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うちの悪役令嬢はヒロインよりも愛らしい  作者: らんか


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6. 錬金基礎実習①


 あの日からベルモート様は、ちょくちょく私に話しかけてくれるようになった。

 日々の挨拶から、ちょっとした何気ない会話。

 そんな関わりの中で、ベルモート様はよく笑顔を見せてくれるようになった。

 そしてそんな私たちを見て、周りの生徒たちもびっくりしている。

 いままでベルモート様の笑顔を見た事のない人達ばかりだったので、初めてベルモート様の笑顔を見た人の中には、ベルモート様のあまりの美しさに見惚れている人もいるくらいだ。

 友人のルシルも、目を見開いてモニカ様をみている。


「ふふっ。みんなびっくりしていますね」

 私は周りの反応が可笑しくて、笑ってしまった。

 

「モニカ様の笑顔は貴重ですものね。こんな素敵な笑顔を知らなかったなんて、みんな損してますよね」

 私がモニカ様にそう言うと、モニカ様は少し困った顔で苦笑いをしている。

「淑女としては、感情を表情に出すのは良くないと淑女教育で習ったので、複雑な気もしますわね」

「社交界に出てからでもいいと思いません? わたくし達、まだ学生ですもの」

 私がにっこり笑ってそう言うと、モニカ様も笑顔のまま頷いた。


 そして、私は少し前から愛称呼びを許され、モニカ様と呼んでいる。

 モニカ様は、今まで誰にも愛称で呼んでもらった事も、また誰かを愛称で呼んだ事もないと話してくれた。

 以前殿下の事をアリアが「ウィル」と呼んでいた事に、実はモニカ様は大層傷ついていたようだ。

 あれについては、私もびっくりしたし、改めてヒロインの常識のなさを実感した。

 そして、モニカ様の思いを聞いた私は、すぐに名乗りを上げて、お互い愛称呼びをする事にしたのだ。

 私は「モニカ様」と。そして、私の事は「アリッサ」と敬称なしで呼んでもらう事にした。


「やっぱりモニカ様の笑顔、最高です!」

「ありがとう、アリッサ。そんなに真っ直ぐに言われると照れますわね」

 モニカ様が照れ笑いする表情も更に貴重。こんな表情はゲーム内では絶対に見られなかった。

 私は改めて、ゲームと現実の違いを感じていた。


 ****

 

 ある日の午後。今から始まる授業は錬金術基礎学だ。

 何を隠そう、私はモブでありながらモニカ様やウィリアム殿下、その側近たちやアリアと同じクラスである。成績優秀な者たちが集まるこのゴールドクラスに、何故アリアがいるのかは謎だが、これも強制力の仕業なのだろう。全くもってご都合主義だ。


 そして今日の授業では、初めて錬金術基礎実習が開始される。今までは座学ばかりだったので、いよいよだ。

 魔力が関係している錬金術は、魔力が多い程、有利となる。

 錬金術は便利な生活用品を作り出すだけでなく、薬などの生成にも携わっている。

 この世界の色んなものに精通している為、貴族ならばある程度、基礎的な錬金術は使えなくてはならない。

 特に、何かしらの生成に特化した錬金術能力を持っているものが優遇される世界だ。

 だから皆、家門の繁栄や自らの栄誉の為に、その能力を身につける事に必死となるのだ。

 その中でも秀でて優秀な者だけが、王国錬金魔術師団に入る事ができる。

 それは大変名誉な事で、色々な厚遇が受けられる為、人気の職場であった。

 私には兄がいるのだが、うちの兄、フレデリックはそこの主任をしている。

 一般的にみて優秀なのだろう。家にいる時は、憎まれ口ばかり叩く、とても可愛くない兄であるが。

 まぁ、そんな感じで、殆どの生徒は、今後の人生が左右される為、自分がどの程度、錬金術を扱うことが出来るのか不安を持ってこの授業に望んでいたのだった。


「それでは、今から基礎錬金術の実技を始める。まずは自分の得意とする属性を調べるので、この水晶に順番に手を当てなさい」


 基礎錬金術の教師、ロイド先生の言葉に、順番に水晶に手をかざしていく。

 錬金術は大きく火・水・地・風の四元素を主軸とし、そこに魔石や物質などを掛けあわせて作り出す。

 その為、自分が四元素のどの属性を持っているかを知る為に、水晶で確かめるのだ。

 火は赤、水は青、地は緑、風は黄色で水晶に色別で表される。


「アリア! 凄いじゃないか! 火と風の二種類の属性が出てるなんて!」


 突然大きな声が聞こえたかと思うと、水晶に手をかざしていたアリアの隣で、ウィリアム殿下がそう叫んでいた。

 その言葉に、周りの生徒たちもビックリして、アリアを見る。

 基本、属性は一人に対し1つだ。

 なので、2つの属性が表れるのは、とても珍しい事となる。


「本当だわ……嘘みたい。ウィル! ウィルがそばについてくれていたからだわ! ウィル、本当にありがとう!」


 アリアが嬉しそうにそう言っている。

 うん。殿下がそばについてたからだなんて、全く関係ないからね。どんなこじつけよ。


「ほぅ。フロースト嬢は二属性か。1つ1つの反応は弱いが、確かに珍しいな」


 ロイド先生も、目を丸くしてそう言った。

 さすがは乙女ゲームのヒロインといったところか。知っていたけど。

 次に手をかざしたウィリアム殿下は、火属性。三人の側近たちもそれぞれ、水、地、風と、バラバラの属性なのは【錬部】のゲームと一緒だ。

 そして、いよいよモニカ様の番。ゲームと一緒なら悪役令嬢であるモニカ様は、地属性だったはず。


「緑か。ベルモート嬢は地属性だな。しかし魔力が高いからか、反応が強い。こんなに強く反応が出るのも珍しい事だ。今年の生徒は優秀揃いだな」


 そう言ってロイド先生がモニカ様を褒める。それを聞いたウィリアム殿下が舌打ちをしながら、モニカ様に難癖をつけてきた。


「魔力が強くても、使う人間の気質が悪ければいい物は作れないに決まっている! 特に人を傷つけるような人間はな!」


 ウィリアム殿下にそう言われたモニカ様は、微かに目を細めてウィリアム殿下を無言で見返した。


「なんだ! 本当の事を言われて言い返せないのか!」

「……殿下の言葉は、人を傷つけていないとでも?」

「なんだと!?」


 モニカ様に冷静に言い返せされたウィリアム殿下は、より一層、口調を強める。

 

「やめないか! 授業中だぞ! ウィリアム殿下、無闇に人を貶める言動は王族としていかがなものか」


 ロイド先生に窘められたウィリアム殿下は、バツの悪そうな顔で席に着いた。

 それに続いて、側近たちやアリアも席に着く。

 どうしてもウィリアム殿下は、モニカ様を悪者にしたいようだ。

 これはゲームの強制力? それともただ単に難癖をつけたいだけ?

 どちらにしても、ウィリアム殿下への好感度はどんどん無くなっていく。

 元々ゲームの中でもそんなに惹かれるキャラではなかったけれどね。

 

 因みに私は火属性で、ウィリアム殿下と同じ。

 今日の授業は、属性ごとに分かれて、初歩的な錬金術を学ぶ事となり、ウィリアム殿下と同じ火属性の私は、ウィリアム殿下に誘われてやってきたアリアとも同じグループとなる。

 目の前でイチャつきながら練習している二人を見て、一人ムカつきながらこの日の授業を終えた。

 

 


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