッと獲物を見るように笑われた。


 俺は全速力で来た道を引き返した。

 ゴブリンどもは下品な笑い声を上げて追いかけてきた。


 なんで!?ゲームでいうなら初めの村すら出ていない場所だぞ!?

 しかも俺は武器一つ持ってないのに何で魔物が出てくるんだよ!?


 慣れない体で何度も転びそうになった。しかも体は小さいし筋力もなくスピードも出ない。

 しかし相手も小さくそんなに早く走れないのか距離は縮まらなかった。……離れもしないが。


 この体にはそんなに体力もないようだ。息が上がってきた。とりあえずさっきのログハウスだ、あそこまで逃げれればいい。


 必至で逃げると遂にログハウスが見えて来た。

 よっしゃ!後は籠城だ!

 幸い相手はこん棒や錆びて折れた鉈しか持っていなかった。あの装備なら扉は壊されないはず。窓もあったがガラスなんか無く木でできていたし、あの高さなら例え壊されても入ろうとよじ登ってきたところを暖炉にあった火かき棒で叩き落とせばいい。相手も死ぬかもしれないが今はそんなこと言っていると自分が死んでしまいそうだ。


 さっと扉を開き、体を滑り込ませると急いで閉め、閂を差す。そのすぐ後に扉がドンドンと叩かれたがビクともしない。暫くはびくびくしていたがやがて音はしなくなったので少しほっとした。


 それでも心臓はまだバクバク鳴っているし、息は乱れている。

 死ぬかと思った。


 ただの異世界満喫のつもりがまさか魔物に襲われるだなんて……。

 俺が甘かったんだな、小説や漫画のようにうまくいく訳ないんだ。

 死ぬときは死ぬ……世界が変わってもそれは変わらないんだ。むしろ異世界は日本のように安全が保障されているわけでは無いし、こっちのほうがより死が身近なんじゃないだろうか?


 ……帰ろう、俺はここに居てはいけない。

 俺じゃこのままここにいてもすぐに死ぬだろう。

 この女の子は大丈夫だろう。俺と違ってこの世界で暮らしていたんだし、たぶん魔法も使えるだろうから。だってそうだろう?あの墓石はつい最近置かれた物なのに引きずった後なんか無かった。あんな大きな石をこの子が持てるわけない、つまり魔法を使って運んだのだ。

 それに安全になってから近くの町に行けば助けてもらえるだろう。


 ……でも、そんなにうまくいくだろうか?俺が帰った後もゴブリンがこの辺りをウロウロし続けるかもしれないし、この子自体はこの事を知らない。下手したら戻ってすぐ外に出て襲われるかもしれない。

 それにこの子は魔法なんか持ってなくて墓石もここに居ない誰かが運んだのかも知れない。


 もし俺が帰ってこの子が死んでしまったら……。

 それを確認することは出来ないだろうが俺はそのことを悩み続けるだろう。


 ……どうすればいい?俺はこの子を死なせたいわけじゃない。


 悩んでいると再び扉が叩かれだした。

 ビクッとし、扉を見ると細長い穴が開いている。

 何でだ!?あいつらの武器じゃこの扉は……。そこまで考えて思い出した。

 外に斧が置きっぱなしだったことを。

 あの斧は確かに錆びかけていたが、刃の部分はしっかりと手入れしてあった。切れ味は十分だろう。


 このままじゃすぐに壊される!

 そう思うともう迷ってなんていられなかった。

 戻ってから罪悪感に苛まれるかもしれないが生きてなければそれすら出来ない。


 俺は急いでこの子が描いたのであろう魔法陣の中心に入り願った。

 元の世界に帰りたいと。



 ……しかし何も起こらない。相変わらず斧を叩きつける音が聞こえる。

 何でだ!?魂は惹かれあうんじゃなかったのか!?俺が帰りたいと思ってるなら向こうも帰りたいと思うんじゃ……。


 ……冷静に考えれば当たり前のことだ。身近な人が死んでしまって一人になってしまった女の子がこの魔法を使ったんだ。未練なんてないんだろう。俺みたいに遊び半分でこの魔法を使うわけない、帰ろうと思うはずないじゃないか。

 それに本にも書いてあった。移動後の世界に留まろうとして二度目の成功率は低いって。


 ……まずい。帰れない、殺される!


 一際大きな音がしてバッと扉を振り返ると、下半分が破壊された扉からゴブリンが入ってくるところだった。


 俺は慌てて暖炉に立てかけてあった火かき棒を手に取る。

 構えようとするが、火かき棒は予想以上に重く、まともに振り回せそうにない。


 そうしているうちに三匹は俺の逃げ道を塞ぐようにして構えていた。

 顔に下卑た笑みを浮かべて。


 畜生、こいつらは俺で遊んでいるつもりなのだろう。俺がどんなに抵抗しようと軽くいなせる、とそう思っている表情だ。事実そうだろうし。


 こいつらをどうにかしなければ俺に助かる方法はない。

 しかし、俺から向かっていく訳にはいかない。そんなことしてもこんな重い武器じゃ躱されて終わりだ。狙うとすればカウンターだ。それならまだあたる可能性がある。


 じっと相手が攻めてくるのを待つ。

 すると焦れたのかこん棒を持ったゴブリンが近づいてくる。


 ゆっくりとこん棒を振り上げるのを見て火かき棒を持つ手に力を込める。

 まともに振れなくてもいい。叩きつけてそのまま外を目指す!


 ……今だ!


「はぁぁっ!」


 遠心力も使いがむしゃらに叩きつける。

 倒せたかどうかも確認せずにそのままの勢いで扉へ向かう。


 しかし辿り着くことは出来なかった。

 火かき棒を叩きつけたゴブリンに手を掴まれていた。

 叩きつけたはずの腹には傷一つ付いておらずピンピンしていた。


 俺はそのまま床に組み敷かれ馬乗りになられた。

 いつの間にか近づいていたもう一匹に手を頭の上にあげた状態で固定され、もう一匹に足を固定された。


 恐い。頭の中がそれでいっぱいだ。このままこん棒で殴り殺されるのだろうか、それとも斧で頭をかち割られるのだろうか?


 恐怖で声も出ない。そんな俺をゴブリンが下卑た笑みを浮かべながら見下ろしてくる。


 恐怖で目を瞑る。

 胸倉を掴まれる感触がある。そのまま服を一気に引き裂かれた。


 ビックリして目を開けるとゴブリンの目は俺の胸に集中していた。

 そうだ、今の俺は女の子の体なんだ。だとすれば殺す以外の選択肢も出てくる。


 物語の中ではゴブリンやオークが人間の女性を襲うという話もあった。

 つまりはそういうことなんだ。


 ゴブリンの汚い手がまだ発達しきっていない幼い胸に伸びる。

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!


 さらに足を固定しているゴブリンがスカートの部分を引き裂いてきた。

 止めろ、止めろ!


 手を固定しているゴブリンが汚れた布の下からナニかを出し、顔に近づけてくる。

 止めてくれっ!


 その時、扉のほうから破壊音が聞こえた。

 それが何かを確認する前に風切り音がした。それと同時に体中に温かい液体が降りかかり、何かが床に落ちる音がした。


 解放された手で頬を伝う液体を拭い顔の前に持ってくる。赤い、真っ赤な液体。

 ふと顔を横に向けると目があった。


 つい先ほどまで俺を見下ろしていた大きな赤い目と。

名前は次くらいには……

あと、強くなるのはもっと後の予定です

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