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メイドと悪徳領主子息

side シア


ザルツブルグ家に仕えて5年の月日が流れました。


ニコ様は相変わらずお話になりませんが、時折外を眺めて微笑んでいらっしゃることがあります。


そのお顔を見ていると、私の胸はキュッと苦しくなるのです。


実の父親に見捨てられたおいたわしい方。

私はニコ様の境遇を思うと、涙を禁じ得ません。


実母のフランセット様は、立派な方だったそうです。旦那様の激情をいさめ、家内の者に気を配り、民へも優しく接していらしたと、離れへ勤めるようになって伺いました。


そんなフランセット様が、産後そのままお身体を悪くされ亡くなってしまわれたのが、全ての始まりでございます。


同時期にご懐妊されていた、現在の奥様も、男児をお産みになったことで、ニコ様はほとんどご家族と過ごされることがなかったのです。


元々愛妾でいらした奥様が、ザルツブルグ家の実権をお握りになり、ニコ様は乳母からの養育はされておりましたが、実父からは愛情をお受けになりませんでした。


それどころかニコ様は本邸ではいないものとして扱われておりました。メイドや使用人も奥様に厳命され、必要最低限の会話は致しません。


おそらくニコ様のお心の育ちが悪かったのもそれが原因でしょう。


私はそんなニコ様が不憫でなりませんでした。


なので隙を見て、ニコ様にご挨拶をし、簡単な会話を試みていたのです。


「ニコ様、お加減いかがですか?」

「ニコ様、今日は空が綺麗ですよ」


本当に、この程度の簡単なものでしたが、奥様はお許しになりませんでした。


ある日、私は奥様に大広間へ呼びつけられました。


「貴女、どうやらあのデク人形に話しかけているらしいじゃない。」


「あ、あの、奥様」


「言い訳はいらないの、私、アイツをいないものとして扱うように、いったわよね?メイド長?」


「はい、奥様…。私どもはそうするようにしておりましたが、どうもこの子は覚えが悪く…。」


メイド長が私をキッと鋭い目で睨みました。その目には.

(余計なことを…!!)

という怒りがありありと浮かんでおりました。


「アンタ、アイツと一緒に離れに下がりなさい。」


「え…?」


離れとは、ザルツブルグ家の中で、蟄居を命じられた方がお住まいになる場所でございます。ニコ様が4歳のことでした。


ニコ様は4歳にして、実父とも本来住まうべきお邸もこうして追われたのです。


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