38. 審議④
「ベルモート公爵。本当に申し訳なかった。今までの話で、モニカ嬢に非はなく、第三王子の一方的な行動による婚約破棄であったことが理解してもらえたと思う。破棄に対しての王家からの補償はもちろん、望むのなら、モニカ嬢に相応しい次の相手も責任をもって探しても構わない」
陛下はウィリアム殿下との話は終わりとばかりにウィリアム殿下やアリア、フロースト男爵、ユリウス、ボルグ親子を下がらせながら、公爵に話を振った。
ウィリアム殿下は、下がらされながらも陛下に何やら叫んでいたのに対し、他の人たちは無言で退室していった。
アリアに関しては陛下からの言葉が一切なく、そのまま下がらされた事にショックを受けていたようだ。仮にもウィリアム殿下の結婚相手なのだから、何かしらお言葉を頂けると思っていたのだろう。
まさか、全く相手にされないまま、実家での自分の立場を失うことになるとは思ってもみなかったといったところか。
つくづく自分に甘い考えを持ったヒロインだったなと、この物語の行きつく先が元のゲームから、かなりかけ離れたものになった事に、やや複雑な気持ちになった。
そんな事を考えている間にも、陛下とベルモート公爵との会話は続いていく。
「陛下、この度の件、我が娘に寛大な対応をして下さり、誠にありがとうございます。娘の次の相手に関しましては、まだ何も考えていませんので、陛下のお申し出はとても有難いことにございます」
陛下は、ベルモート公爵がそう返答したのを確認し、モニカ様にも話を振った。
「モニカ嬢よ。そなたもそれで良いか?」
「わたくしは……今はまだそのような事は……」
陛下に問われてモニカ様は伏し目がちにそう話す。
「あぁ、少し性急すぎたかもしれぬな。その話はまた後日としよう。疲れたであろう。モニカ嬢、今日はもうベルモート公爵共に、下がってよいぞ」
陛下にそう言われて、モニカ様はお父上と共に下がっていった。
そしてこの謁見室に残るは、両陛下や宰相様、ルーク様と私と兄のみとなる。
「さて、ようやく話せるな」
そう言って陛下は私を見る。
「アリッサ・イグラール嬢。君は最大魔力保持者にして最年少錬金術師。重要秘密保持である国の保護対象者にあたるわけだが、今回はその力を遺憾無く発揮したようだな?」
笑顔でそう言う陛下に、私はにっこりと微笑み返す。
「滅相もございません。今回はたまたま実のある結果となりましたが、錬金術で出来る事など知れておりますわ」
「そう謙遜するでない。あの映像は見事であった。あのような証拠を提出されれば、皆、納得するしかあるまいて」
そう言って陛下はしきりに感心している。
「映像が一番分かりやすいと思ったのです。今回はそれぞれ関わっている人数が多く、罪悪感もあまり感じずに行っているため、何度聞き取りをしても真実には辿り着けないと感じました。"百聞は一見にしかず"といった、東方の言葉があります。何回も聞くより自分で見るのが確実という意味です。今回の場合、この言葉どおり、見て頂くのが確実だと思い、魔導師団総団長様や兄の協力の元、映像機を作成致しました」
私の言葉に、陛下は大きく頷く。
「そうだな。あの映像機は、色んな場面でも使えそうだ。いずれは王国内の主要箇所に設置すれば、防犯上にも便利であろう。総団長ルークよ、錬金魔道師団総出で取り掛かってくれ」
「王国錬金魔導師団総団長ルーク・エスポワール、しかと拝命致しました」
陛下にそう言われたルーク様は、胸に手を当てて、敬礼しながら返答した。
陛下は、その答えに満足しながら、再び私を見る。
「そういえば、講堂で、モニカ嬢を押さえつけたボルグを勢いよく吹き飛ばしたように見えたが、あれはどういったものなのだ?」
「あ、あれ、実は、荷物を空中に浮かしながら運ぶ便利グッズなのです。作動する際、出力全開にすれば、対象物を吹き飛ばしてしまう失敗作だったのですが、防犯グッズとしては使えるかもと考えて、今回持ってきていました。案の定、モニカ様に対する暴力がありましたからね。防犯グッズとしての検証も取れましたし、備えあれば憂いなしでしたね」
満足気にそう返答した私を、他の人達が呆れたように見た。
「ちゃっかりしておるな。まぁよい。此度は良い働きをしてくれた。アリッサ嬢の隣にいるのは、アリッサ嬢の兄である魔導師団主任のフレデリック・イグラールであるな。そなたも色々と協力したと聞いておる。優秀な者が錬金魔導師団にいるのはとても心強い。そなたの今後の活躍も期待しておるぞ」
「は、はい! ご期待に添えるよう頑張りまひゅ!」
頑張りまひゅ……って。
陛下に思いがけず、激励の言葉を受けた兄は、ガチガチに固まり、噛みながら何とか返答した。




