35. 審議①
私たちはその後、謁見室へと呼ばれた。
入った先には、両陛下や宰相様、ボルグの父親であるトリドール辺境伯騎士団長、ウィリアム殿下、ボルグ、アリア、アリアの父親であるフロースト男爵、モニカ様の父親であるベルモート公爵、そしてロイド先生(ルーク様)に、我が兄であるフレデリック・イグラールまでが既に揃っていた。
「来たか。二人ともこちらへ」
陛下の言葉に、私とモニカ様は近くまで来てから両陛下に向けてカーテシーをする。
「楽にするがよい」
陛下の言葉で私たちは姿勢を正す。視界の先では、兄であるフレデリックが私を手招きしていた。
私たちは兄のところに行き、側に並んだ。
『アリッサ! これ、どういう事? 何でこんな所に僕たちが呼ばれてるのさ』
隣にいる私に、小声で兄がそう聞いてくる。
『ごめんね、お兄様。錬金術の機器でちょっとやらかしましたの』
『はぁ!?』
どうやら兄は、何も聞かされてないまま、ここに連れてこられたようだ。
私たち兄妹がコソコソと話しているうちに、会談は始まる。
「これで大体の関係者は揃ったな。急な召集にもかかわらず、集まってくれた事に感謝する。あの場にいなかった者も、ここに来るまでに大凡の事は聞いていると思う。早急の対処が必要だと判断した為、皆にも聞いてもらいたい」
陛下がそう言ったところで、モニカの父であるベルモート公爵が発言した。
「陛下、私は娘がウィリアム殿下に婚約破棄をされたと伺いました。娘が何か粗相をしたのでしょうか?」
どうやらベルモート公爵は、具体的な内容は聞かされていないようだ。
「モニカ嬢はよくやってくれていた。悪いのはうちの愚息だ。公爵には、婚約破棄に至るまでの経緯を知ってもらうためにここに来てもらった。まずはこれからの会談の内容をよく聞いて精査してほしい」
陛下の言葉に、ベルモート公爵はそれ以上は口を挟まず、静かに頷いた。
「では先ず、ウィリアムよ。改めて聞く。お前は今まで婚約者であったモニカ嬢を悪し様に扱い、冤罪をかけて断罪しようとした。そして一方的な婚約破棄を告げ、そこにいるフロースト男爵令嬢と婚約する意志を皆の前で示した。間違いないか?」
「父上! 悪し様に扱い冤罪をかけるなど! 僕は僕の正義の名のもとにあの女を断罪し、婚約破棄をしたまでです!」
陛下の言葉にウィリアム殿下は、納得がいかないといった風に叫ぶ。
「ではお前の正義とは何か? モニカ嬢を断罪するに値する確たる証拠があって、そう言い切るのか?」
「そ、それは……」
「よもや、今までなんの根拠もなく決めつけ、モニカ嬢を愚弄していたにも関わらず、まだ反省の意を持たぬ気ではあるまいな!?」
「な、何故、父上は僕の事を一方的に責めるのですか!? 思えば父上はあの映像を見る前から僕たちの拘束を命じられました! 何故なのですか!?」
反省の色を見せず、いまだに強気でそう叫ぶウィリアムに陛下は呆れたふうに顔を横にふる。
「言ったはずだ。お前の行動は常に報告されていたと。学園での事は、信頼のある者からの報告だ」
そう言って陛下はロイド先生を見る。
陛下の視線を追って、ウィリアムは周囲を見渡し、ロイド先生を見つけて、指をさしながら睨めつけた。
「陛下! よもやこんな一介の教師の報告を真に受けておられたのですか!? この者が偏った報告をしていたかもしれないのですよ!」
そう言うウィリアム殿下の様子を見た陛下は、軽く首を横に振り、ため息を吐いた。
「おいおい、ひどい言い方だな、ウィリアム」
そこに、ロイド先生がそう言ってウィリアム殿下に声をかけた。
「は!? なんだお前! 立場を弁えろ! 誰に向かって呼び捨てにしているんだ!」
ウィリアム殿下が顔を真っ赤にして叫び、周囲もびっくりしてロイド先生を見る。
しかしロイド先生は、そんな視線をものともせず、ゆっくりと前に出て眼鏡を外した。
すると、ボサボサのブルーアッシュ色の髪は、明るめの透明感のあるアッシュグレー色に変わり、現れた目はサファイアを思わせるブルーとイエローのバイカラー色。
ほんの少しの変化だが、そこには全くの別人としての姿が現れた。
「お、叔父上!?」
その姿を見たウィリアム殿下がそう叫び、周りの人達も、その言葉に弾かれたように現れた人物を凝視する。
「やぁ、ウィリアム。やっと気付いたか。この認識阻害の眼鏡は優秀だな」
そう言って、ロイド先生改めルーク様がニヤリと笑った。




