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彩奈と郁美のビデオ撮影

8月16日。私たちは学校のプールでビデオ撮影を始めたが、まるで夏休みの宿題に追われてる感じが拭えない。とにかくノープランだし、気持ちに余裕がない。でも紺のスク水に着替えるやこのままではいけないと思い直した。すでにリードされた形の私たちはせめてビデオでお母さんたちに一矢報いる必要があった。まずはプールサイドでの準備体操だが、徐々に緊張がほぐれていった。すでにナタリーさんたちの胎内に入れられたかのようなぬくぬくした生活に溺れていた。だが私たちはイグニスと来月には矛を交える。いわばコレは前哨戦に他ならず私たちは負けられなかった。股を開いたシーンにフォーカスするでもなく、私たちははじめから腰砕けにされた。なぜか思考が働かずアタマの中はお母さんたちの肢体で埋め尽くされた。だがソレは私たちを欲情させ、撮影の追い風になった。イヤでも表情が綻び緩んでいい感じになれるのだ。はじめは固い雰囲気が徐々に官能的になっていった。たかが12歳児や10歳児が醸し出す色香など知れていたが、私たちはたちまちビデオ撮影にのめり込んだ。園児用の浮き輪を細いからだに通し、カナヅチをアピール。プール内でのシーンは少なく、せいぜい私たちがプールに浸かるシーンにとどめた。水に浸からないとスク水の生地から水が滴り落ちるシーンが撮れないからだ。私たちはようやくプールサイドで股を開いたシーンにこだわり、カメラを回した。撮影を重ねるたびに私たちはイグニスの胎内から出て本来の姿に戻りつつあった。あ、あんなに惰性に満ちた生活に溺れてたのに。部屋に閉じ籠もり、お母さんたちの肢体に欲情しまくってた昨日までの生活がウソのようだ。撮影を重ねるたびに私たちは仄かな自信を感じられた。もしかしたら勝てるかも。脱衣所でのシャワーシーンも手を抜かない。私たちは蛇口で水を飲むシーンにこだわった。もちろんスク水姿のまま。私たちはまるで生温かい精液を放射されたばかりのようなシーンを演じた。帰宅してもなお私たちは止まらなかった。制服の白のセーラーと紺のブルマーに力を入れた。私たちはラベンダーとライトグリーンとピンクと白の下着で上下を統一。あえて薄い色の下着を透けさせる作戦に出た。「私たちでしか抜けないようにしてあげようよ」「そうね」私たちは制服姿になり、スカートを履いてイグニスを焦らすことにした。それから白のワンピース姿になり、やはり濃い色の下着を透けさせる作戦。さんざんナタリーさんたちを焦らした末、ようやく下着姿をお披露目。だがあえてリビングと廊下での短い撮影にとどめた。圧巻はピンクのネグリジェ姿。寝落ちする瞬間ではなくウトウトするシーンにフォーカス。翌日はもちろん寝起きを撮り、私たちは撮影を終えた。だがまだまだお母さんたちの胎内から出られず。すぐ私たちはいつもの惰性に満ちた生活に戻された。残念ながらイグニスのビデオレターには打ち勝てず私たちはやっぱりぬくぬくしたお母さんの胎内を求めた。そこには絶対的な安心感があり何ら思考が働かない。私たちはビデオ編集すらしなかったし、たまにビデオを見返すだけ。たぶん未編集でも赦してもらえるという甘えと惰性が私たちを支配していた。もちろんカカシになりきる訓練やヨガのエクササイズは欠かさないが、それがどこまで実戦で通用するかわからない。だが私たちはビデオ撮影を終えたことで満足したし、それ以上のことができるなんて夢にも思わなかった。毎日朝と夜にお母さんのビデオレターを見返すのが私たちのルーティンと化した。それだけ私たちは母親の温もりを強く求めていたし、ナタリーさんたちの言葉を聞くたびに安堵した。かと言って別にイグニスは私たちに惰性に満ちた生活を強要したわけではなく、単純に私たちがお母さんたちの胎内に入れられただけ。なのでビデオ撮影がそこから出る突破口にはなり得ず。私たちは相変わらずぬくぬくした生活を満喫したし、リアルに何ら悦びを感じられなくされていった。私たちはノワール公国から新たなるミッションを与えられた。それは[エンジェルクライ]のモデル。期待の新作アニメだが、伊坂芹夏と妹の朋華がイグニスに優しく躾けられていくお話。12歳の芹夏と10歳の朋華はまさに私たちそのものといえた。詳細は未定ながら10月1日放映予定。いきなりアニメのモデルだなんて。私たちは悦びに打ち震えた。となればお母さんたちを卒業しなきゃいけない。だがなかなかナタリーさんたちの深い愛が赦してくれない。私たちはお母さんたちへの強い甘えとそろそろ自立しなきゃいけないという葛藤に悩まされた。だが参戦も取材も来月だし、すでにビデオは撮り終えた。私たちはなかなかイグニスの呪縛から解き放たれることがなく、甘えと惰性に満ちた生活から抜け出せなくされた。「来月から変わるわ」「参戦と取材が来るからね」私たちはそう言って慰め合った。

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