16. 再確認
あのあと、モニカ様にこれまでの事を改めて確認した。
もちろん、モニカ様の事は信じていたけれど、改めて言質を取っておきたかったから。
そして、やはりモニカ様は全くと言っていいほど、今までの事件に関わっていなかった。
それどころか、アリアの教科書やノートが破かれたり、物を隠されたりされている事が、自分のせいになっている事すら知らなかったらしい。
「え……何故わたくしがやった事になっているのです? そんな事があった事すら知りませんでしたのに」
私がその事件の聞き取りをしていた時の、モニカ様の台詞だ。
あの口調や表情は、嘘をついている感じではなかった。本当に今まで知らなかったんだろう。
それはそうだ。だって、誰もモニカ様に言わなかったんだから。
まさか「貴女がやったんですか?」なんて、公爵令嬢に普通は聞けないよね?
私も今回の事で、ようやく本人に確かめられたのだから。
もちろん、裏庭に女生徒たちを使って、アリアを呼び出した件についても無関係だった。
因みに私は見ていたので、誰がモニカ様に濡れ衣を着せたのか知っている。
モニカ様が知りたがったので、ちゃんと教えておいた。
「ようやく、誰がわたくしに罪を着せたのか、分かりましたわ」
「公爵様に言えば、その子達はさらに罰せられますね?」
モニカ様が、以前に殿下に言っていた内容を思い出す。
公爵様は、公爵家を軽んじる者には容赦しないとモニカ様がそう言っていた。
なので、公爵様にこの事を伝えるのかと聞いた私に、モニカ様は首を横に振った。
「殿下の手前、あんな事を言いましたが、やはり父はわたくしの言葉では、動かないでしょうね……」
モニカ様は寂しそうにそう言った。
ゲーム上では知らなかったが、モニカ様は複雑な家庭環境だったようだ。
私もこの世界に転生してから知ったが、モニカ様の両親は政略結婚で、不仲だったらしい。
よくある話で、当然のように浮気していた公爵様が、モニカ様の母が亡くなると、すぐに浮気相手と再婚した。後妻となったその人と公爵様の間には、既に男の子がいたらしい。当然その男の子が公爵家を継ぐものとして扱われ、モニカ様は公爵家での居場所はなくなった。だから自分にはウィリアム殿下しかいないと、ウィリアム殿下の婚約者という立場に、必死でしがみついていたらしい。
どうりであんな王子でも、モニカ様は婚約者としての立場を守ろうとしたわけだ。
でも、今回の事で、モニカ様もウィリアム殿下との関係に限界を感じたようだった。
「あの時、殿下は、わたくしが婚約者である事が屈辱だと仰ったわ。もう、無理かもしれませんわね……」
そう話すモニカ様は、とても寂しそうだった。
本当にウィリアム殿下だけが、心の拠り所だったのだろう。
どんなに冷たくされても、婚約者であるという立場が、モニカ様の矜恃を保っていたから。
「本当はもっと早くから気付いていましたのよ? アリアさんに“ウィル”と愛称で呼ばせた、あの時から……」
そう悲しそうに話す。
そう言った後、覚悟を決めたように大きく一息吐いた。
「その愛称を、わたくしがいつか呼ばせてもらえる日が来ると信じていたけれど、それももう諦めた方がいいみたいですわね」
モニカ様は、まるで泣き笑いをしているような表情でそう言った。
その表情を見て、改めて思う。
ここまでモニカ様を追い詰めた人達に、一矢報いてやりたいと。
その為には、まず今までの冤罪を晴らさないといけない。
私はある人に相談し、協力を求める事にした。




