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悠花と真麻のお仕事

7月27日。私たちは事務所の更衣室で白のセーラーと紺のミニに着替えた。下部組織に野崎姉妹を加え、私たちは華やかな雰囲気に。彩奈と郁美はブルマーを脱ぎ、早くも成長を見せた。事務員は気さくで親しみやすく、実家みたいな息苦しさを微塵も感じられない。高圧的な人がいない環境は新鮮に感じられた。野崎姉妹に与えられたのは新作アニメのシナリオ。はじめは当惑したが、必ずしも魔法戦士の物語でなくても可。異世界は魔法戦士の文化に連なる作品を求めたが、向こうはお姫さまくらいしかその資格を持たない。だから庶民に広がらないのだ。縛りがないから考えやすいし、さっそく彩奈と郁美はAIも使わずにプロットを練り始めた。島田風花と三沢優子は12歳でクラスメイト。[石の森]を読んだ2人はさっそく早苗みたいな奇行を演じるべく話し合いを始めた。だが今はデジタル社会。もはや早苗みたいな奇行が罷り通る時代ではない。ガッカリした2人は異世界に舞台を求めたが、意外な形で実現した。それは喫茶店のバイト。向こうは実にさまざまな喫茶店文化が爛熟していた。リアルとの違いはネットカフェやメイド喫茶がないことだが、コスプレ喫茶みたいな文化がある。風花たちは喫茶店でバイトを始め、いきなりお触りの洗礼を受けた。だが2人は性的な悦びに目覚めてしまい、気軽に始めたバイトをやめられなくなってしまう。野崎姉妹の合作[女給さん始めました]は私たちが読んでも面白かったし、リンゼイも絶賛した。「意外とこんな作品ないのよ」「そうなんだ」しかも舞台が夏。異世界は日本と季節のめぐりが同じだからコスチュームの露出度が上がるし、向こうは満10歳から働ける。「取材とかできればもっと書けます」「それはいいわね」私たちは取材を兼ねて彩奈たちをノワール公国に連れ出すのも悪くないと感じた。だが魔王さまの承諾が不可欠。彼らの承諾がなければ私たちは自由に動けないが、魔王さまが反対する理由がない。事務員は[渡航申請]を出した。異世界は魔法戦士の文化に連なる作品が欲しいが、バロン制度だと参戦者が増えないジレンマを抱えていた。しかも今年は猛暑だから夏場が閑散期。向こうはそんな作品を書ける人が極めて少ない。加入したばかりの下部組織の子たちにこんな依頼が来るほど庶民のニーズが拡大していた。何しろアナログ社会だから娯楽が少ない。漫画の週刊誌すらなく、ノワール公国は月刊誌がいまだに主流。しかも5誌しかない。ライトノベルもないしアニメもゲームも見当たらない。いわば40年前の日本とあんまり変わらない状況。魔法戦士の漫画やアニメも一般的ではないし、ましてや庶民の話題にのぼることも少ない。だがポテンシャルは極めて高く、かなりの経済効果が見込めた。かと言って庶民は見る目が高いから王道のアニメなんぞ放映したらえらい目に遭う。かつて京アニ事件が起きた時、誰ひとりとして京都アニメーションを知る者がいなかった。いまだに庶民は青葉が[もっとマトモなアニメ作らんか]とブチ切れたに違いないと思い込んでいるほどだ。異世界における京都アニメーションやシャフトの価値なんぞその程度に過ぎない。かと言って新海誠レベルのアニメーターはおらず、誰もあのレベルは求めていない。要はくりいむレモン以上であればそれでよく[アキラ]くらいのキャラの動きで充分なのだ。彩奈たちの作品はアダルトゲームの黎明期みたいにヒットする可能性があった。例えば[Piaキャロットへようこそ!!]は252色しか使っていないが、色鮮やかなイメージしかない。[女給さん始めました]は才能溢れるクリエイターと組めば魔法戦士の文化に連なる作品としてヒットしそう。[アニマージュ]に紹介されれば話が早いし、リアルのアニメ雑誌とは影響力がまるで違う。野崎姉妹は早めに帰されたが、私たちは彼女たちの才能に驚いた。「てっきり魔法戦士の物語を書くと思ったわ」「名古屋は喫茶店文化が爛熟してるけどね」でも下部組織とかに関係なく仕事を任せきるのが異世界流。そこには年齢とか関係ない。もはや参戦しなくてもふつうに仕事をもらえる時代なのだ。私たちの頃は違った。参戦して初めて付加価値が生まれたが今は違う。必ずしも参戦だけが全てではなくなりつつある。参戦しなくてもふつうに豊かになれる時代が来たし、私たちですらただの戦乙女ではいられなくされた。平時ですらノワール公国のエージェントとして魔王さまにお仕えするし参戦以外にも寄与しないといけない。魔法戦士は有事に戦うだけでなく、平時ですら下部組織の運営や雑務に励むことを義務付けられた。もちろん邪教法華みたいな[ただ働き]はなく、その都度かなりの報酬が与えられた。帰宅した私たちはヨガのエクササイズをこなしてからぬるいシャワーを浴びた。やはり下部組織の運営は励みになる。「彩奈たちを育てたいわね」「必ず幸せにするわ」

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