接吻
前作『過陰』から、大分間が開いてしまいましたが、なんとか投稿にこぎつける事が出来ました。
前作を未読の方でも読めるようにしているつもりですが、前作も読んで頂けるとより一層楽しんで頂けるかと存じます(宣伝です(笑))。
白い部屋。
ベッドの他には何も無い空間。
そのベッドに、静かに眠る、僕の主。
神様の腕から抜け、そっと顔を覗き込む。
美しい、御顔、御声…存在全てが、美しく、愛しい。
『神様…?』
そっと、声をかける。
『…神様…』
自分自身の中に存在する“何か”が、爆発しそうになる。
こんな感情、抱いてはならないのに。
…ならないのに、抱いてしまった、重く深い罪。
『神様…御許し下さいませ…』
目を閉じ、神様の唇に限り無く近い場所に、触れるか触れないか、乗せる程度の力で、そっと口付ける。
――甘い蜜を舐めているような感覚。
禁断の果実も、こんなものなのだったのだろうかと、想像させる。
禁断の果実を口にした者は、何を思ったのだろうか。
そして、何を得、何を失ったのか。
しかし、そんな事はどうでもいい事でもある。
大事なのは、今僕の前に神様が存在しているという事。
ただ、それだけ。
『神様…愛して…愛しております。』
全てを込めて、眠る主に伝える、愛の言葉。
『神様…』
神様の腕の中に戻り、そのお美しい御顔を見つめ、思う。
ずっと、こうしていたい。
ずっとずっと、己が存在消え去るまで、この御方の腕の中で…。
…叶わぬ、夢。
でも、今はこうしていられる。
今この時は、間違いなく、この御方は、僕の隣りに存在している。
腕を神様の背中に回し、抱き合う形になり、瞼を閉じる。
今は、こうしていよう
今だけは、幸福を味わっていよう。
この御方と契り、この御方の腕に抱かれ、静かに眠ろう。
『神様…』
体を神様にすりよせ、そっと意識を手放す。
…愛している。
神様を、愛している。
この御方さえいれば、他には何もいらない。望まない。
『…神…様…』
愛しています、主よ。
「……。」
瞼が重い。
公園のベンチなどと言う所で寝て、十分な睡眠が取れていないせいなのか、はたまた、心の奥底に眠らせていた、己の暗い過去を、何万年ぶりかの夢に見たせいなのか。
どちらにしても、気分は良くなかった。
「よっ、と…。」
ベンチで寝ていた男――リストは、上半身を起して、空を見上げた。…雲行きは怪しく、いつ降り出してもおかしくない様に見える。
「あ~…ここに長居は出来なさそうだなぁ…。」
リストはそう呟くと立ち上がり、薄汚れたマントを着直した。
「行きますか。」
目を完全に隠す様にフードを深く被り、口元をわずかに歪めると、リストは歩き出した。
現世にて活動する悪鬼…“過陰”が、世を乱していないかを確認する為――…。
「ふぃ~、なんとか降られる前に着いたな。」
駅の改札口に来るなり、リストは呟いた。
周りには、スーツ姿の男性などが多く、汚いマントを羽織ったリストは、言うまでも無く目立っていた。リストは自分へ向けられた多数の視線に気付くと、困った様に苦笑した。
「流石に、この格好は目立つかなぁ?…ま、いいや。さっさと済ませよう。」
リストはそう呟くと、その場にしゃがみ込んで左手を地面に当てた。
彼の漆黒の目が、怪しげな光を帯び、地面に当てた手の内側から、その一点を中心に黒い波が波紋を描いて広がった。
そしてその瞬間、彼の周囲に存在する全てのモノが、その動きを止めた。
「…よし。」
リストは立ち上がり、駅にある売店に近付いた。
そして新聞を手に取ると、固まったままの売店の女性を見た。
「ごめん、僕お金持って無くて…。」
困り顔で女性にそう語りかけると、駅を後にしようとした。
「あっ。」
しかし何かを思い出したような声をあげ、また売店に戻ると、板チョコを手に取った。
「ごめん、僕お腹空いちゃったから、これも貰っていくね?」
未だ固まったままの女性に、今度は満面の笑みで語りかけると、今度こそ本当に駅を後にした。
「へぇ…これは意外な展開だなぁ?」
リストは心底驚いたような声を出した。
…彼は今、山奥に造られたトンネルの中にいる。
今朝調達した新聞に書かれていた、11人無差別連続殺人事件の記事。
彼がいるトンネルは、その事件の現場である。
記事によれば、3日間に渡り同じ場所で11人と言う膨大な数の人間が殺されているにも関わらず、犯人は未だ見つからず、有力な情報すらも手に入っていない状態との事だった。
リストは、警察をものともせず、そのような常識外れの事件を起こせるのは、神への反逆者、“過陰”しか考えられないと睨み、事件の犯人を世から抹消すべく、ここにきていたのだった。
――しかし。
彼の予想は、外れた。
今彼の前に立つ者は、“過陰”ではなかった。
そこに立つ者は、神の奴隷。
神に従属を誓った者だった。
「御久し振りですね、リスト様。」
リストの目の前に立つ青年が、一歩前に進んでリストに話し掛けた。
時間帯はまだ4時程だが、トンネル内は暗く、辺りは殆ど暗闇だ。
しかし、その暗闇の中でもハッキリと分る程に、その青年は美しかった。
リストは被っていたフードを取ると、笑みを作って対応した。
「久し振りだね、ルサファ。元気だったかい?」
ルサファ、と呼ばれた青年は、リストに近付くと、跪いて答えた。
「は、リスト様も、御元気そうで何よりですが…。」
ルサファが、リストの顔を見上げて悲痛な顔をした。
「貴方様は、あの御美しい碧き瞳を失ってしまわれたのですね…。」
リストは苦笑した。
「僕は汚れた“過陰”だ。神の従属のみが持つあの碧き瞳は、僕には相応しくない。」
それを聞くと、ルサファは立ち上がった。
「…その件に関して、今回は貴方様にお話があるのですが。」
ルサファは真面目な目付きになり、その碧い目をリストに向けた。
漆黒の瞳と深緑の瞳がぶつかる。
「…話、ね。一体何かな?」
リストは少し寂しそうな笑顔を作って言うと、“内容は大体察しがつくけどね”と呟き、ルサファに先を促した。
するとルサファはまた跪き、上目線でリストを見つめると、ゆっくりと言った。
「神の元にお戻り下さいませ。神は、貴方様の存在を望んでおられます。」
「……」
リストはルサファの言葉を聞くと、少しの間目を閉じ、すぐにまた漆黒の瞳でルサファを見た。
「それは出来ない。僕はもう過陰なんだ。君達のような神の奴隷ではないんだよ。神に背いた、醜い化け物さ。」
「しかし!」
ルサファは叫び、跪いたまま、リストの右手を取った。
「貴方様はその昔、神の最高位奴隷にまで登り詰めた御方!神の寵愛を受け続けた御方だ!その貴方様が、何故過陰になど…!」
「ルサファ」
リストは右手を握っているルサファの手を振りほどいて、背を向けた。
「確かに、君の言う通りだ。」
リストは少し痛々しい表情になると、自分の目と胸に手を当て、呟いた。
「この漆黒の瞳がまだ碧く、この心がまだ神の手の内にあった頃、僕は神の寵を受け、最高位奴隷にまで登り詰めた存在だった。…しかし…」
リストはルサファを省みた。
「ルサファ、君も知っているだろう。僕は神を疑い、自ら下界に墜ち、碧い瞳を失い、心を得、過陰となった。もはや僕が神の元に戻る道理は…」
「それは違います!」
ルサファはリストの話に割り入り、訴えかけた。
「道理とは神の御意思!神の御意思こそが道理!神が望めば、それは道理となり得るのです!さあ、神の元へ参りましょう!そしてかつての貴方様の美しき存在を、もう一度…!」
「もうやめてくれ!」
「…!リスト様…!」
「もういい、ルサファ。君では無理なんだ。…いや、誰にも無理だ。僕を神の元に戻すなど、な。」
「…では、本当に神の元に戻る気はないのですね。」
「…うん。」
リストの返事を聞くと、ルサファはゆっくりと立ち上がり、冷たい目でリストを見た。
「そうですか。ならば貴方には消えて頂きます。」
「…」
リストは振り向くと、ほんの少し悲しげな表情でルサファを見つめた。
「私は貴方を敬愛しておりました。気高く、美しい貴方を。しかし、過陰となった貴方はもはや、それに値しない。」
「…ルサファ、僕は…」
「喋るなクズめ。」
語調を激しく変えてリストの言葉を遮り、ルサファはなおも続ける。
「…何故神は過陰などに墜ちた貴様を欲するのか。私には理解できない。確かに貴様は美しく、その魂魄は眩い光を放つ程に計り知れぬ深さを持っている。」
ルサファは今までの冷静な表情を憎悪に崩し、リストを睨み付けた。
「だがそれが何だと言うのだ!所詮貴様なぞ裏切り者のゴミだ!貴様なぞより、私の方がずっとずっと…!」
ルサファは涙を流しながら叫んだ。
「神を愛しているのに!」
少しの静寂の後、ルサファはまたリストを睨み付け、右手をかざしながら言った。
「死ぬがいい裏切り者よ!貴様も、神の糧にすらなり得ないあの出来損ないの人間達同様、見るも無残な姿にしてやろう!」
叫んだ直後、ルサファのかざした右手に光が集まり、光玉を成した。
それを見たリストは、とっさに右手を地に付けた。
「広がれ!」
ルサファの方が若干早いが、二人がほぼ同時に同じ言葉を叫ぶ。
すると、ルサファの光玉からは眩い光が、リストの右手からは先程よりどす黒い大波が発せられ、それらがぶつかった瞬間に、辺り一帯が光につつまれた。
「ぐっ…何故だ…っ!」
ルサファが目の前の光景に顔を歪ませた。
「…ルサファ、君の“場”は僕の“場”に打ち消された。…もう諦めるんだ、今引けば、あえて追わな…」
「黙れェ!」
ルサファはリストの言葉をはね除け、鋭いまなざしを向けた。
…二人は、先ほどのトンネル内ではなく、暗闇の中に立っていた。トンネル内以上に暗く、二人の姿しか浮かばない特殊な暗闇。
この暗闇は、リストが作り出した“場”であった。リスト、ルサファの両人が作り出した二つの“力”が激突したあの瞬間、二人は互いに己の“場”を作り出し、相手をその“場”の中に引きずり込もうとしたのだ。
“場”とは即ち、作り出した本人の分身を空間化したものである。
故にその中に引きずり込まれれば、“場”を作り出した人物の一部となり、否が応でも“個”、つまり自身の身体能力、思考展開力、精神力などを削られ、戦闘となれば圧倒的不利な立場に立たされる。
その“場”がぶつかりあった瞬間、ルサファの“場”は、リストの圧倒的に強力かつ広範囲な“場”に塗潰され、ルサファはリストの“場”に引き込まれたのだ。
そして今に至る。
「“場”なぞ無くとも、貴様ごとき薄汚れた過陰を滅すのは容易な事だ!」
ルサファは言い放つと、両手を突出した。
「思い知らせてやる…!貴様と私の力の差を!」
叫びと共にルサファの右手に光が集まり、剣の形を成した。
「消えろッ!」
剣の出現に間髪入れずルサファがリストに斬りかかる。
「…ッ!」
リストはこれを寸前で避け、後方に飛び退く。
しかしルサファも引き下がらず、再び剣を振り上げリストの脳天に振り下ろす。
リストも今度は下がらず、マントの内側から刃渡り30センチ程のナイフを取り出し、ルサファの剣を受けた。
ルサファは剣を引き、体勢を整え三度斬りかかろうとする。リストはルサファが一瞬引いた隙に、ナイフを持たない左手をルサファに向けて突出した。
「襲え!」
リストの言葉と共に、突出した左手から無数の紅玉がルサファ向けて飛び出した。
ルサファは一瞬顔を歪ませたが、剣を振り紅玉を払う。
しかし、振り払った拍子に剣が紅玉に触れ、瞬間紅玉が爆発した。一つの爆発に連鎖し、無数の紅玉が一気に爆発する。
纏わりつく様な連鎖爆発により、ルサファの剣が耐え切れずに砕けた。
「うゴぶッ」
剣が砕け散り消えた瞬間、ルサファが大量に吐血する。
ルサファの創り出した剣は、“場”と同様に、ルサファの分身であるため、破壊され、そのダメージが創造主に還ってきたのだ。
しかもここはリストの“場”であるため、ルサファは自身の力を削られ、創造物の強度や威力も制限が設けられる。故に通常より脆く、破壊された時に生ずるダメージも増す。
しかし、その多大なダメージを受けながらも、ルサファは再び攻撃すべく、リストを睨み、両手を突き出す。
「砕けェッ!」
叫びと共に口から血塊が零れ落ちる。
そしてルサファの声に呼応するように、突如リストの足元から巨大な手が生え、リスト目掛けて振り下ろされた。
リストは咄嗟に後ろに飛び、左手から先程と同様に無数の紅球を巨大な手に向けて飛ばした。
リストを追う手は紅球を受けながらも、怯むことなく追い続ける。
リストの紅球が尽きても、巨大な手は止まるどころか更に勢いを付けて猛威を振るい続けた。
手から逃げ続けるリストを見たルサファの血走った眼が、ここぞとばかりに狂気を増す。
「これで…死ね!」
ルサファの声に反応し、前方から襲われていたリストの後ろから、もう一本、巨大な手が現れた。
リストの目が見開かれ、双手が迫った瞬間、リストの右手に握られたナイフが煌めいた。
切断され、倒れ込む巨大な手。
リストがナイフを振るう度に、巨大な手の指が落ち、手首が裂かれ、鮮血が吹き出た。
「う…あああああッ!」
リストの手によって双手が完全に肉塊に変えられた瞬間、ルサファの苦痛の叫びが響いた。双手を切り倒されたダメージを受け、ルサファの両腕が半ばで切断され、血をまき散らしていた。
「…ルサファ」
両腕を失い、その場に崩れたルサファに近寄り、リストが話し掛ける。
「帰るんだ。…これが、最後の忠告だよ。」
「…唇」
「…何?」
「…その唇が、神の接吻を受けた。」
ルサファは体勢も変えぬまま、微かな声で、しかしハッキリと呟く。
「その身が、神の愛を一身に受けた。」
「…」
「神は、我らに決して接吻をなさらず、接吻する事を許さない。」
「…ルサ…」
「貴様だけが!なぜこんなにも愛されているのだ!!」
ルサファはいきなり立ち上がり、リストを睨んだ。美しかった顔が、吐血により血塗れになり、目は異常に充血し、まるで死人のように変わっていた。
「貴様だけが!神に接吻する事を許され!そして…神に唯一接吻を求められた!」
ルサファは涙を零しながら叫び、俯いた。
「私だって…神を、神を愛しているのに…こんなにも、愛しいと感じているのに…神は、今も貴様しか見ていない…」
「…済まない…」
リストはルサファの前で膝を着き、優しく肩を撫でた。
「…違います。分かってるんです。リスト様は悪くない。神の元を去ったのも、理由あっての事だと分かっています。そして、貴方が誰よりも神を愛している事も。」
「ルサファ…」
「貴方は美しい。神の寝所で眠っていた時は勿論、過陰となった今ですら…。」
「…」
「でも…」
ルサファは血と涙で濡れた顔をあげ、リストを悲しげに見つめた。
「それでも、神に見てもらえないことが、愛されないことが、悲しくて、苦しくて、狂ってしまいそうで…。」
「…ルサファ、もういい。もう分かったから、神の元へ帰るんだ。」
「…それは…できません。」
ルサファは弱々しい笑顔を作り、リストの手を離れ、ばたりと倒れ込んだ。
「ルサファ!」
「…私は」
ルサファを助け起こそうと駆け寄ったリストの腕の中で、ルサファが呟く。
「私は、神への許されざる感情を喚き散らし、過陰に敗北した。こんな存在が、再び神に相見える事など、どうして出来ましょうか。」
「…なら…なら、どうすると言うんだ。今ここで消えるとでも言うのか。」
「…リスト様…あなたは…知っておられるのでしょう?過陰を、私達神の従属を消し去る、その法を。」
「…僕に…ルサファ、君を殺せと、そう言うのか。」
ルサファは今にも泣き出さんばかりに歪められたリストの顔を見つめながら、微笑み、穏やかな顔で言う。
「夢のようです…リスト様。あなたの腕に抱かれながら、このような最期を遂げられる事が。」
「…出来ない。出来ないよ、ルサファ。君を消し去るなんて、出来るはずがない。お願いだ、神の元へ帰ってくれ…。」
ルサファの髪を撫で、優しく諭すようにリストが言う。しかし、ルサファは穏やかな表情を崩さず、消えそうな声で返す。
「リスト様…もう、限界なのです。私はもう、駄目だ。壊れてしまった。…だから、最期の我がままを聞いて下さい。貴方の手で、私に安息を下さい…。」
リストはその言葉を聞くと、少しの間目を瞑り、やがて開くと、ゆっくりと切り出した。
「…綺麗だ、ルサファ。君は本当に美しい。そんな汚れの無い君に…これから僕が行なう所行を…どうか許して欲しい。」
リストはそう言うと、ルサファの上半身を抱き上げ、その瞳を覗き込んだ。視線が交わり、やがてルサファがそっと目を瞑る。
リストは、その唇に、そっと口付けた。
ルサファの目からは涙が零れ、リストは右手を掲げて光球を作り出した。そしてナイフを取り出し、作り出した光球に突き刺す。光り輝いていた光球は突き刺した場所から次第に赤黒く染まって行き、真っ黒になった瞬間に砕け散った。
光球が砕け散った瞬間、ルサファが目を開き、リストが唇を離した。ルサファは虚ろな目で空を見つめ、ポツリと呟いた。
「あぁ…主よ…愛しています…。」
一陣の風が吹き付け、ルサファとリストを撫でる。次の瞬間、リストの腕の中から、ルサファの姿は消えていた。
「僕なんかより…ずっとずっと綺麗なくせになぁ…なんでだろ…ずるいよね…?」
消えてしまったルサファを抱き締めるようにかがみ、リストは何かに問うように、そっと呟いた。
「…あれ?」
トンネルを抜けて歩いていたリストは、ふと自分の頬に触れると、間の抜けた声を出した。
「濡れてる…あれ、僕、泣いてるのかな…?」
確かめようと目元に触れた瞬間、水滴が頬を打った。そしてそのまま、勢い良く雨が降り出す。
「…なぁんだ、雨かぁ…。」
リストは天を見つめた。…頬を伝ったアレは、本当に雨だったか。もしかしたら、あれが…涙、というものかも知れない。心を持つ過陰は、自由に涙を流す事も出来るのだから。
「どうだろう…ねえ、ルサファ?」
リストは苦笑して、今はもう無い存在に話し掛ける。
「…僕、知ってるんだ、ルサファ。分かってるんだよ、ちゃんと。…僕も君も…」
過陰でも神の従属でも、本質は変わらない。だって今でも、こんなに神様が愛しいのだから。
「…」
不意に、ルサファとの口付けが思い出された。なぜあんな事をしたのか分からなかった。ルサファへの同情なのか、それとも神への抑え切れない思いなのか。
「…あぁ、空が遠いなぁ…」
降りしきる雨。リストは天を見上げたまま、少しの間、その場に立ち尽くしていた。
ご愛読、本当にありがとうございました。
個人的な問題が色々とありまして、結果的に前作から長い間が開いてしまいました。誠に申し訳ありません。
実は前作を投稿した一月後には既に完成していまして、あとは投稿するのみの状態だったのですが、作品に対する葛藤やらでなかなか投稿に踏み切れず、長い年月寝かせてしまうという事態になってしまいました。
しかし、自身の未熟さはそれで受け止めようと覚悟を決め、厨二丸出しのまま、手直しせずに作品を投稿する事とし、今回の投稿に至りました。
『過陰』シリーズは、まだ続きます。自分自身、まだまだ書きたい部分が山程ありますから、終わらせる訳にはいきません。頭に超が付く遅筆なので、完結がいつになるかは分かりかねますが、それでも書いていきます。よろしければ、お付き合い下さい。
最後に、今一度御礼申上げます。ご愛読、本当にありがとうございました。
追伸:誤字脱字等がございましたら、どうかお知らせ下さい。よろしくお願いします。
その他、執筆に関するアドバイスや感想等もお待ちしております。励みになりますので、どうかよろしくお願いします。




