24. 認識阻害魔導具の出処
生徒指導室に着いた私たちは、ロイド先生に、並べられている椅子に着席するよう促された。
「まず、クレア・バスチアン。この魔導具が認識阻害の魔導具だと知った上で学園に持ち込んだそうだが、それは間違いないか?」
ロイド先生に質問されたクレアは、落ち着きなく視線を彷徨わせながら、青い顔色のまま微かに頷く。
「ほぅ……では、この魔導具の入手はどのように?」
「……えっ?」
「これを、どうやって手に入れた?」
ロイド先生の更なる質問に、クレアはより一層オドオドとしている。
「あ、あの……それは市井に下りた際、ま、魔導具店で偶然手に入れました……」
蚊の鳴くような声でクレアはそう返答する。
「ほう……。市井でね……?」
そう言ったロイド先生は、次にウィリアム殿下に視線を向ける。
「ウィリアム殿下、認識阻害の魔導具の事はご存知ですか?」
ロイド先生に話を振られた殿下は、クレアを疑うような目つきで見ながら答えた。
「あぁ、聞いた事がある。数年前に王国錬金魔導師団が新規登録した魔導具だ。その効能が特殊で、使用方法によっては犯罪に繋がる可能性もあるとして、使用の制限がなされている物だったはず。当然、その魔導具の流通も限られており、間違っても市井に売られているような代物ではない」
その答えを聞いたロイド先生は、大きく頷いた。
私も殿下の答えに感心した。
(あらあら、よく知っているわね。
流石は腐っても王子様だったか)
「クレア・バスチアン。今ウィリアム殿下の説明を聞いた上で再度聞く。この魔導具はどのようにして手に入れた?」
「あ……」
クレアはそのまま固まってしまい、顔色はもはや生気を失ったように青白い。
見開いた目が、微かにマイケルに向いた。
クレアの視線の先にいたマイケルもまた、同じように顔色が悪い。しかし、クレアの視線を受けながらも、一切クレアとは視線を合わせようとはしない。
「あら? マイケル、顔色が悪いわ。大丈夫?」
同じようにマイケルの顔色が悪い事に気付いたアリアが、マイケルに声を掛けた。
「あ……あぁ、アリア。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
アリアに声を掛けられて、マイケルは無理に笑って優しく答える。
「本当に? 何だか汗もかいてるわ。このハンカチを使って?」
アリアがこの緊迫した空気の中でも、ごく自然にマイケルにハンカチを手渡す。
(さすがはヒロイン。どこまでも我が道をいくわね)
そのやり取りを見ながら、私はそんな事を考えていた。
そして、ふとクレアを見ると、その二人の様子を見たクレアの目に、アリアに対する嫉妬の色が浮かんだことに気付く。
「どうして……」
クレアはそう言って、マイケルに向き直った。
「どうして、わたくしがこんな目に遭っているのに、マイケル様は何も仰ってはくれませんの!? アリアさんには、そんなに優しく接していますのに、わたくしの事は一切見てくれないではありませんか! 貴方の婚約者はわたくしでしょう!?」
一気にタガが外れたようにクレアは叫ぶ。
(え!? クレアって、マイケルの婚約者だったかしら!? すっかり忘れてたわ!)
私は大いに驚いたが、この場の雰囲気が、それを口にする事を許さなかった。
「そもそも、こんな事をしたのはマイケル様が……!!」
「クレア!!」
その発言にロイド先生が二人に問いただす。
「どういう事だ? マイケル・ボルミュート。君もこの件に関係しているのか?」
ロイド先生の問いに、マイケルは一瞬焦った表情をするが、次の瞬間、表情を引き締める。
「いえ、確かにクレアと僕は婚約者同士ですが、僕は何も知りません。そうだよな? クレア」
マイケルにそう問われたクレアは、俯いて口を固く結んだ。




