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うちの悪役令嬢はヒロインよりも愛らしい  作者: らんか


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19. 犯人探し①


 コンコンコン。


 私は錬金魔導部の扉を叩いた。


「は~い」


 中から返事があり、扉が開かれる。


「え~と、どういったご用件でしょう?」


 中から出てきたのは、ヘーゼルナッツ色の髪を緩やかな三つ編みに纏めた、真面目そうな女生徒だった。


「あの、こちらにソフィア・ヴァリゲン子爵令嬢はいらっしゃいますか?」

「ソフィア・ヴァリゲンはわたくしですが……」


 何と。まさかのご本人。


「あの、わたくし、アリッサ・イグラールと申します。実は貴女にお聞きしたい事があって」

「わたくしに?」

「ええ。先日の魔石の件について」


 私がそういうと、急に部室から出て来て、シッ!と口のところに指を当てて、私を黙らせた。


「ここでは困ります! ……場所を変えましょう」


 そう言って、部室前から離れる事を促される。私は、ソフィアに促されるままに部室から少し離れた空き室に連れて行かれた。


 部屋に入ると、ソフィアはホッと一息吐く。


「部室には、アリアさんとマイケル様がいらっしゃったので……」


 ソフィアは、少し言いにくそうにそう話す。


「アリアさんはともかく、マイケル・ボルミュート様も、錬部に入っているのですか?」


 ゲームではアリアと共に、殿下や側近たちも錬部に入っていた。

 しかし、この世界ではアリアしか入部していなかったのに、マイケルも入った?


「……マイケル様も、殿下やボルグ様も最近入部されましたの」


 やや沈んだ表情で、ソフィアはそう話す。

 あ、やっぱりゲームどおりになったのか。

 きっと、殿下たちは、後から入ったくせに部室内を我が物顔で使っているに違いない。

 あれ? でもユリウスは?


「三人だけですか? ユリウス・バーミケル様は入られなかったの?」

「ええ。三人だけです」


 そうなんだ。

 やはり、今世のユリウスは、少しゲームとは違う気がする。


「それで、わたくしに聞きたい事とは何でございましょうか?」


 ユリウスの行動など、ゲームの事に思い耽っていた私に、ソフィアがそう聞いてきた。


 いけない、いけない。

 今は魔石に集中しなければ。


「ヴァリゲン様、貴女が魔石を拾って、わたくしのクラスメイトの方にお渡しした事、ユリウス・バーミケル様より聞き及んでおります。それは間違いないですか?」

「……バーミケル様から、そう聞かれたのですか?」

「ええ。その時の事をわたくしに、もう一度教えて下さいませんか?」

 

 私はソフィアに、ユリウスから聞いて事実を知っている事を伝えた上で、お願いした。


「……確かにこの先の廊下で拾って、アリアさんのものかと思い、ゴールドクラスに持っていきました。その時にお渡しした相手の方の事は覚えていないと、バーミケル候爵令息にも、そうお話しさせて頂きましたわ」


 ソフィアは、私を少し警戒するように答える。


「ヴァリゲン様は、この件でモニカ・ベルモート公爵令嬢に、魔石を盗んだという疑いがかかった事をご存知でしょうか?」

「え、ええ。バーミケル様がこのお話を聞きに来た際、大体の事はお聞きしました」


 バツが悪そうに、俯きながらソフィアがそう話す。

 きっと、簡単に誰だか知らない相手に渡した事で、公爵令嬢に罪がかかった責任を負わされるのではと、不安なのだろう。


「大丈夫ですよ。わたくしは、魔石を拾って届けようとした貴女の行為は、とても素晴らしい事だと思います。その行為を疑うほうが間違っているのです」


 私の言葉に、ソフィアはパッと顔を上げた。


「貴女の素晴らしい行為を、逆手にとって不安にし、モニカ様に罪を着せた相手をわたくしは許せないのです」


 そう言って、わたしはソフィアにお願いする。


「ねぇ、ヴァリゲン様。わたくしに協力して頂けませんか? 貴女が覚えていらっしゃらないなら、相手から姿を現してもらおうと思うのですが」

「え? 相手から?……あ、でも……もし、またわたくしが疑われたり、責められたりしたら……わたくし、この件にはもう関わりたくなくて……」

 暗い表情でソフィアは話す。


「あの方々が錬部に入ってらしたので、わたくし、気が気じゃなくて……もう部も辞めようかと考えているくらいなのです」


 これは余程魔石を届けに行った時、その女生徒に高圧的に言われたのだろうか? ここまで関わりを嫌がるなんて。

 一般的な学生は、王族であるウィリアム殿下とお近づきになれる機会を狙っている。

 たとえ殿下の中身が()()でも、あの殿下もアリアに関する事と、モニカ様に対する態度を除くと、一応は王子様風を装う事が出来るらしい。要するに外ヅラは良いのだ。


「ヴァリゲン様。いつまでもビクビクして学生生活を送るのは、とても疲れるし、損をなさっていますよ。何も悪い事はしていないのです。堂々と学生生活を楽しみましょう」

「えっ?」

「その為に、まずはゴールドクラスに来て、アリアさんに魔石を拾った事を伝えて頂きたいの。そしてこのクラスの人に渡した事、その経緯をありのままに伝えて下さいませんか?」


 私の提案に、ソフィアはびっくりしている。


「そんな! 無理です! 今更名乗り出たら、わたくし、みんなにどう思われるか……わたくし、もう失礼します!」


 ソフィアは焦りながら拒否し、この場を去ろうとしていた。


「ヴァリゲン様、わたくしはこの件をこれからも調べますわ。後々事実を公表した時、今まで名乗り出なかった貴女の事を、皆はどう思うのでしょうね? 汚名を着せられたモニカ様は、果たして貴女を許すかしら?」


 歩き去ろうとしているソフィアの背中に向かって、私はそう伝えた。

 ソフィアは、その言葉にピタリと歩みを止め、振り返って私を見る。

 その表情は、怒りと不安で今にも泣きそうだった。


「こんな言い方をして、ごめんなさい。でも、貴女が少しの勇気を出してくれるだけで、モニカ様がアリアさんの魔石を盗んだという汚名は(そそ)がれるのです。きっとモニカ様は貴女に感謝されるでしょう。そして、貴女の心の気掛かりと後ろめたさも解消される。貴女の行為一つで、二つの利益が得られます」

 私はソフィアを見ながら、続けて伝える。


「そうすれば、貴女とモニカ様を嵌めた人間が焦り出して、自ら綻びを見せる事でしょう」

 そう言って、私はソフィアの手を取った。

「安心して下さい。その時はわたくしも傍にいます。ヴァリゲン様に辛い思いはさせないとお約束致しますわ」


 ソフィアの手を包み込むように握りながら、私は出来るだけ安心して貰えるように優しく伝えた。

 ソフィアは、まだ不安そうにしながら考え込んでいたが、握られた手を見ながら一つ大きく息を吐く。


「分かりましたわ。元々拾った事を隠していたわたくしが悪いのですもの。そのせいでベルモート公爵令嬢には申し訳ない事をしたと、余計にビクビクしていたのも確かです。ちゃんとアリアさんにその事を伝えて、ベルモート公爵令嬢にも謝りますわ」

「ありがとうございます、ヴァリゲン様! 大丈夫です! 貴女も騙された被害者ですもの! モニカ様は絶対に許して下さいますわ!」


 良かった。これで前に進める。

 あとは、ソフィアを上手く騙し、魔石をモニカ様の鞄に入れた犯人。クラスにいる狡猾な犯人を見つけなければ。

 ソフィアがその女生徒を覚えていないのも不自然。


 私は、どうすればその犯人を見つけられるか考える事にした。

 


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