31. 事件の真相①
私は改めて、会場を見渡す。
そして、事故の究明から始めた。
「まずは先程、殿下がおっしゃっていた、アリアさんが階段から突き落とされたという件から」
そう言って、アリアを見る。
「アリアさん、階段から突き落とされたそうですが、それはいつ頃、何処で起こった事ですか?」
「え? え~っと……。確か三日前でした。第二校舎北の階段で……」
「わかりました」
アリアの言葉に防犯カメラの映像を映し出す。
画面には、三日前の第二校舎北の階段が映し出された。
「え……何? 皆が階段を行き来している様子が映し出された?」
「あ! 確かに三日前だわ! あの日に着けていた髪飾り、あれ、わたくしよ!」
「これ何? なんでこんなものが?」
皆はスクリーンに映し出された映像に釘付けだ。
「アリアさん、何時頃にそれは起こったのかしら?」
アリアは、その画面を食い入るように見ていたが、私の言葉にハッとする。
「あ……、えっと……。四限目の授業が終わって、下に降りようとした時だから……」
その言葉で、大体の時間を割り出し、映像をすすめる。
すると、映像にアリアが階段上にいる場面が映し出された。
そして、その映像を流していくと、アリアの少し離れた後ろにモニカ様がいる。
「ほらみろ! 後ろにモニカがいる!
ここでアリアはモニカに押されて落ちたんだ!」
その画面を見たウィリアム殿下が、我慢出来ずに叫んだ。
しかしすぐに陛下の視線を感じて口を閉じる。
そのまま流れる映像に皆が注目していると、後ろにいたモニカ様はくるりと背を向け、階段上の奥に戻っていった。
「えっ?」
それを見たアリアが思わず声を出す。
そして、映像のアリアが階段を降りていき、残すはあと7~8段といった所で、後から別の女生徒がアリアを追い越す勢いで駆け降りてきた。
その時にその女生徒が持っていた、長い筒のような持ち物がアリアの肩にぶつかった。
その拍子にアリアの身体はバランスを崩し、階段から足を踏み外して落ちたが、元々残りわずかな段数で高さもあまり無かった為、捻挫と軽い打ち身で事なきを得た。
その様子を見て、慌てて階下にいた殿下たちが駆け寄って来てアリアを起こしながら階段上を見ると、モニカ様が今まさに階段を降りようとしている所が映された。
映像の中の殿下が叫ぶ。
『お前の仕業だな! 後で覚えていろ!』
そう叫びながら、アリアを抱えて何処かに行き、殿下たちの姿は画面から消えた。
階段上では、何が何だか分からないといった様子のモニカ様の姿が残っていた。
ここで一旦映像を止める。
誰もが口を閉じ、会場内は物音ひとつしない。
その中で、私は口火を切った。
「アリアさん。貴女は階段の下方から落ちたのね? だったら、階段をまだ降りてもいないモニカ様が貴女を落とせるはずないわね?」
私の言葉に、アリアが焦って弁明した。
「わ、私! 落ちた時は上を見ていなくて! 助けに来てくれたウィルが階段の上を見てモニカさんの仕業だと叫んだから、私てっきりモニカさんが私のすぐ後ろに来ていたのだと思ったの!」
その言葉を聞いたウィリアム殿下は硬直する。
「ウィリアム殿下。貴方はアリアさんが落ちる場面を見ていなかったのですね? 駆け寄った時に階段上にモニカ様の姿を見つけて、すぐにモニカ様の仕業だと決めつけた。でも、ごらんになったように、モニカ様には不可能なのですよ?」
私がそう言うと、ウィリアム殿下は青ざめた表情でアリアを見た。
「あ、アリア? こんな下の方から落ちてたのか?」
「え? ええ」
「何故それをすぐに言わなかった!?」
「え? 聞かれなかったし、ウィル達はすぐに来てくれたから、知ってるものだと……」
アリアの返答に、ウィリアム殿下は脱力する。
そして別の場所でも、一人の女生徒が倒れた。
きっと、階段で追い越した女生徒だろう。
まさか自分の持ち物にぶつかって、アリアが落ちたとは気づいてなかったはず。
急いでいたようで、アリアが落ちそうになっている時には既に階下にいて、そのまま振り向きもせずに走り去っていったから。
これは偶然起きた事故だ。
この女生徒も故意ではない事が映像の中で分かる。
分かるが、まぁ、周りに気をつけた方が良かったのではないかとは思うけれど。
倒れた女生徒は教員によって医務室に運ばれた。
あとで教員より注意が入るだろうが、それは仕方ないと思う。
「さて、殿下。モニカ様に何か伝えなければならないのでは?」
私は改めて殿下に問うた。




