閑話②
「アリッサ~! これ、凄い発明じゃないか! よくこんな物、思いつくよな!」
兄のフレデリック・イグラールは、私の発明品である、画像を動画として記録・撮影・再生出来る機器、いわゆる前世のビデオカメラに興奮している。
「でも、わたくしの作品では色々と不備があるでしょう? だからお兄様に点検と調整をしてもらいたいの」
「もちろんだ! こんなすごい発明品に携われるなんて、感無量だよ! アリッサ~! 僕の妹に生まれてきてくれて本当にありがとう!」
兄は大袈裟なほど感激している。
「お兄様。それだけじゃないんですよ? 持ち運びが出来て、簡単に録画・撮影出来る小型の録画機も作らないといけないんです」
私はモニカ様に、こっそり持ち歩いてもらえるような小型のビデオカメラを作る気でいた。
もし、何か理不尽なことがあった時に、自分の行動や相手の言動などを証拠として押さえられるようにするためだ。
「え!? これだけでも凄いのに、これの小型版も作るのか!? お前、どんだけ発明に貪欲なんだよ~」
「それ、誉め言葉として受け取っておきましょう。さぁ、お兄様。最速で作って、最速でこれを学園に設置しなければならないのです! きびきび動いてくださいませね!」
「え……僕、普通に仕事帰りなんだけれど……まさかの休みなし?」
「お兄様の才能に、一人の女性の運命がかかっているのです。休んでいる間に何かあったら、お兄様を恨んでしまいそうですわ」
「僕の妹は鬼畜だった……少しは大人になったかと思ったのに……」
ブツブツと言う兄の尻を叩きながら、私たち兄妹で作成に取り掛かる。
私が作ろうとしているのは、学園に設置出来る監視カメラだ。学園のいたるところに設置すれば、どこで何が行われているかわかる。
後でなにか起こった時に、録画された映像を再生すれば、証拠として使うことも可能! 冤罪を防ぐためには画期的だと思う!
それを兄に言ったら呆れられた。
「お前……監視だなんて、犯罪者でもあるまいし。そんなもの学園側が許すわけないだろう。国としても認められないんじゃないのか? せっかく画期的な発明品なんだから、もっといい事に使えよ」
むむ……“監視”という言葉が悪いのか……ならば。
「お兄様、防犯のためですわ。王族も通われる学園の中で何か起こっては一大事ですもの! 防犯用に録画写真機を取り付けておけば、怪しげな人が入ってきてもすぐに見つけられるし、どんな人かも録画出来る。また、何か起こったあとでも、録画した映像をあとから再生も出来るから、何が起こったのかすぐに分かるのですのよ! そう! この発明品は“防犯カメラ”と名付けましょう!」
勢いよく叫んだ私に、兄はひるみながらも質問する。
「お、おぅ……凄く熱く語ったな、お前。……で、その名前の防犯までは分かるが“カメラ”とは、どういう意味だ?」
“カメラ”とは、前世では、ラテン語のcamera“小さな部屋”という意味の語源から名付けられたものらしい。
この世界では通じない名前の由来だが、私の発明品なんだから、私がわかるように名前をつけていいはず。
「防犯用録画写真機では長いでしょう? “カメラ”という言葉はこの発明品を作り上げたときに、私の頭の中で閃いた言葉です。ええ、これ以外の言葉はあり得ません!」
うん、これは作り手の自由。言ったもん勝ち……のはず。
「はぁ……そうか。お前は昔から訳のわからない言葉を度々言っていたからな。今更驚きはしないよ。じゃ、この発明品は“防犯カメラ”でいいんだな?」
「はい!」
やった。商品登録名を勝ち取った。
後は早く完成させて、国に商品として認めさせ、試運転として学園に設置してもらえるようにしなければ。
「さぁさぁ! やる事は山積みなのですよ! お兄様! 頼りにしていますからね!」
私の叫びに兄はため息を吐く。
「せっかくの発明品をもっと、じっくりゆっくり味わいながら取り掛かりたかった……」
またブツブツと言う兄を無視しながら、私はこれからしなければならない事を考えていた。




