36. 審議②
「だ、団長!? 何故団長がここに!?」
王宮錬金魔導師団本部主任の我が兄こと、フレデリック・イグラールが思わず叫ぶ。
その言葉に、あまり姿を現さなかった王宮錬金魔導師団総団長であり、陛下の弟であり、エスポワール大公閣下でもあるルーク様を皆が凝視した。
「改めて紹介しよう。我が弟、ルーク・エスポワール大公だ。皆も知っての通り、王宮錬金魔導師団の総団長でもある。此度は、その身分かバレないように、認識阻害の道具を使用して王立学園に潜入し、見た目と名前を変えて王立学園で教鞭をとっていたのだ」
陛下の説明に、ウィリアム殿下は驚きを隠せない。
「ま、まさか、叔父上が一教師として学園に入っていただなんて……まさか、僕の監視のため?」
「いやいやいや! 自惚れないでくれ。私は私の大切な人を見守るために学園に教師として入っただけだよ?」
自惚れ? 言葉のチョイスがおかしい。
私は堂々とそう言いきったルーク様を呆れた目で見てしまう。
「まぁ、それは置いておくとして。私は学園でお前の行動を目の当たりにしていたんだ。我が甥ながら、嘆かわしいよ」
ルーク様の言葉にウィリアム殿下は下唇を噛み締めて、俯いた。
「ウィリアムよ、信用出来る者の報告だと言っただろう。それでも学園を卒業してモニカ嬢と結婚すれば、一時の気の迷いと気付いてくれると思っていたのだ。バカな親心を出していたと自分でも情けないがな」
そう言って、今度はフロースト男爵を見る。
「フロースト男爵。そなたは自分の娘が高位貴族の息子達と懇意にしていたことに気付いておっただろう? あわよくば娘が王子妃になるのを期待しておったのか?」
「い、いえ! 畏れ多いことにございます! た、ただ、殿下や側近の皆様が娘にとてもよくして下さっているのを無下にするわけにもいかず……」
陛下の問いかけに、青ざめながらフロースト男爵は答えた。
「そうか。では、それがどのような結果をもたらすか、考えてなかったと?」
「そ、それは……、は、はい」
陛下の言葉に、フロースト男爵は今にも倒れそうなくらい血の気が引いている。
「何はともあれ、卒業式の最中に第三王子は皆の前でモニカ嬢の婚約破棄と、そなたの娘との新たな婚約を口にした。そして、そこの娘も頬を染めて嬉しそうにしておったのだ。今更あれがなかった事には出来ん」
陛下の言葉にウィリアム殿下が言質を取ったとばかりに顔を上げた。
「陛下! 陛下は先程モニカ・ベルモートとの婚約破棄をお認めになっています! 僕とアリアの新たな婚約も認めて下さるのですか!?」
何の反省もなく、自分の思いどおりに話が進んでいくことに、ウィリアム殿下は興奮を隠せない様子でそう言った。
その言葉に、フロースト男爵の顔色が戻り、うっすらと笑みすら浮かべている。
アリアも、ウィリアム殿下が自分を再度選んでくれた事に感動している様子だ。
「ああ、認めよう」
陛下の言葉にウィリアム殿下やフロースト男爵父娘はパッと笑顔になる。
「ウィリアム、お前は今日からフロースト男爵が娘、アリアと婚約し、卒業を待ってすぐに入婿として男爵家に入ってもらう。その際は、王族籍から除籍し、王位継承権も放棄してもらうこととする」
次に発した陛下の言葉に、ウィリアム殿下やフロースト男爵はギョッとする。
「父上! 僕に王位継承権を放棄して男爵位を継げと!? 僕は卒業後に公爵家を継ぐはずでは!?」
そう言ったウィリアム殿下に、陛下は呆れた視線を向けた。
「何を言っておる? 公爵家を継ぐというのは、モニカ嬢と結婚してベルモート公爵家に入った場合の事だ。しかし、お前が選んだのは男爵家の娘だろう。男爵家に入る者に王位継承権は持てない。当然であろう?」
何を分かりきったことをというふうに、陛下は呆れて返答した。
「あ、アリアをベルモート公爵家の養女にすれば!」
ウィリアム殿下の言葉に、その場に居た皆は、ギョッとしたあと、侮蔑の眼差しを向けた。
「よくそんな恥知らずな事が言えたものだ。お前がそこまで愚かであっただなんて……お前のその言葉はモニカ嬢だけでなく、ベルモート公爵家を侮っているのと同じであると、何故分からぬのか!」




