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「着いたな」
「夜景を見たいなんて面白いことを言ってきたときは驚いたけど、こうして来られてよかったとすぐに意見が変わったわ」
「だろ? ここからの景色を純花にも見てもらいたかったんだ」
歩いて行ける距離ではなく車でないと時間がかかるぐらい距離がある場所、そういうのもあって普段見ているものとはなにもかもが違っているような気がした。
もちろんプラシーボ的なものがあるのは認めるしかないけど、うん、そう言いたくなってしまうぐらいにはキラキラしていて静かでいい場所なのだ。
「でも、なんでこんなに離れた場所のことも知っているの?」
「実は元彼女が教えてくれた場所なんだ」
「へえ、春生を喜ばせるためにたくさん調べたのかもしれないわね」
もしそうならちゃんと彼女ってやつをやれていることになる。
いやまあ、相手を喜ばせることだけが彼女の役目というわけではないけど、そんな人の彼氏になれてよかったのではないだろうか。
「ここら辺りに実家があって暇なときはよくここに来ていたみたいでな」
「え、それなら向こうで一人暮らしをしていたの?」
「ああ、出会い方も純花と白間みたいな感じだったぞ」
私の場合は春生がいたから六と~とはならなかったものの、彼とその人の場合はそのまま惹かれ合ったということになる。
……終わりが微妙だからなんとも話づらいことだけどね、せめて友達以外の人間に取られなさいよ……。
「でも、取られてよかった」
「そんなこと言わないの」
「いいんだよ、だってそうでもなければ純花を求めることはできなかったんだから」
「なんか微妙ね、まあいいけど」
その人とちゃんとしていればもっと堂々と出かけたりできたのになにをしているのかと言いたくなった。
「全部純花で上書きしたいんだ」
「しなくていいからこれからもこのままでいたいわ」
「あ、当たり前だろ」
「うん、じゃあそろそろ帰りましょ、冷えたわ」
過去は変えられないからいまからを変えていけばいい。
大丈夫、私ならいつでも家で春生のことを待っている。
嫌になってもずっといるから安心してくれればいい。
「好きよ」
「ありがとう、俺も好きだぞ」
「ふふ、なら両思いでいいわね」
え、ちょ、帰る前にただ言っただけなのに真剣な顔で見られてしまっている。
ど、どうしたらと固まっている間に頭を抱かれて苦しくなった。
「……お世辞マシンから欲情マシンに変わってしまったの」
「違うよ、ただ俺がこうしたくなっただけだ」
「はは、だからそういうことじゃない」
「ち、違うからなっ?」
違くてもそうでもどちらでもいいから早く走らせてほしかった。
暖房があるとはいえ、朝まで車で過ごすのは嫌だった。




