8. 錬金基礎実習②
反論したモニカ様を、ウィリアム殿下は憎々しげに睨む。
「やった本人たちが、そう証言したのだぞ? 往生際が悪いのではないのか?」
「その者たちが誰であるのかさえ知らないのに、そうおっしゃられても困りますとお伝えしたはずです。それに、その者たちと、わたくしとの接点となる証拠は見つかったのですか?」
「それは……でも、その3人は口を揃えてそう言っているのだ!」
「その3人の家名をお教え下さいませ。わたくしに罪を被せたのですもの。公爵家より直々に抗議の申し立てを入れますわ」
そう言ったモニカ様に、ウィリアム殿下は小馬鹿にした様子で言う。
「公爵家? あの公爵がお前の為にそんな事するとでも? 公爵はお前の事などまるで気にしていないではないか」
殿下の言葉に、モニカ様は目をキツくして、殿下を見返した。
「…………わたくしに罪を擦り付けたのは、ひいては公爵家を軽く見たからこその所業。お父様はわたくしの為に動かなくても、公爵家を侮られた事に対しては、早急に動かれると思いますわ」
モニカ様の言葉に、ハッとしてウィリアム殿下は息を呑む。
「ちっ、この件はもういい! しかし、お前がアリアに当たりがきついのは皆が知っている事だ! そんな者とアリアを組ませられるか!」
そう言い放って、アリアを見る。
「アリア、一緒に組めなくてすまない。でも、ちゃんとペアの相手は見つけてやるから」
「ウィル、心配しないで下さい。私は誰とでも上手くやっていきますから」
ウィリアム殿下とアリアの三文芝居が、また目の前で繰り広げられる。
あの様子だと、あの件に関わった令嬢たちと、モニカ様との接点の証拠は見つからなかったのだろう。
ホントに自分の婚約者を貶めて、何がしたいんだろうか。
しかしまさか、殿下がこんな行動に出るとは思わなかった。私がロイド先生に余計な事を言ったばかりに、かえってモニカ様に負担を強いてしまったようで、責任を感じてしまう。
なので、私は隣で同じ光景を見ているルシルに、小声でお願いをした。
「ねぇ、ルシル。これって私がこっそり先生に言ったせいだと思うの。だから、申し訳ないんだけれど、ルシルはアリアさんと組んでくれない? 私は属性が同じで組めないから……」
「え? じゃ、アリッサはどうするの?」
「私はモニカ様と組むわ」
私の言葉にルシルはビックリしているが、再度お願いをして、何とか聞き入れてもらった。
そして、私はロイド先生にその提案を伝える。
「ロイド先生。私とルシルはペアを解散して、ルシルはアリアさんと、私はモニカ様とペアを組みたいと思うのですが、よろしいでしょうか?」
そう告げたあと、アリアとモニカ様を見る。
「モニカ様。どうか私とペアを組んで下さい。そして、アリアさんはルシルとペアを組んでもらってもよろしいでしょうか?」
私の提案に、アリアはすぐに頷く。
「ええ! もちろん! ルシルさん、よろしくお願いします!」
そこは……ルシルは伯爵令嬢であるのだから、ルシル様とか、アバンス様とかでしょうに。そういう所よ。みんなから敬遠されるのは。
少しイラッとしながらも、笑顔でお礼を言う。
「アリアさん、提案を受け入れてくれてありがとうございます。ルシル、お願いね」
私の言葉を受けて、ルシルもアリアに挨拶をする。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね、アリアさん」
よし。何とかなった。
ウィリアム殿下も、女子と組むことに異議はないようで黙っている。
そして私は改めてモニカ様を誘った。
「モニカ様、私とペアを組んで頂けますでしょうか?」
「分かりましたわ。アリッサ、よろしくお願い致しますわね」
モニカ様は申し訳なさそうにしながら、私の誘いを受けてくれた。
「モニカ様、こちらこそよろしくお願い致します」
私は少しでもモニカ様が負担に感じないよう、笑顔で挨拶をした。




