表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/47

異邦人3

 森を進むうちにすっかりと日が暮れていた。マヒル達は敵に見つかりにくそうな木陰を見つけると、そこで夜を明かすことにした。

 寝息を立てるミユリを肩に乗せ、マヒルは座って焚き火にあたる。二枚しかない毛布の一枚を、ミユリと二人で肩からかぶっていた。

 ここはマヒルのいた世界と同じく春のようだが、やはり夜の風は冷たかった。

 カズサとガーゴは枯れ草や木切れを集めて、何気ない様子で火をおこした。マヒルはその様子に感心して見入ったことを、その結果である焚き火を見ながら思い出した。

 火を起こした二人は少しだけ姿を消すと、ウサギをつかまえて帰ってきた。

 ウサギは瞬く間に解体された。マヒルは最初目を背けていたが、皆がおいしそうに食べ始めるので最後は一緒になっていただいた。

 ミユリが何気ない様子で摘んだハーブが、ウサギの肉汁によく合ったことも、マヒルはその味とともに思い出した。

 つい先程まで生きていたものをいただく。マヒルは魚ですら、そんな経験をしたことがあっただろうかとも思う。

 そして――

「人…… 死んでたね……」

 そしてマヒルはもう一つの死を思い出し、唐突にぽつりと呟く。

 火が起こり、辺りは静寂に包まれている。その情景にマヒルはすっかりと弱気になったようだ。戦闘と逃走がもたらす興奮が冷めると、一気に現実の問題を考えさせられた。

「そうだな……」

 火の番をしながらカズサが応える。ガーゴは見回りに出て、席を外していた。

「殺さないで…… 欲しいな……」

 マヒルはまたもやぽつりと呟く。

「無茶言うなよ。これは戦争だぜ」

「でも……」

 マヒルは目を伏せた。殺人と戦争。そして法律。普遍的なテーマだ。

 マヒルは法律の問題として考えたことはあっても、実際に直面する問題だとは思っていなかった。

 そのことにも思い至り、やはりマヒルは弱気になる。

「今まさに、マヒルの背後から、あいつらが斬りかかってくるかも知れないんだぜ?」

「それは……」

 マヒルは言い返そうと顔を上げる。だが何も言えなかった。

「そんな時に、法律とやらを振りかざしたら、相手は止まってくれんのか?」

「……」

「それに俺が後一人でも多く殺していたら、ラーグラは死なずに済んだかもしれないぜ?」

「何よ……」

「お前の国じゃ、こういう場合黙って殺されるのかよ?」

「違うわよ。正当防衛が認められる場合もあるし、そもそもそんな風にならないように、法律で武器を取り締まったりしているわ」

「俺らだって、日常で斬り合ってる訳じゃねえよ」

 カズサはバツが悪そうに、焚き火の中を枯れ枝でかき回した。

「……」

 マヒルはもう一度目を伏せる。

「……悪かった…… ちょっと言い過ぎた」

「……別に…… 謝られたって嬉しくない……」

 マヒルは伏せた視線を更にそらす。

「何だよ……」

「別に……」

「だが悪いが敵襲があったら、俺もガーゴもミユリを守らなくちゃならない。もちろんマヒルもな……」

「……」

 マヒルはやはり目を合わさない。

「その為には敵の命だって奪う。話し合いなんて応じてくれないからな」

「……」

 マヒルは黙り込んでしまい、

「……」

 カズサもそれ以上は何も言わなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ