お外に行こう! 2
ーーーボンツネガ平原中域
「今、丁度半分ぐらい来てますね」
地図を広げながら、あいらんが自分達がいる場所を示す。
ボンツネガ平原は、南側出入口、中域、ボスフィールド、北側出入口、とおおまかに四つのエリアに分けられる。
南側出入口から入ったあいらんたちは、ボンツネガ平原の中域との境目まで来ていた。道中、夜叉丸が獅子奮迅の大活躍をしていたので、あいらんやスケはほとんどMPが減っていない。ただ、このままではスキル上げができないとスケが言い出し、中域からはあいらんたちも積極的に魔法やスキルの使用をしていくつもりだ。
「と、いうことでしばらく避けタンク役をよろしく。あんまり、攻撃しないでくれよ? 夜叉丸が攻撃すると大抵クリティカルヒットになるんだし」
「わかったって。あいらんちゃんもそれでいい?」
「あの、もしも魔法とか外れた場合、どうすればいいですか?」
あいらんが不安そうに告げると、夜叉丸がサムズアップした。
「その場合は俺に任せてくれ。俺があいらんちゃんのところに行く前に、ターゲットを取るから」
「いや、それって・・・あいらんちゃんが危なくなったら、僕のこと放置する気満々だよね、夜叉丸?」
「スケ。俺と長年付き合いがあって実力そこそこのお前と、初心者でハムスターで超絶可愛いあいらんちゃんとなら、優先するのはあいらんちゃんに決まってるだろ! だって、こんなに可愛いんだぞ!? こんなに可愛いハムスター姿のあいらんちゃんがダメージを受けて傷付いたら、俺はバーサーカーになる自信しかない!!」
「あ、うん・・・何言っても無駄だってことは、わかったよ」
「さすがスケ! 話がわかる!!」
「褒められて、こんなに嬉しくないのはなんでだろうね?」
まるで、漫才のようなやりとりに、あいらんが目を細めて、微笑む。
パシャ。
「ちょ!? なにやってんの、夜叉丸!」
「はっ! 思わず指先が勝手に動いてスクショを!!」
「大丈夫ですよ? スクショは撮っていいって言ってましたし。今は休憩中でもありますから」
「だからって、マナーってものが・・・夜叉丸? 何のけぞってるの?」
「スケ、これ・・・このスクショ、尊すぎる!!」
夜叉丸がスクショのデータを前に手を組んで、上を仰いで、涙まで流しそうな勢いだ。
「うん、わかった。ひとまず落ち着いて。まぁ、落ち着かないだろうけど。休憩中以外、スクショは撮らないよう、最初に注意しといて良かったよ」
なんだかんだであいらんを可愛く撮りたいという夜叉丸の欲望が為せる業なのか。それは、見ているだけで可愛いと評したくなる一枚だった。
「これ! これ、絶対にメモリー永久保存するぅぅうううう!!」
「あ、暴走状態」
一人盛り上がって、しばらく理性を取り戻さない夜叉丸のことを、あいらんは暴走状態と呼ぶ。
「あいらんちゃん、ごめんね。こんな変人で・・・」
「いえいえ。おかげで苦労せずにレベルアップもできたので、大丈夫です。・・・あれ?」
「ん? あいらんちゃん、どうかしたの?」
「あそこ、誰か木の根元にしゃがみ込んでます」
あいらんが示した先には、確かに誰かが木の根元でしゃがみ込んで、何かしていたのだった。