罪と罰1
「く……」
カズサは己の不首尾を悟り、とっさに小屋の窓の向こうを見る。窓の外では似たような鎧の騎士が、その身の甲冑を鳴らして身構えていた。
「くくく……」
入り込んできた騎士達の後ろから、赤い鎧を着た男が一人前に出た。他の三人の騎士を背後に従えさせるかのように立ち、人を蔑むような笑い声を上げる。
「随分とお早いお着きじゃないか……」
カズサは油断なく刀を構える。
小屋の中に、敵は赤い鎧の男を筆頭に四人。多くはないとはいえ、先ずはこの四人をどうにかしないといけない。
だが小屋の外にいる騎士と合わせても、全部で三十人とはいないだろう。この人数で街を攻めるとは、とても思えない。
カズサは相手のその行動に、上手くは説明できない不審を感じる。そして探りを入れるように話しかける。
「……」
その横でガーゴが同じく剣を構えた。ガーゴも何かを考えているようだ。
「この街は軍の駐留がない。それぐらい調べがついてますからね。機動力のある兵だけで十分ですよ」
赤い鎧の男は、僅かに見える目を冷たく光らせて答える。
「はん…… 曲がりなりにも敵地に、その人数で――」
「このグルゲがいれば、用は十分果たせます」
カズサの言葉に途中で割って入り、グルゲと名乗った赤い鎧の男は笑う。
「自信家だな……」
「カズサ…… 教会の目的は黒水晶。それを利用した布教。だがこの人数――」
ガーゴが細い目を更に細めて相手を見る。
「自信家というよりは、野心家なのだろう、こいつは」
「ほう……」
グルゲは興味深そうにガーゴに目をやる。
「大方側近だけで身を固めて、黒水晶の力を独り占めするつもりだ――」
ガーゴは相手の不遜な態度に、その目的を見たような気がした。
「教会を裏切ってもな……」
「はっ! せこい奴だ」
「何とでも、言うがいい。私の魔力と黒水晶があれば、この人数で十分。少なくともこの街一つぐらいは、すぐに壊滅してみせますよ」
「何ですって!」
マヒルは思わず叫んでしまう。その大声に、ミユリがマヒルにしがみついた。
「おやおや、その異国の服。あなたが導かれた異界の住人ですか? 救国の力と言うから、どんなものかと思えば……」
グルゲはマヒルを舐めるように見る。
「そうよ……」
「そしてそちらの首飾りの少女が、巫女ですか? そのような小さな体で、儀式を行ったとはよく命があったものですね」
「なっ? ミユリちゃん、そうなの?」
「小さくっても、立派な巫女です。命にかかわるようなことにはなりません」
マヒルの質問に、むしろグルゲに向かってミユリは気丈に答える。
「はは…… ご立派ですな。では私の為にも儀式をしてもらえますかな?」
「な、何を!」
マヒルはミユリを抱きしめて、後ろにかばおうとする。
「連続しての儀式は、それこそ命に関わるのでしょうが…… 私は知ったことではありません。それに何個でも欲しいですからな、黒水晶は。さぁて、私の為に呼び出してもらいますよ」
「てめぇ!」
カズサが刀を構え直し、ガーゴが後に続く。ミユリがキッと相手を睨みつけた。
「させないわ……」
マヒルが法律書を握りしめ、四人は赤い鎧の男と対峙した。