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③完壁な地獄~欺瞞で築かれた理想の家庭、血の絆が繋ぐ終身刑~  作者: MCdragon


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第四章:予兆と胎動

修の海外出張が頻繁になり、一年の半分近くを不在にするようになってから、マンションの空気は完全に康夫の色に染まっていた。

瑠美の体調に異変が現れたのは、修が東南アジアへの長期視察に旅立って二週間が過ぎた頃だった。

朝、キッチンで小春の朝食を作っていた瑠美は、炊き立てのご飯の匂いに強烈な吐き気を覚え、その場に崩れ落ちた。


「ママ、大丈夫?」


心配そうに覗き込む小春の声を遠くに聞きながら、瑠美の脳裏には絶望的な計算が浮かんでいた。

修とはこの数ヶ月、多忙を理由に一度も肌を合わせていない。

その日の午後、修の代わりに幼稚園へ小春を迎えに行った康夫が、青ざめた顔でソファに横たわる瑠美のもとへ歩み寄った。


「…瑠美さん、察しはついているね?」


康夫の声には、隠しきれない歓喜が混じっていた。

彼は瑠美の同意も得ず、すでに産婦人科の予約を済ませていた。

一週間後、診断結果は「妊娠二ヶ月」。

康夫は病院の駐車場に停めた車の中で、診断書を愛おしそうに撫でた。


「私の勝ちだ、瑠美さん。これで君と私は、修くんには決して立ち入れない『血の絆』で結ばれた」


瑠美は窓の外を見つめたまま、力なく呟いた。


「修になんて説明するつもりですか…? 彼は…彼は自分の子だと思い込むでしょう。そんな残酷なこと…」


「残酷?違うよ。これは慈悲だ。彼は真実を知らずに、父親になる喜びを享受できる。君が完璧に演じきれば、誰も傷つかない」


康夫の手が、まだ膨らみも目立たない瑠美の下腹部を、所有権を主張するように何度も撫でる。

瑠美はその感触に吐き気を覚えながらも、同時に、自分の内側に宿った「康夫の分身」が、修との生活を永遠に破壊する爆弾であることに、抗いようのない官能的な恐怖を感じていた。

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