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戦士オタクの勇者と、片思い中の女戦士

作者: たこす

 勇者ソラから「一緒にデートしよう」と誘われた時、女戦士ロザリアは有頂天に舞い上がった。


(デート! 勇者さまとデート! どうしよう、何着て行こう!)


 魔王討伐の旅の途中で立ち寄った大都市ミゲル。

 そこでしばらく休憩することにした一行は、各々行きたいところに散らばっていた。


 魔法使いのダンカンは本屋へ。

 僧侶のソフィーは服屋へ。

 そして女戦士ロザリアは行きたいところもなかったのでアクセサリー屋へと行こうと思っていた。


 そんな矢先、勇者ソラから

「ロザリア、一緒にデートしよう」

 と誘われたのだ。舞い上がらないほうがおかしい。



 ロザリアは一人、宿屋の自室にて空間に手を伸ばした。

 そして「ステータスオープン」の言葉とともにステータス画面を開く。

 この場にはないが、彼女が指定すればすぐにその装備に早変わりする仕組みだ。

 ずいぶん昔に発明されたもので、冒険者であれば誰もが使える簡単な魔法であった。

 彼女は、今現在持っている身体用の防具を確認した。


・かわのよろい

・せいどうのよろい

・てつのよろい

・はがねのよろい

・チェーンメイル

・ドラゴンアーマー……etc


 見事に鎧しかない。

 オシャレどころか戦闘服である。


(せめて天使の羽衣くらい欲しかった……)


 僧侶専用の防護服でロザリアには装備できないのだが、あの清楚で可愛らしい衣装は一度は着てみたいと思っていた。

 仕方なく「布の服」を着て待つこと五分。

 勇者ソラが宿屋のロビーに現れた。


「ロザリア、お待たせ」


 ソラは「英雄の服」に加え「勇者のマント」を羽織っている。

 何を着ても似合うのに、このコンビネーションは強烈だった。


(ゆ、ゆうしゃさま……、素敵しゅてきすぎる……)


 もはや言葉にならない。

 ロザリアは「あわわわわ」と口を押えながら、初恋の相手の眩い姿に目がくらんだ。


「さあ、行こうか!」


 そういうソラの手にはなぜかごついカメラを持っている。

 ん? とロザリアは思ったが気にしないことにした。


「そ、それで勇者どの。どこに行くのだ?」


 心臓をバックンバックン言わせながらも、平静を装い尋ねるロザリア。

 自分が好意を持っていることを悟られたくないがために、いつも彼女は男勝りな口調でソラに接している。

 ソラは眩しいばかりの笑顔でロザリアに言った。


「この先にある大型の百貨店だよ! 昨日、ロザリアにぴったりのお店を見つけたんだ!」

「私にぴったりの?」


 瞬時にロザリアは胸がときめく。

 愛しの勇者様が自分にぴったりのお店を見つけてくれた。

 それがとてつもなく嬉しい。

 どんな店かはわからないが。


 ウキウキしながらソラのあとをついて行くと、目の前に大きな建物が見えてきた。


「ほら、あれが百貨店だよ」

「大きいな。初めて見た」

「あの中にとっても素敵なお店があったんだ。ロザリアもきっと気に入るよ」


 ソラに案内されたロザリアは絶句した。

 彼が案内した店は、戦士専用の店だったのだ。


 凶悪そうな見た目をしている魔神のオノや、絶対呪われてるであろうデビルメイル、怨念が宿ってそうな死霊の盾まで陳列されている。


「見て見て! すごいだろ!?」


 巷ではなかなか手に入らない伝説級の武具にソラは大興奮。


「オレは装備できないけど、ロザリアなら装備できるから連れてきたかったんだ!」

「……ま、まあ、私なら装備可能だが」


 ちょっぴり期待していたロザリアは、ガッカリした。

 デートというから、町の人々のようなキャッキャウフフな世界を想像していたのに。


「試しに装備してみてよ!」


 ソラに言われてロザリアは近くにあった魔神のオノを手に取った。

 するとどうだろう。

 まるで彼女のサイズに合わせたかのようにピッタリと手に馴染んだ。


 伝説の武具は、装備した相手に合わせて形状を変えるという。


 だからだろう。

 魔神のオノを装備したロザリアは、それだけで魔王を倒せそうな威圧感を放っていた。


「カ、カ、カッコイイーーー!!」


 ソラは手にしたカメラでパシャパシャと撮りまくる。


「ポーズ! ポーズ取ってみて!」

「こ、こうか?」


 言われるがまま、ロザリアは魔神のオノを振りかざす。


「すごい! 最高!」


 ソラは下から横から何枚も何枚も写真を撮りまくった。


 戦いの最中はいつも冷静にみんなを指示している勇者ソラ。

 しかし今はまるで子どものようにはしゃいでいる。


(勇者さまって、こんな一面もあったんだ……)


 ギャップ萌えというやつだろうか。

 無邪気に笑うソラの姿に、ロザリアは胸が高鳴る。


「これ! これも装備してみて!」


 デビルメイルを装備したロザリアに、ソラはさらに大興奮。


「ひゃー! いいよ、いいよ! デビルメイルに魔神のオノを装備した女戦士! 超最高!」


 ロザリアはロザリアで、ソラがあまりにも喜ぶものだから、いろんな武具に手を出し始めた。


「これなんかどうだ? 風神の盾にミノタウロスのメイス」

「うひょう! 強そう! ロザリア最高だよ!」

「炎の盾と氷のつるぎ」

「真逆の性質をうまく利用してるロザリア無敵!」

「悪魔の兜にデビルメイル、そして魔界のハンマー」

「よっ! 魔王以上に魔王のロザリア降臨!」


 思ってたデートと違うが、これはこれで楽しかった。

 なによりソラが喜んでくれているのがロザリアには嬉しい。



「やっぱりロザリアはオレたちのパーティーには欠かせないな!」



 ど直球で胸をくすぐることを言ってくる。

 ロザリアは内心もだえていたが、表情には出さず、クールに微笑んだ。


「ふ、光栄だな」


 こうして二人は、その後数時間に及ぶ試着と撮影会を続けていった。






 そして、そんな二人を遠巻きに眺めるふたつの影。

 魔法使いのダンカンと僧侶のソフィーだ。

 彼らは一時間前から百貨店を訪れて、ソラとロザリアの掛け合いを眺めていた。


「戦士オタクの勇者ソラに、片思い中の戦士ロザリア。二人とも早くくっつけばいいのに」

「同感ね」


 二人は互いに好意を寄せ合っているのに、何も進展しない二人にヤキモキするのだった。



ちなみに魔王は勇者と戦士のラブラブコンビネーションアタックで討ち滅ぼします(笑)


お読みいただきありがとうございました。

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