17. 防犯カメラ設置
魔石事件から二週間後。
私は錬金術で色んな物を作った中で、一番学園になくてはならないと思ったものを、今日設置してもらう事になった。
それは防犯カメラだ。
何を隠そう、これが私のチート能力。
錬金術チートである。
前世の記憶が戻った時、私の中にある魔力が物凄い事になった。
まだ当時三歳だった私は、魔力暴走を起こしたのだ。
その当時の王国錬金魔導師団長に何とか抑えてもらい、その時に国に、私の魔力の大きさを知られて以降、私は国の保護対象となっていた。
しかし、これは国の最重要機密事項。
知っている者は家族以外には、国王陛下とほんの数名のみ。
たかだか第三王子のウィリアム殿下が知る由もない案件であった。
出来上がった防犯カメラを、団長様経由で王立錬金魔導師団に提出し、認定をもらう。
そして、試験的運用する場として王立学園を提案してもらった。
画期的な発明にて、この発明品の情報を全面提供するにあたり、設置までの期間を最速で処理するよう、団長様に掛け合ってもらった。
国の上層部では、これは“監視”なのではないかと、批判的な意見も出たが、あくまで“防犯”目的である事を主張してもらう。そして試験運用として、王族であるウィリアム殿下が通われている王立学園を指定してもらった。
王族の身を守る画期的な発明である事を主張してもらうと、国王陛下共々、納得し、直ぐに認可が降りたらしい。
これを機に、ウィリアム殿下の理不尽な言動や婚約者であるモニカ様への態度などを、ぜひ国王陛下や王妃様に知ってもらいたいものだ。
そして、設置するまでの間にモニカ様に何かあってはいけないと思い、モニカ様にも身を守る物をプレゼントした。
「これはなんですの?」
綺麗に包装された箱を手渡すと、モニカ様は首を傾げながら私に質問した。
「開けてみてください」
私の言葉に、モニカ様は不思議そうにしながらも包みを外し、箱を開ける。
「まぁ! 綺麗なピアスですこと!」
モニカ様に贈った物は、大きめのエメラルドに、周りにメレダイヤをあしらったピアス……に見せかけた、実は錬金術で作った機器だ。
「どうして、これをわたくしに?」
モニカ様はびっくりしながら私に聞いてくる。
「それ、実は本物ではありません」
「え?」
「それは、錬金術で作られた“音声付き録画機”なのです」
私の説明に、モニカ様は目がこぼれ落ちそうな程、目を見開いて絶句する。
「今までに起こった理不尽な出来事や、濡れ衣から身を守る為です。その時に起こった出来事や言われた相手、言われた事など、モニカ様が証拠として残しておきたい場面に遭遇した際に使って頂きたくて。右耳に着けたピアスを押すと、音声付き録画が開始され、左耳のピアスを押すと、録画解除となります」
私の説明に呆然としながら、ピアスを眺めている。
「こ、これ……こんなもの、何処で……こんな凄いもの、見た事も聞いた事もないのですが……」
呆然としながらそう言ったモニカ様に、私は王国錬金魔導師団で主任の座についている兄から貸してもらったと説明した。
この小型録画機は、もしもの為にと、防犯カメラよりも前に作成しておいたもの。これに関しては、王立錬金魔導師団への報告や商品登録はまだしていない。
モニカ様の身の安全と、潔白を証明する事が最重要事項だから、とりあえず、商品登録するよりも先に渡しておきたかったのだ。
先に知らせてあった団長様には、防犯カメラと一緒に商品登録を勧められたので、提出用にと三個目を今、制作中。
団長様には、色々と便宜をはかってもらってばかりで申し訳ないし、全面協力してくれて、感謝しかない。
改めて、自分のやるべき事を認識しながら、今日設置される防犯カメラの位置は何処になるのだろうと考えていると、後ろから声がかかった。
「アリッサ・イグラール、ちょっといいか?」
振り向くと、そこに居たのはロイド先生だった。
「どうされました? ロイド先生」
私は首を傾げながらロイド先生に問うた。
「少し確認したい事がある。一緒に錬金術研究室まで来てくれ」
ん? 何かしたかしら?
ロイド先生にそう言われた私は、不思議に思いながら、ロイド先生と共に錬金術研究室に向かった。
部屋に入ると、ロイド先生にソファに座るよう促される。
研究室は、色んな書類や大小様々な魔石類、発明品でごった返していた。
「すまないな、散らかした状態のままで。どうも片付けるのが苦手で……」
少しバツの悪そうな表情をしながら、先生は私にお茶を入れてくれた。
そして私の向かい側のソファに座る。
実はロイド先生は、生徒にとても人気がある。特に女生徒からの人気は凄い。
教え方が上手く、とても丁寧。
生徒たちへの対応も公平で、とても信頼出来る。
ブルーアッシュ色の髪はボサボサで、眼鏡をかけて顔を隠しているつもりになっているが、持って生まれた美貌は隠しきれていない。
肩幅は広く、長身で足の長さはモデル級。
声は渋めのバリトンボイス。
年齢を35歳と偽っているが、本当は27歳であることを私は知っている。
「先生、わたくしに確認したい事とは何でしょうか?」
出されたお茶を一口飲んだ後、私は先生に尋ねた。
「おい、今は"先生"呼びはよせ」
眼鏡を外して急に態度を崩し、そう言って、やや不機嫌な顔をして私を睨む。
「あら怖い。生徒を脅す気ですか?」
「……アリッサ」
そう言って、私の身体を宙に浮かせ、自分の隣に座らせた後、自分の方に引き寄せた。
これも錬金術で作った魔導具のなせる技だ。
物を浮かせて動かせる魔導具。
この場合の使い方は間違ってると思う!
「ちょっ! 誰かに見られたらどうするの!」
彼の腕の中に閉じ込められた私は、慌てて逃れようともがく。
「いっそ、バラすか?」
平気そうな表情で、もがいている私を笑いながら見ている。
「分かった! 分かりましたよ! 婚約者様! ルーク様!」
私の言葉に満足げな表情となり、ロイド先生改め、ルーク・エスポワール大公閣下は、腕の力を緩めた。




