21. 犯人探し③
「なぜ覚えていないのだ? 顔を見れば思い出すだろう!? お前たち! その者によく顔が見えるように一列に並べ!」
ウィリアム殿下は、苛立つようにそう言ってクラスメイトの女子を、教室の壁の前に一列に並べさせる。
だから、なぜ殿下がこの場を仕切るのよ! 貴方はついさっきまで、ソフィアを疑っていたのではなくて!?
態度をコロコロ変える殿下にムカムカしながらも、私はソフィアを見る。
「どう? 貴女を騙して魔石を受け取った女生徒は分かった?」
ソフィアはじっくりとクラスの女子生徒を見るが、首を横に振ってため息を吐く。
「駄目です。全く思い出せません」
ソフィアの言葉を聞いたウィリアム殿下は、疑いの眼差しでソフィアを見る。
「お前、何故分からない? そんなに日は経っていないのだぞ? 本当はそんな人間など居なかったのではないのか? やはり、ベルモートを庇うための芝居なんじゃ……?」
殿下は、ユリウスの制止を振り切り、ソフィア、私、モニカ様の順に視線を移しながら意気揚々と言ってきた。
「そ、そんな……確かにわたくしは……」
殿下にそう言われ、ソフィアは半泣き状態となる。
女生徒の顔を見れば思い出すと思っていたユリウスも、怪訝な表情でソフィアを見ている。
「君、僕に虚偽の申告をしたのか?」
ユリウスは厳しい口調でソフィアにそう言った。
「ち、違います! わたくしは本当に部室前の廊下で魔石を拾って、このクラスまで届けたにすぎません!」
ソフィアは信じてもらえない事に、とてもショックを受けたように叫んだ。
「お待ちください」
私のその一言で、みんなの視線が一気に集まってくる。
「なんだ、またお前か」
ウィリアム殿下は、ウンザリした表情で私を見た。
私はウィリアム殿下の言葉を無視し、一列に並んだ女生徒の前を歩く。
そして、ある女生徒の前で足を止めた。
見つけた。
私はその女生徒に向かって言い放つ。
「ソフィア様から魔石を騙し取ったのは貴女よね? クレア・バスチアン伯爵令嬢?」
「はっ?」
驚くクレアを無視し、私はクレアの制服のポケットに手を突っ込んだ。
「失礼」
そして、すかさずある物を取り出す。
「なっ!? 貴女! 何して……!! あ! 返して!!」
彼女は驚き、怒りながらも彼女のポケットから取りだされた物に気付き、声を上げる。
私は取り返そうとするクレアを避けながら、手に取ったある物を皆が見えるように上に掲げた。
「皆さん、この魔導具はご存知でしょうか? これは認識阻害の効果のある魔導具です」
私がそう言うと、クレアは青ざめる。
「認識阻害の魔導具だと!?」
「何のためにそんな物を?」
ウィリアム殿下をはじめ、ユリウスも驚いている。
「クレア様は、この魔導具を発動してソフィア様に近づいたのでしょう。だから、ソフィア様は顔を覚えられなかった。そしてソフィア様がこのクラスに来たため、念の為にまたその魔導具を使用したのだと思います。現に今も発動中ですもの」
私の説明に、他のクラスメイトは疑問を呈した。
「認識阻害の魔導具なんて、聞いた事ないわ」
「それで本当に誰だか分からなくなるの? 今も発動中でしたなら、私たちは今それを持っているアリッサ様の事、分からなくなるのではなくて?」
「そうよね。それに今まで持っていたクレアさんの事も認識出来ないのではないの? でも私たちはクレアさんをちゃんと認識出来ていたわよ?」
「そうよね、ちゃんと分かっていたわ」
「ええ、わたくしもクレア様が道具を使ったなんて、分からなかったわよ?」
皆の疑問に、ユリウスが代弁して私に聞いてくる。
「そうだ。我々もヴァリゲン子爵令嬢がクラスに来る前から、クレア嬢の事はちゃんと認識出来ていた。もちろん今、君の事も分からなくなった事はない」
ユリウスやクラスメイトの言葉を聞いて、私は説明を始めた。




