伽耶と真麻のビデオ撮影
8月10日。私たちは学校のプールでビデオ撮影を始めた。紺のスク水に身を包み、はじめはプールサイドで準備体操するシーン。逆光を意識して七色の後光を採り入れながらも股を開いたシーンにフォーカスした。次は園児用の浮き輪を用意し、からだに通してカメラを回した。私たちは泳ぎが苦手だからあえてカナヅチをアピールしたのだ。プールに浸かり、スク水から水が滴るシーンも撮ったが、圧巻はやっぱりシャワーを浴びるシーン。私たちは水泳帽を脱ぎ、髪を洗い流すシーンにこだわった。次は白のワンピース姿だが、これはリビングや廊下での撮影になった。お母さんたちと同じく濃い色の下着を透けさせるから屋外での撮影が難しいのだ。幸いにも私たちはマンションの5階に住んでいるからストーキングや盗撮の恐れはない。下着の色は赤とパープルとブルーと黒。美人のお母さんたちに合わせ私たちはそのミニチュア版をアピール。いきなり下着姿を見せると後がしんどくなると事務員に忠告された。だからこそまずは白のワンピース姿を引っ張ることでコルトたちを焦らす必要があった。もちろん狭い屋内だからバリエーションは乏しいが、私たちはひざまでのニーソックスをアクセントに使った。ベッドの上でニーソックスを履くシーンにこだわり、左斜め前から撮っていく。ニーソックスは4色。チャコールとグレーとブルーとボルドー。これは秋の続編に同じ色のオーバーニーソックスでバロンを腑抜けにする伏線でもある。ワンピースの次は白のTシャツと白のミニ。はじめはこの格好で濃い色の下着を透けさせ、徐々にミニを脱いだりTシャツを脱いだりした。そしてようやく下着姿のみの撮影だが、こちらはあえて短めに抑えた。圧巻はやっぱりネグリジェ姿。私たちはピンクのネグリジェに身を包み、女子会を撮影した。まずは何気ないシーンで彼らを焦らす。そしておもむろにウトウトしたシーンに切り替わるのだ。寝落ちした瞬間は撮り損ねたが翌朝は寝起きを撮り、私たちはビデオ撮影を完了した。あとは編集したり必要に応じてビデオを撮るだけ。同じ頃。野崎姉妹がグダグダしていた。本来ならばビデオ撮影を始める頃だが、彩奈たちはいまだにナタリーたちのビデオレターを見返す有り様。まだビデオの内容すら決まっておらず私たちは心配になった。だがビデオの提出は義務ではないし、初戦に間に合わなくても何ら問題はない。野崎姉妹は[お母さんたちのビデオを見て参考にする]名目でビデオにズブズブのめり込んでいった。だがいっこうに彩奈と郁美のビデオ撮影が始まらなかった。かと言って事務員が咎めるわけでもなく、野崎姉妹はイグニスの円熟したからだにすっかり魅了された。そのため私たちがビデオを撮る必要なんてあるのかな?という感情に囚われた。だがさすがにお世話になる側がビデオを出さないわけにはいかない。確かにナタリーさんたちは私たちにビデオを求めなかったが、かと言って出さないまま本番を迎えるのは心苦しい。だがもうちょいお母さんたちのはち切れんばかりの肢体に魅了されていたいという欲求には打ち勝てなかった。ビデオレターの威力は凄く、彩奈たちは身もココロもイグニスのトリコにされていった。野崎姉妹はズルズルとビデオ撮影を引き延ばすようになったが[ナタリーさんたちが魅力に溢れてるから]と言い訳した。私たちは彩奈たちを信頼しているから強く言えないが、これは野崎姉妹に与えられた試練だと受け止めた。もしかしたら彩奈たちはこのまんまズルズルとイグニスに絡め取られ、食われちゃうかもしれない。だがひとたび先駆けを任せた以上、あとは野崎姉妹次第。彩奈たちはようやく重い腰を上げることにしたが、すでにビデオレターを10回以上見た後。しかも何らプランがなく、野崎姉妹は当惑した。アレだけお母さんたちの肢体を堪能したのになぜ?理由は単純。いくらビデオレターを見返しても[自分たちが撮る意識]でなければ何の意味もない。彩奈たちはあまりにも幼すぎたため、そこまで深い考えに至らなかった。単純に[ナタリーさんたちのビデオを見ればきっといいビデオが撮れるはず]と無邪気に信じ込んだに過ぎない。だが現実は違った。野崎姉妹はひたすらイグニスの魅力にズブズブのめり込まされただけ。そもそもお母さんたちに勝てる気がしないから彩奈たちは思考を働かなくされた。ただただイグニスの魅力に呑み込まれてしまっただけ。となれば[今から凄いビデオを撮ろう]なんて思うわけない。「何を撮ればいいの?」「色香でお母さんたちに勝てる気しないわ」野崎姉妹は途方に暮れ、ズルズルと惰性に満ちた生活を続けた。ビデオレターから始まる朝は爽快だし、生活にほどよい潤いをもたらした。でも何かが足りない。私たちは誇り高き魔法戦士としてまだ何も成し遂げていないのだ。「何とか一矢報いないといけないわ」「せめて一太刀浴びせないとね」