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うちの悪役令嬢はヒロインよりも愛らしい  作者: らんか


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11. 傍若無人な人たち


 厳しい表情でウィリアム殿下や側近たち、それにアリアへと視線を移しながら、ロイド先生はそう言った。

 ロイド先生にそこまで言われてしまうと、殿下たちもそれ以上は反論出来ず、バツの悪そうな表情でこちらを見ている。


「ウィル、それにマイケル、ユリウス、ボルグ。私たちがちゃんと先生の話を聞いていなかったのだから、私たちが悪いのよね。だからきちんと謝りましょう?」


 アリアがロイド先生の話を聞いて、そう切り出してきた。

 そして、徐に私たちのほうを見る。


「ルシルさん、アリッサさん、モニカさん。間違いに気づかせてくれて、どうもありがとう! ごめんなさいね? ウィルたちに悪気は無いのよ? 実技に弱い私を何とかしようって、4人はそれだけを考えて行動してくれたの。だから私のせいなの」


 アリアは、両手を胸の前で祈るように組み合わせ、首を少し左に傾けながら、目を潤ませてそう言った。

 庇護欲をそそる仕草はさすがヒロインだ。


「アリア! 君のせいじゃない!」

「そうだとも! アリアが謝る必要はない!」

「アリアは僕たちに買い物に誘われただけだろう」

「ちゃんと聞かずに買い物の計画を立ててた僕たちが悪かったんだ」


 ウィリアム殿下、ボルグ、マイケル、ユリウスの順にそう言った。

 そして、すぐさまウィリアム殿下がアリアを励ますように言う。

 

「アリア! 魔鋼石目的ではなく、ただ市井に遊びに行くだけでも気分転換になると思うよ! 明後日の休みに行こうか!」

「それはいい! さすがはウィリアム殿下だね!」

「見聞を広げるのも、実技では役に立つと思いますよ! 想像力が膨らむから!」


 ウィリアム殿下に続いて、ボルグやマイケルもそう言う。ユリウスだけが無言で何かを考え込んでいた。


「まぁ! 嬉しい! みんな、ありがとう!」


 アリアが嬉しそうに返事をしたのを見て、満足したように頷いた後、ウィリアム殿下が私たちのほうを向いた。


「では、我々はこれで失礼する」

 そう言って立ち去ろうとするウィリアム殿下たちに、ロイド先生は首を傾げた。


「何故そのまま去る? 彼女たちへの謝罪が無かったように見えるが?」


 ロイド先生の言葉にウィリアム殿下は軽い舌打ちをした。


「今回は僕たちの非を認めよう。これでいいな!?」


 ウィリアム殿下は、ぞんざいな態度のままそう言った。そして、私達の返事も聞かないまま、アリアを促して、背を向けて立ち去る。その背中を追うように、ボルグやマイケルも立ち去った。

 だが、ユリウスだけがその場で立ち止まっている。そして、少し躊躇するような仕草を見せながらも、私たちに向き直った。


「迷惑をかけてしまい、申し訳なかった。殿下たちの言動も含め……改めて謝罪する」

 

 そう言って頭を下げた後、殿下たちの後を追って走り去った。

 あの中でマシな人も居たのかと、思わず感心してしまう。

 そう言えば、彼だけは私達に悪態をついてはこなかった。アリアへの庇護欲は他の3人と一緒に見えたけれど、他の事に関しては、まだまともな考え方が出来る人なのかな?

 でも、そうよね。仮にもゲームの攻略対象者たちが、みんなあのような傍若無人ばかりだったら、あのゲームは一部のマニアにさえ受け入れられなかったと思うもの。

 ユリウス・バーミケル

 宰相の息子で、バーミケル侯爵家の嫡男か。どうか、唯一、話が通じそうなあの人が、あのバカ共を少しはマシな人間に導いてくれる事を祈るのみだわ。

 でないと、ウィリアム殿下の婚約者であるモニカ様が可哀想すぎる。


 そう思い、思わずモニカ様を見ると、モニカ様と目が合った。


「モニカ様。さきほどは私達を助けて頂き、ありがとうございました」


 私はそう言って頭を下げた。

 ルシルも慌ててお礼を言って、同じように頭を下げた。


「気にしないでくださいな。理不尽な絡まれ方をしていたから、見過ごせなかっただけですわ」

 ツンとした表情でモニカ様はそう言った。

 

 なにそれ、ツンデレですか!?

 何気に顔が少し赤くなっているではないですか。

 もう、これは絶対ヒロインのアリアより、萌え要素が発動するでしょう!?


 私が一人感動していると、隣にいたルシルが、困ったように言った。


「でも本当に助かったのです。アリアさんとペアを組んでから、何かと殿下や側近の方々に、アリアさんに良くするようにと言われて……少し負担になっていたのです」

「えっ!? ルシル、そうだったの!? ごめん! 全然気づかなかった!」


 ルシルの発言に、私は衝撃を受けた。

 まさか、ルシルにそんな負担を強いていただなんて……

 自分の迂闊さが、心底嫌になる。


「先生? 錬金基礎実習はこれからもペアで行動するのでしょうか?」


 私達の会話を聞いていたモニカ様が、まだそこに居たロイド先生にそう聞いてくれた。


「そうだな……自分とは違う属性の魔力と触れ合って、感覚は掴めただろうし。魔鋼石はもともと一人で作業してもらうつもりだったから、ペアの授業は一旦終了としてもいいだろう。……君たちも色々と大変だな」


 ロイド先生は苦笑しながらそう言って、その場を去って行った。

 先生に同情されるなんて……。先生も実は殿下の扱いに困っているんだろうか……。

 私はロイド先生にも同情の視線を向けながら、去っていく背中を見つめていた。

 

 

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